閉じたまぶたの裏側で

櫻井音衣

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海辺の町で、あなたと

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私の体は應汰に触れられたところから、波紋が広がるように熱を帯びていく。
應汰は愛しそうに肌に口付けて舌を這わせ、指先で私の中の浅いところを探る。
まるで私の体をゆっくりと味っているようだ。
焦らされて、もどかしくて、もっと欲しくて、私は体の奥から込み上げてくる疼きをこらえきれず、甘い声をあげて應汰の背中にしがみつく。

「もっと欲しい?」

わかっているくせに、應汰は口角を上げて意地悪く笑う。

「應汰、意地悪だね……」
「でも好きだろ?」
「うん……好き……。だからもっと奥まで、應汰でいっぱいにして」
「芙佳、愛してる。俺はしつこいぞ」

應汰はニヤッと笑って、荒くなった息遣いで波打つ胸に舌を這わせながら、長い指で私の中をかき乱した。
腰を引き寄せて私の中に入り込み、何度も名前を呼んでキスをして、應汰が私の体の奥の一番深いところをいっぱいに満たす。
應汰の腕の中で、全身で應汰を感じて、心も應汰でいっぱいになる。
應汰に何度も与えられる抗えない快感に目を閉じて身を委ね、私のすべてを應汰に満たされ果てる幸せをかみしめた。


夕方になり、私は應汰と一緒にペンションに戻った。
両親と一緒に宿泊客の食事の支度をして、食事が済んだら後片付けをした。
片付けが済むと、両親に應汰を部屋に呼ぶように言われ、刺身をつまみに4人でビールを飲んだ。

「で……山岸くんだっけ?芙佳とはその……」

娘をくれと言う男の出現に、父はまだ戸惑っているようだ。
これまで父に付き合っている人を紹介するどころか、恋愛の話をしたことすらなかったから、降って湧いたような娘の結婚話に戸惑うのは当たり前なのかも知れない。

「僕は芙佳とは高校の同級生で、会社の同期でした。高校の時からずっと芙佳が好きでした。芙佳と結婚させて下さい」

應汰はいつもとは違う落ち着いた口調で、両親に深々と頭を下げた。
初めて会った應汰に娘をくれといきなり言われた父がどんな返事をするのかわからないので、私はドキドキしながら父の言葉を待っているけれど、母はなんだか嬉しそうだ。

「芙佳にそんな人がいたなんて初めて聞いたわねぇ……」
「話したことないもん、付き合ってたわけじゃないから。ずっと友達だったんだけど……」

さすがに両親には多くは語れないけれど、私をとても大事にしてくれるとか、すごく優しいとか、應汰の良さをアピールしておくべきだろうか。
しかし本人の目の前で誉め言葉を羅列するのは、かなり照れくさい。
どうしようかと思っていると、父が真剣な顔で私を見た。

「芙佳はどうなんだ?好きなのか?」
「うん……應汰と一緒になりたいと思ってる」

私が静かにそう答えると、父の顔がほんの少し寂しげに見えた。
父は普段から無口だから余計なことは言わないけれど、私のことを『いくつになっても手のかかる子供だ』と思っていたのかなとか、『とうとうこの日が来たか』なんてことを考えているのかなと思う。

「まぁ……芙佳も年頃だしな。いつまでも嫁の貰い手もないんじゃ困るし、お互いがその気ならいいんじゃないか」

應汰は嬉しそうに笑った後、口元を引き締めて背筋を伸ばし、テーブルに額をぶつけそうなほど深く頭を下げた。

「ありがとうございます!!一生大事にします!!絶対に芙佳を幸せにします!!」

應汰のあまりの喜びように、父と母は顔を見合わせて少し笑った。

「良かったわねぇ、芙佳。こんなに素敵な人のお嫁さんになれるなんて羨ましいわ」
「お母さんにはお父さんがいるでしょ?」
「そうね。私にはお父さんが世界で一番いい男よ」

恥ずかしげもなくのろける母の言葉に、父は照れくさそうにビールを飲んだ。
結婚して何年経っても、いくつになってもお互いを想い合っている姿を見ていると、この両親の娘で本当に良かったと改めて思う。
私も應汰とこんな風に、ずっとお互いを大切に思いやれる夫婦になれるといいな。


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