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大嫌いな男
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二人っきりのオフィスに、愛美がキーボードを叩く音だけが響く。
支部の入り口近くにある内勤席と支部の奥にある支部長席は離れている事もあり、お互いに目も合わせず、会話もしない。
ただ大嫌いな緒川支部長と二人っきりでいるのは居心地が悪く、愛美は早く誰かが出社してくればいいのにと思いながら入力作業を続けた。
しばらくすると、高瀬FPが出社した。
「おはようございます。あ、菅谷さん、今朝は早いんですね」
「おはようございます。昨日はお菓子ありがとうございました」
「どういたしまして」
高瀬FPの柔らかい笑みに、愛美もつられて微笑んだ。
さっきまで苛立ち荒れ狂っていた心が浄化されていくようだ。
(存在自体が癒しなんだよねぇ……。なんて言うか……小動物系?いくらでも眺めてられる。アレとはエライ違いだわ)
お互いに笑みを浮かべながら言葉を交わす愛美と高瀬FPを遠目に見て、緒川支部長は面白くなさそうに眉をひそめた。
「菅谷、今日の支部長面接11時から」
突然大きな声でぶっきらぼうにそう言った緒川支部長に、愛美は心の中で舌打ちしながら無愛想に返事をした。
「わかりました」
(呼び捨てすんな!!何様のつもりだ!!)
お昼を少し過ぎた頃。
愛美はほとんどの職員が出払って閑散とした支部の中で、昼食はどうしようかと考えていた。
昨日はハンバーグ弁当だったから今日は鶏そぼろ弁当にしようか、などと考えながら財布を持って立ち上がると、出先から高瀬FPが戻ってきた。
「ただいま帰りました」
「お帰りなさい。お疲れ様です」
愛美がにこやかに声を掛けると、高瀬FPは愛美が手にしている財布を指さした。
「これからお昼ですか?」
「はい。お弁当買いに行きますけど……ついでに高瀬FPの分も買ってきましょうか?」
「いえ、メニュー見て選びたいんで、僕も行きます」
「そうですか?じゃあ、一緒に行きましょう」
高瀬FPが自分の席に荷物を置き、財布を持って愛美のそばにきた時、緒川支部長が出先から戻ってきた。
「ただいま」
「支部長、お帰りなさい」
高瀬FPがニコニコ笑いながら緒川支部長に声を掛けると、緒川支部長は不機嫌そうな顔で愛美と高瀬FPを交互に見た。
そして、愛美をじっと見る。
「ただいま」
「……お帰りなさい。お疲れ様です」
(なんで『お帰り』を催促するんだよ!)
どうしていつもいつもピンポイントで自分にだけ『お帰りなさい』を催促するのか。
愛美はムッとしているのがバレないように少し顔をそむけた。
「昼飯か?」
「ハイ、菅谷さんとそこの弁当屋に行きます」
高瀬FPが答えると、緒川支部長が顔をしかめた。
「支部長の分も買ってきましょうか?」
「……いや、俺も行く」
突然一緒に行くと言い出した緒川支部長に、愛美は激しく苛立った。
(せっかく高瀬FPと楽しく二人で行こうと思ったのに!!)
結局、3人で支部を出て弁当屋に向かった。
何故か隣を歩いている緒川支部長にイライラしながら、愛美は財布を握りしめる。
(なんで隣にいるんだ……?!あっち行け!!)
歩きながら、緒川支部長は後ろを歩いている高瀬FPに話し掛ける。
「なぁ、高瀬は彼女いるのか?」
「え?なんですか、急に?」
「いや、なんとなくだよ。モテるんだろ?」
「別にモテないし、彼女もいませんよ。今は仕事で手一杯です」
「ふーん……。まぁ高瀬はまだ若いしな」
「支部長はそろそろ結婚を考えたりするような人がいるんですか?」
高瀬FPが何気なく尋ねると、緒川支部長が横目で愛美のつむじをじっと見ながらため息をついた。
「いるように見えるか」
「支部長と結婚したいって女性なんていくらでもいるでしょう?」
「俺にも選ぶ権利くらいあるだろ。それに俺だけがその気になったってな……相手が思ってなきゃ無理な話だ」
「まぁ……そうですね。相手あってのことですから」
愛美は眉間にシワを寄せながら首をかしげた。
(一体なんの話だよ。おまえの恋愛話なんて興味ねぇっつーの。しかし……そっか、高瀬FPは今フリーなんだな……)
高瀬FPの事は好みのタイプではあっても、特別に好きと言う訳でもない。
それでも彼女がいないと聞くと、なんとなくホッとした。
弁当屋に着き、それぞれ弁当を注文して待っている時も、緒川支部長は愛美のすぐ隣にいた。
ここ最近、緒川支部長が何故かやたらと近寄って来たり構ってくる事が気に入らない。
(ああもう……鬱陶しい!!無駄にデカイんだよ!!あっち行け!!私が嫌ってるって気付いてるくせに、なんだ一体?いい歳してかまってちゃんか?それとも『女はみんな俺を好きで当たり前』とか言う俺様的発想か?)
とにかく早くこの場を離れたい。
この場と言うよりはむしろ、この無駄にデカイ大嫌いな男と離れたい。
(まだか弁当!!早くしろよ!!)
愛美がイライラしていると、緒川支部長がため息をついた。
「なぁ菅谷」
愛美の耳のすぐそばで、緒川支部長が小声で呟いた。
愛美は全身に鳥肌が立ちそうになりながら、必死で平静を装った。
「なんですか」
「おまえさ……付き合ってる奴、いる?」
支部の入り口近くにある内勤席と支部の奥にある支部長席は離れている事もあり、お互いに目も合わせず、会話もしない。
ただ大嫌いな緒川支部長と二人っきりでいるのは居心地が悪く、愛美は早く誰かが出社してくればいいのにと思いながら入力作業を続けた。
しばらくすると、高瀬FPが出社した。
「おはようございます。あ、菅谷さん、今朝は早いんですね」
「おはようございます。昨日はお菓子ありがとうございました」
「どういたしまして」
高瀬FPの柔らかい笑みに、愛美もつられて微笑んだ。
さっきまで苛立ち荒れ狂っていた心が浄化されていくようだ。
(存在自体が癒しなんだよねぇ……。なんて言うか……小動物系?いくらでも眺めてられる。アレとはエライ違いだわ)
お互いに笑みを浮かべながら言葉を交わす愛美と高瀬FPを遠目に見て、緒川支部長は面白くなさそうに眉をひそめた。
「菅谷、今日の支部長面接11時から」
突然大きな声でぶっきらぼうにそう言った緒川支部長に、愛美は心の中で舌打ちしながら無愛想に返事をした。
「わかりました」
(呼び捨てすんな!!何様のつもりだ!!)
お昼を少し過ぎた頃。
愛美はほとんどの職員が出払って閑散とした支部の中で、昼食はどうしようかと考えていた。
昨日はハンバーグ弁当だったから今日は鶏そぼろ弁当にしようか、などと考えながら財布を持って立ち上がると、出先から高瀬FPが戻ってきた。
「ただいま帰りました」
「お帰りなさい。お疲れ様です」
愛美がにこやかに声を掛けると、高瀬FPは愛美が手にしている財布を指さした。
「これからお昼ですか?」
「はい。お弁当買いに行きますけど……ついでに高瀬FPの分も買ってきましょうか?」
「いえ、メニュー見て選びたいんで、僕も行きます」
「そうですか?じゃあ、一緒に行きましょう」
高瀬FPが自分の席に荷物を置き、財布を持って愛美のそばにきた時、緒川支部長が出先から戻ってきた。
「ただいま」
「支部長、お帰りなさい」
高瀬FPがニコニコ笑いながら緒川支部長に声を掛けると、緒川支部長は不機嫌そうな顔で愛美と高瀬FPを交互に見た。
そして、愛美をじっと見る。
「ただいま」
「……お帰りなさい。お疲れ様です」
(なんで『お帰り』を催促するんだよ!)
どうしていつもいつもピンポイントで自分にだけ『お帰りなさい』を催促するのか。
愛美はムッとしているのがバレないように少し顔をそむけた。
「昼飯か?」
「ハイ、菅谷さんとそこの弁当屋に行きます」
高瀬FPが答えると、緒川支部長が顔をしかめた。
「支部長の分も買ってきましょうか?」
「……いや、俺も行く」
突然一緒に行くと言い出した緒川支部長に、愛美は激しく苛立った。
(せっかく高瀬FPと楽しく二人で行こうと思ったのに!!)
結局、3人で支部を出て弁当屋に向かった。
何故か隣を歩いている緒川支部長にイライラしながら、愛美は財布を握りしめる。
(なんで隣にいるんだ……?!あっち行け!!)
歩きながら、緒川支部長は後ろを歩いている高瀬FPに話し掛ける。
「なぁ、高瀬は彼女いるのか?」
「え?なんですか、急に?」
「いや、なんとなくだよ。モテるんだろ?」
「別にモテないし、彼女もいませんよ。今は仕事で手一杯です」
「ふーん……。まぁ高瀬はまだ若いしな」
「支部長はそろそろ結婚を考えたりするような人がいるんですか?」
高瀬FPが何気なく尋ねると、緒川支部長が横目で愛美のつむじをじっと見ながらため息をついた。
「いるように見えるか」
「支部長と結婚したいって女性なんていくらでもいるでしょう?」
「俺にも選ぶ権利くらいあるだろ。それに俺だけがその気になったってな……相手が思ってなきゃ無理な話だ」
「まぁ……そうですね。相手あってのことですから」
愛美は眉間にシワを寄せながら首をかしげた。
(一体なんの話だよ。おまえの恋愛話なんて興味ねぇっつーの。しかし……そっか、高瀬FPは今フリーなんだな……)
高瀬FPの事は好みのタイプではあっても、特別に好きと言う訳でもない。
それでも彼女がいないと聞くと、なんとなくホッとした。
弁当屋に着き、それぞれ弁当を注文して待っている時も、緒川支部長は愛美のすぐ隣にいた。
ここ最近、緒川支部長が何故かやたらと近寄って来たり構ってくる事が気に入らない。
(ああもう……鬱陶しい!!無駄にデカイんだよ!!あっち行け!!私が嫌ってるって気付いてるくせに、なんだ一体?いい歳してかまってちゃんか?それとも『女はみんな俺を好きで当たり前』とか言う俺様的発想か?)
とにかく早くこの場を離れたい。
この場と言うよりはむしろ、この無駄にデカイ大嫌いな男と離れたい。
(まだか弁当!!早くしろよ!!)
愛美がイライラしていると、緒川支部長がため息をついた。
「なぁ菅谷」
愛美の耳のすぐそばで、緒川支部長が小声で呟いた。
愛美は全身に鳥肌が立ちそうになりながら、必死で平静を装った。
「なんですか」
「おまえさ……付き合ってる奴、いる?」
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