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嫉妬する資格なんかない
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「確かに今日は暑かったから、ちょっと汗かいたかなー。だが断る」
「つれないねぇ……。でもまぁ、芙佳が汗かいてたって、俺は全然気にしないけどな。芙佳の汗の匂いで余計に燃えるかも」
笑いながらバスルームへ向かう應汰の背中を見て、私はまた少し身の危険を感じた。
何その変態っぽい発言は……?
冗談……だよね?
確かに應汰の事はいいやつだと思うし、嫌いじゃない。
一緒にいると楽しいし、すごく落ち着く。
だけどまだ私は應汰の事、ちゃんと恋愛対象として好きだとは思っていないんだと思う。
ずっと友達だと思ってきたし、いきなり應汰との恋愛とか結婚を考えるのは難しい。
告白されたあの夜だって、お酒の勢いがなければキスなんてしていない。
……と、思ったけれど……。
よく考えたら、翌朝もキスをした。
私が迷っている事に應汰が気付いてくれなければ、あのまま私たちは、最後までしていたかも知れない。
あの時よりは應汰の事を好きだとは思うけど、私はまだ應汰を受け入れることを迷っている。
でも、もし今、あの時と同じように應汰に迫られたら……私はきっぱりと拒めるだろうか?
シャワーを終えて部屋着に着替えた應汰が、タオルで髪を拭きながら戻ってきた。
私はできるだけ意識しないようにと自分に言い聞かせながら、キッチンで料理を続ける。
應汰は私のすぐ後ろに立って、肩越しにフライパンを覗き込んだ。
フライパンの中では炒められたベーコンやタマネギ、マッシュルーム、ピーマンとパスタがケチャップを絡められるのを待っている。
「いい匂い。めっちゃうまそう」
「そう?料理ってほどの料理でもないんだけど……」
「そっちもうまそうだけどな。俺が言ってるのは、こっち」
私の肩に顎を乗せ、耳元にくっつくほど鼻先を近付けて甘える應汰に、少し焦ってしまう。
いい匂い、めっちゃうまそうって……私の事?!
落ち着け私、これもいつものエロジョークなんだから、適当に交わせばいいんだ。
動揺しているのを悟られないように、私はわざとかき混ぜる手の動きを大きくして、應汰の脇腹に肘をぶつけた。
私が思っていたより強くヒットしたらしく、應汰はお腹を押さえて痛そうにしている。
「あ、ごめん、肘当たっちゃった。そんなにくっつかれると料理しづらいから、ちょっと離れてくれる?」
「いてーよ、バカ……」
どうやらみぞおちに入ってしまったようだ。
ちょっとかわいそうな事をしたかなとは思うけど、なんとか應汰の欲情を抑制してこの場を切り抜けることに成功した。
料理をしているとどうしても背後が無防備になってしまうので、應汰が痛みで動けないうちに急いでナポリタンを仕上げた。
「應汰、お皿取って」
コンロの火を止めて振り返ると、應汰はお腹を押さえていた手を伸ばして食器棚からお皿を2枚取り出し、調理台に並べてくやしそうな顔で私に耳打ちする。
「芙佳め……後で覚えてろよ」
「なんだっけ?もう忘れた」
覚えてろって、一体何するつもり?!
食事をしている間になんとか忘れてもらわないと。
「お待たせ、できたよ」
出来上がったパスタをお皿に盛り付け、フライパンをコンロの上に置くと同時に、應汰が後ろから私をそっと抱きしめた。
突然その手に捕らえられ、逃げ場を失った私の心臓が急激に大きな音をたてる。
「……應汰?」
「料理は終わったんだから、いいだろ」
應汰は私を抱きしめて、髪に頬をすり寄せる。
私の心臓の音が應汰の腕に伝わってしまうんじゃないかと思うと、余計に鼓動が速くなった。
「芙佳とこういうの……ずっと夢だった」
「こういうの……?」
「芙佳が俺のために料理作ってくれてさ……俺はキッチンで芙佳を抱きしめてキスすんの」
いつもより甘い應汰の声が心地よく耳に響く。
それだけでもうどうにかなってしまいそうなくらい、全身の血液が頭に昇って頬が熱くなった。
「つれないねぇ……。でもまぁ、芙佳が汗かいてたって、俺は全然気にしないけどな。芙佳の汗の匂いで余計に燃えるかも」
笑いながらバスルームへ向かう應汰の背中を見て、私はまた少し身の危険を感じた。
何その変態っぽい発言は……?
冗談……だよね?
確かに應汰の事はいいやつだと思うし、嫌いじゃない。
一緒にいると楽しいし、すごく落ち着く。
だけどまだ私は應汰の事、ちゃんと恋愛対象として好きだとは思っていないんだと思う。
ずっと友達だと思ってきたし、いきなり應汰との恋愛とか結婚を考えるのは難しい。
告白されたあの夜だって、お酒の勢いがなければキスなんてしていない。
……と、思ったけれど……。
よく考えたら、翌朝もキスをした。
私が迷っている事に應汰が気付いてくれなければ、あのまま私たちは、最後までしていたかも知れない。
あの時よりは應汰の事を好きだとは思うけど、私はまだ應汰を受け入れることを迷っている。
でも、もし今、あの時と同じように應汰に迫られたら……私はきっぱりと拒めるだろうか?
シャワーを終えて部屋着に着替えた應汰が、タオルで髪を拭きながら戻ってきた。
私はできるだけ意識しないようにと自分に言い聞かせながら、キッチンで料理を続ける。
應汰は私のすぐ後ろに立って、肩越しにフライパンを覗き込んだ。
フライパンの中では炒められたベーコンやタマネギ、マッシュルーム、ピーマンとパスタがケチャップを絡められるのを待っている。
「いい匂い。めっちゃうまそう」
「そう?料理ってほどの料理でもないんだけど……」
「そっちもうまそうだけどな。俺が言ってるのは、こっち」
私の肩に顎を乗せ、耳元にくっつくほど鼻先を近付けて甘える應汰に、少し焦ってしまう。
いい匂い、めっちゃうまそうって……私の事?!
落ち着け私、これもいつものエロジョークなんだから、適当に交わせばいいんだ。
動揺しているのを悟られないように、私はわざとかき混ぜる手の動きを大きくして、應汰の脇腹に肘をぶつけた。
私が思っていたより強くヒットしたらしく、應汰はお腹を押さえて痛そうにしている。
「あ、ごめん、肘当たっちゃった。そんなにくっつかれると料理しづらいから、ちょっと離れてくれる?」
「いてーよ、バカ……」
どうやらみぞおちに入ってしまったようだ。
ちょっとかわいそうな事をしたかなとは思うけど、なんとか應汰の欲情を抑制してこの場を切り抜けることに成功した。
料理をしているとどうしても背後が無防備になってしまうので、應汰が痛みで動けないうちに急いでナポリタンを仕上げた。
「應汰、お皿取って」
コンロの火を止めて振り返ると、應汰はお腹を押さえていた手を伸ばして食器棚からお皿を2枚取り出し、調理台に並べてくやしそうな顔で私に耳打ちする。
「芙佳め……後で覚えてろよ」
「なんだっけ?もう忘れた」
覚えてろって、一体何するつもり?!
食事をしている間になんとか忘れてもらわないと。
「お待たせ、できたよ」
出来上がったパスタをお皿に盛り付け、フライパンをコンロの上に置くと同時に、應汰が後ろから私をそっと抱きしめた。
突然その手に捕らえられ、逃げ場を失った私の心臓が急激に大きな音をたてる。
「……應汰?」
「料理は終わったんだから、いいだろ」
應汰は私を抱きしめて、髪に頬をすり寄せる。
私の心臓の音が應汰の腕に伝わってしまうんじゃないかと思うと、余計に鼓動が速くなった。
「芙佳とこういうの……ずっと夢だった」
「こういうの……?」
「芙佳が俺のために料理作ってくれてさ……俺はキッチンで芙佳を抱きしめてキスすんの」
いつもより甘い應汰の声が心地よく耳に響く。
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