閉じたまぶたの裏側で

櫻井音衣

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嫉妬する資格なんかない

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「應汰、普段料理はする?」
「いや、しない」
「じゃあ調味料とか調理器具とかそろってないよね」
「芙佳の部屋は?」

私の部屋は確かにそれなりに料理ができる程度の物はそろっているけど、さっきのエレベーターでのこともあるし、もしかして突然勲が……と思うと、やっぱり安易に私の部屋に應汰をよぶわけにはいかない。

「急に言われても、私の部屋はちょっと無理……。やっぱり今日は外で食べる?」
「イヤだ、芙佳の作った飯食いたい」

應汰は駄々っ子みたいに首を横に振る。
期待させてしまったのは私だし、この期待を裏切るのも気が引ける。
だけどやっぱり私の部屋には呼びたくないから、應汰の部屋でも作れる簡単な料理で勘弁してもらおう。

「それじゃ、簡単に材料そろう物でいい?フライパンとかまな板と包丁くらいはあるんでしょ?」
「それはあるぞ」
「じゃあ應汰の部屋にしよ」
「よし、そうと決まればまずは買い出しだ」

應汰は嬉しそうに私の手を引いて歩き出した。

「あ……言っとくけど、突然襲いかかるとかナシだからね?!」
「んー?ダメかぁ。料理の後は芙佳も食っちまおうと思ったのに」

少なからず身の危険を感じる。
部屋で二人きりになるなんて、ちょっと軽率だったかな。
今ならまだ前言撤回しても應汰は許してくれるだろうか。

「私はそういうつもりで言ったんじゃないから……やっぱりやめとく……」

私は應汰の手からそっと手を離した。
すると應汰は慌てて私の手を取り握り直した。

「バカ、冗談だ。約束したからな。無理強いはしない」
「ホントに?」
「ああ。芙佳との約束は守る」

私との約束は、って……。
應汰のこういうところは、やっぱりちょっとかわいいと思う。
それじゃあ今日は、應汰のことを信じてみようかな。

「わかった。それじゃ、パスタにしようか」
「いいな。俺、あれ好き。なんて名前だっけ?ソーセージが入ってる、ケチャップのやつ」
「ああ、ナポリタンね。簡単だし助かるわ」

簡単でもなんでも、誰かのために料理を作るなんて久しぶり。
『芙佳の作った飯食いたい』なんて言ってくれる人、今は應汰しかいないから。

近所のスーパーで材料を買って、應汰の部屋にお邪魔した。
ここに来るのは應汰に突然告白された夜以来だ。
最近は休みの日も会っているけど、いつも外で会うからお互いの部屋を行き来したりはしていない。

「芙佳が来るならもっと綺麗にしとくんだったな」

應汰が買い物袋をキッチンの調理台の上に置いて、ぐるっと部屋を見渡した。
シンクには使用済みのコーヒーカップやグラスが置かれているけれど、部屋の中は應汰が気にするほど散らかってはいないし、モデルルームのようにピカピカで非の打ちどころのない部屋よりも、適度な生活感がある方が安心する。

「気にしないで。そんなに散らかってないし、私はなんにも気にならないよ」

私はそう言いながら、買ってきた食材を袋から出して調理台の上に並べる。

「とりあえず座ってコーヒーでも飲むか?」
「うーん、一度座って落ち着いちゃうと、腰が重くなるからこのまま作るよ」
「そっか。あー、今日汗かいたから、風呂入ってきていい?」
「どうぞ」

見られながら料理をするのは落ち着かないから、應汰がお風呂に入っている間に作ってしまおう。
そう思っていると、應汰はネクタイを緩めながら、やけに距離を詰めて私の隣に立った。

「……何?」
「んー?芙佳も汗かいただろ?一緒に入る?」

また出たよ……應汰のエロジョークが……。
どうして私が應汰と一緒にお風呂に入らにゃならんのだ。

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