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残念な上司
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【仕事忙しいの?】
弁当を広げながらメッセージを送ると、すぐに返信が届いた。
【うん、だからしばらく会う余裕ないかも】
しばらくってどれくらい?と聞き返そうかと思ったけれど、信用してないのかと言われそうで、やめる。
なんか美玖の気に障るような事したっけ?
そんなはずはないと思うんだけどな。
仕事と言われたら、それを信じるしかない。
【わかった。じゃあ仕事落ち着いたらまた連絡して】
もう一度メッセージを送ってひとつため息をつき、ブロッコリーを箸でつまんで口に運ぶ。
ああ、そうだ。
一番最近会ったのは美玖の誕生日だから……もう1か月も前じゃないか。
どんなに忙しくてもこんなに会わなかった事は今までなかった気がする。
……もしかして避けられてる?
この2年、それなりにうまくやってきたと思うんだけどな。
仕事の後とか休みの日に何度も美玖のために料理を作って一緒に食べたし、たまには二人で遠出したり、記念日なんかも特別派手ではなくても大事にしてきたつもりだ。
僕は美玖の事が好きだし、美玖も『章悟といると落ち着く』って、いつも言ってくれる。
誕生日は僕の部屋で、僕の作った料理を食べながらお酒を飲んで、朝までベッドで抱き合って一緒に過ごした。
美玖が前から欲しがっていたバッグをプレゼントしたら、とても喜んでいたし。
じゃあ……僕の気のせいか?
やっぱり仕事で忙しいんだな。
定時が近付いても仕事が終わらず、仕方なく残業する事になった。
どうせ美玖との約束もなくなった事だし、まぁいいか。
定時になり、少し休憩を取る。
コーヒーマシンでカップにカプチーノを淹れていると、後ろから肩を叩かれた。
「鴫野、今日は金曜だしとっとと仕事終わらせてたまには飲みに行こうぜ」
「矢野さん……たまにじゃないですよね」
「俺はな。だけど鴫野は滅多に飲みに行かないだろ?」
矢野さんは同じ課の先輩で僕より3つ歳上、いつも一緒に試作室で仕事をしている。
入社後の研修期間の3か月、矢野さんは僕の教育係だったので、今でも何かと気に掛けてくれる。
「そうですね。じゃあ、早く終わらせましょう」
「おー、鴫野の好きそうな店見つけたから連れてってやるよ」
「楽しみです」
僕の好きそうな、ということは、和食とか京のおばんざい的な店かな?
外で食べるのはあまり好きじゃないんだけど、いい店で美味しいものを食べるのは、料理の勉強になる。
矢野さんは女性にはちょっとだらしないしいい加減なところもあるけど、根はいい人だし、料理の味に関しての舌だけは確かだ。
だけは、と言うと失礼かも知れないけど……。
思ったより仕事が早く終わった。
矢野さんは早く飲みに行きたい一心で頑張っていたみたいだ。
帰り支度をしていると、杏さんが椅子から立ち上がって伸びをした。
「お疲れ様です。杏さんもこれからお帰りですか?」
「あー、うん、お疲れ。さすがに着替えないとまずいだろ?めんどくさいけど、久しぶりに家に帰るか……」
家に帰るのがめんどくさい?
本当に変わった人だな。
「俺らこれから飲みに行くんですけど、良かったら杏さんも一緒にいかがです?」
矢野さんは事も無げに杏さんを誘った。
チャレンジャーだな……。
杏さんはこんなだけど、一応上司だぞ?
「……そうだな。たまには部下と酒飲むのもいいか」
あ、行くんだ。
珍しいなぁ。
新商品の試食と接待を除いて、杏さんがカロリーバー以外の物を食べてる姿をほとんど見たことがない。
食生活といい私生活といい、杏さんってホントに謎だらけだ。
弁当を広げながらメッセージを送ると、すぐに返信が届いた。
【うん、だからしばらく会う余裕ないかも】
しばらくってどれくらい?と聞き返そうかと思ったけれど、信用してないのかと言われそうで、やめる。
なんか美玖の気に障るような事したっけ?
そんなはずはないと思うんだけどな。
仕事と言われたら、それを信じるしかない。
【わかった。じゃあ仕事落ち着いたらまた連絡して】
もう一度メッセージを送ってひとつため息をつき、ブロッコリーを箸でつまんで口に運ぶ。
ああ、そうだ。
一番最近会ったのは美玖の誕生日だから……もう1か月も前じゃないか。
どんなに忙しくてもこんなに会わなかった事は今までなかった気がする。
……もしかして避けられてる?
この2年、それなりにうまくやってきたと思うんだけどな。
仕事の後とか休みの日に何度も美玖のために料理を作って一緒に食べたし、たまには二人で遠出したり、記念日なんかも特別派手ではなくても大事にしてきたつもりだ。
僕は美玖の事が好きだし、美玖も『章悟といると落ち着く』って、いつも言ってくれる。
誕生日は僕の部屋で、僕の作った料理を食べながらお酒を飲んで、朝までベッドで抱き合って一緒に過ごした。
美玖が前から欲しがっていたバッグをプレゼントしたら、とても喜んでいたし。
じゃあ……僕の気のせいか?
やっぱり仕事で忙しいんだな。
定時が近付いても仕事が終わらず、仕方なく残業する事になった。
どうせ美玖との約束もなくなった事だし、まぁいいか。
定時になり、少し休憩を取る。
コーヒーマシンでカップにカプチーノを淹れていると、後ろから肩を叩かれた。
「鴫野、今日は金曜だしとっとと仕事終わらせてたまには飲みに行こうぜ」
「矢野さん……たまにじゃないですよね」
「俺はな。だけど鴫野は滅多に飲みに行かないだろ?」
矢野さんは同じ課の先輩で僕より3つ歳上、いつも一緒に試作室で仕事をしている。
入社後の研修期間の3か月、矢野さんは僕の教育係だったので、今でも何かと気に掛けてくれる。
「そうですね。じゃあ、早く終わらせましょう」
「おー、鴫野の好きそうな店見つけたから連れてってやるよ」
「楽しみです」
僕の好きそうな、ということは、和食とか京のおばんざい的な店かな?
外で食べるのはあまり好きじゃないんだけど、いい店で美味しいものを食べるのは、料理の勉強になる。
矢野さんは女性にはちょっとだらしないしいい加減なところもあるけど、根はいい人だし、料理の味に関しての舌だけは確かだ。
だけは、と言うと失礼かも知れないけど……。
思ったより仕事が早く終わった。
矢野さんは早く飲みに行きたい一心で頑張っていたみたいだ。
帰り支度をしていると、杏さんが椅子から立ち上がって伸びをした。
「お疲れ様です。杏さんもこれからお帰りですか?」
「あー、うん、お疲れ。さすがに着替えないとまずいだろ?めんどくさいけど、久しぶりに家に帰るか……」
家に帰るのがめんどくさい?
本当に変わった人だな。
「俺らこれから飲みに行くんですけど、良かったら杏さんも一緒にいかがです?」
矢野さんは事も無げに杏さんを誘った。
チャレンジャーだな……。
杏さんはこんなだけど、一応上司だぞ?
「……そうだな。たまには部下と酒飲むのもいいか」
あ、行くんだ。
珍しいなぁ。
新商品の試食と接待を除いて、杏さんがカロリーバー以外の物を食べてる姿をほとんど見たことがない。
食生活といい私生活といい、杏さんってホントに謎だらけだ。
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