閉じたまぶたの裏側で

櫻井音衣

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男友達の裏の顔

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「いい奥さんになれそう?」
「おー、絶対なるだろうな」

料理を口に運びながら、應汰はさらりとそう言った。
應汰が何を根拠に絶対と言い切るのか知らないけれど、私には奥さんになる予定なんてない。
もし本当に奥さんになりたければ、勲以外の人を見つけなくちゃならないんだから。

「ああ、でもあれか。もしかしたら男をダメにしちゃうタイプかもな」
「いい奥さんと正反対じゃない」
「男って女に甘やかされると、母親と重ねるのかな?それが心地よくなって、どんどん子供みたいになるから。彼氏はあまり甘やかさない方がいいぞ」

喉元まで出かけた『あいにく私には甘やかすような彼氏なんていないよ』という言葉を慌てて飲み込む。
いや、もしかして私は勲を甘やかしてる?
この辺でハッキリした方がいいのかな?
應汰の言葉が本当だとすれば、男はみんな奥さんや彼女に、少なからず母性を求めているということになる。
だけど母親から与えられないものを求めているから、恋愛や結婚をするのだろう。

「應汰は彼女には甘いの?」
「さぁ……どうだろうな。付き合った子にしかわからないだろ」

彼女に激甘の應汰なんて、全然想像がつかない。

「確かにね。ところで……舞とはいつの間に別れたの?」
「いつだっけ?付き合って3か月で別れた。それが……2か月くらい前?」
「変わり身早過ぎ……!!應汰と付き合ってる時には、もう次が控えてたんじゃないの?もしくは同時進行とか?」
「だろうな。結婚願望のめちゃくちゃ強い子だったみたいだし。付き合って3か月で結婚も何もないだろ?」

この間も言ってたな。
舞がなぜそんなに結婚したかったのか、私にはわからない。
まだまだ若いのにそんなに結婚を急ぐということは、何か理由があるんだろうか。
結婚という目標を達成したらそれで終わりじゃなくて、そこから始まる現実が待っている。
きっと思い描いているほど甘くはないはずだ。
なのになぜそんなに結婚を急ぐんだろう?

「結婚って……そんなにいいものなのかな……」
「芙佳は結婚したくないのか?」
「どうかな……。誰でもいいとは思わないけど、いずれはできたらいいかなってくらいの願望はあると思う」
「なんかおぼろげだなー」

かつては勲との結婚を夢見ていたこともあったけど、それも単なる夢で終わった。
あれから私は結婚に対して、憧れや希望なんていう甘い感情を抱かなくなった。
結婚して幸せに暮らしている人は確かにいると思うし、そんな人たちを見ると羨ましいとも思うけれど、誰もが羨むような相手と結婚しても私と不倫している勲を目の当たりにしているから、不安の方が大きくなるのかも知れない。

「経験ない事に飛び込むのは勇気がいるし、慎重になるものでしょ?應汰には結婚願望はあるの?」
「そうだな……。相手にもよる」

應汰はジョッキのビールを飲み干して、近くにいた店員を呼び止め、おかわりを注文した。
今日はいつになく應汰の飲むペースが早いような気がする。

「相手にもよるって……どういう事?」
「例えばだけど、舞に結婚する気はあるかって聞かれた時、正直この子とは考えられないって思ったから、まだ先かなって答えたんだ」
「なんで考えられないの?」
「うーん……結婚して一緒に生活してるが思い浮かばないというか、想像できなかった。なんとなく現実とか見えてない気がしたから」
「あー……なんとなくわかる」

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