閉じたまぶたの裏側で

櫻井音衣

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温かい手とまっすぐな想い

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国道沿いのハンバーガーショップに入り昼食を済ませた後、海を目指してドライブした。
カーステレオからは、私たちが高校生の頃に流行っていたロックバンドの曲が流れている。

「懐かしい。この曲、よく聴いたなぁ。すごく好きだったんだ」
「だろ?俺は今でも聴いてる。行事が終わるごとに打ち上げだーとか言って、クラスのやつらとカラオケとか行ったよな」
「うん、ボウリングなんかも行ったね」

高2の時、應汰とは同じクラスだった。
そのクラスの中でも、應汰とは特に仲が良かった。
3年では別のクラスだったけど、同じ選択科目の授業で顔を合わせたら話もしたし、たまに学校帰りに偶然会ったら一緒にハンバーガーを食べに行ったりもした。
お互いに大人になった今、学生時代の思い出話ができるって楽しいなと思う。
なんとなく、若かったその時にタイムスリップしたような気分になれるから。

「芙佳、あの時はあいつと付き合ってたな」
「あいつ?」
「ホラ、テニス部の……」
「ああ、斉藤くん?」
「そう、斉藤だ」

10年以上前の事、よく覚えてるな。
私ですら忘れかけてたのに。

「よく覚えてるね」
「言っただろ?俺はそん時から芙佳が好きだったからな。思いきって告白しようかとか、もしフラれたら気まずくなるかなとか考えてモタモタしてるうちに斉藤に芙佳取られて、めちゃくちゃ悔しかった。今思い出してもムカつく」
「ふーん……。知らなかった」

気まずくなることを恐れて告白を躊躇していたなんて、その頃はまだ應汰も可愛いとこあったんだな。
今ではすっかりその可愛さも忘れて、グイグイ攻めてくる肉食系になったけど。

「3年になって芙佳が斉藤と別れたって知った時には、俺は別の子と付き合ってたしな」
「彼女がいたならそれでいいじゃない」
「彼女っつってもな……芙佳みたいにすっげぇ好きだったわけじゃないから。付き合ってくれって言われてなんとなく。それにホラ、そういう年頃じゃん?」

應汰の言葉に私は首をかしげた。
タイミングが合わなかったことはわかるとして、そういう年頃ってなんだ?

「そういう年頃……?」
「やりたい盛りだろ。思春期の男の頭の中なんてサル同然だ」
「……それは今もでしょ?」
「おー、芙佳限定でな」

事も無げにさらっとそういう事を言われて、なんだか無性に恥ずかしくなる。
應汰は常に私に欲情していると言っているようなものなんだから。

「バカ!スケベ!!変態!!」
「俺はスケベだけど変態じゃないぞ?純粋に芙佳が好きなだけ。好きな子とやりたくない男なんていないだろ?」
「……もういい、ちょっと黙ってて」

應汰め……。
宣言通りガンガン攻めてくるな……。
一度カミングアウトしてしまえばなんの抵抗もなくなったのか、應汰は開けっ広げに私のことが好きだとのたまう。
そんなにまっすぐに好きだと言われたら、逃げ場をなくしてしまうじゃないか。
こんな丸腰では到底闘えない。
逃げる準備だけはしておこう。


それからも他愛ない思い出話をしながら海を目指した。
ようやく海沿いの道路にたどり着いて車を停め、窓を開けると潮風が車の中を吹き抜ける。
強い潮風に煽られて髪がなびき、私は慌てつつも應汰に首筋を見られないように、できるだけ自然な振る舞いで髪を押さえた。

「気持ちいいね。海なんて久しぶり」
「泳げないけどな。俺は芙佳の水着姿が見たかった」

また始まったよ、應汰のエロトークが……。
ホントに應汰の頭の中は、万年思春期……いや、発情期だ。

「……言っとくけど、絶対見せないから」
「高校の時に見たぞ、スクール水着」

應汰の視線が急に遠くを見つめて、やけにいやらしくなった気がした。
もしかして……私のスクール水着姿を思い出してるのか?!

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