天から二物も三物も与えられ過ぎた俺がダンジョンで青春を取り戻す

黒丸

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探索初日

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タクティカルブーツの紐を通していく。締めすぎないように、緩すぎないように。足首をしっかり固定し、それでいて動きを阻害しないように。
サイドジッパーがないのは不便だけど強度を考えると仕方ない。
靴紐をほどけないように結び、立ち上がる。
探索者免許取得講習が終わってからの1ヶ月、慣らすために毎日履き続けたブーツ、できるだけ着たままで過ごしたプロテクターも、しっかりと身体に馴染んでいる。
サイズが合うものがなくて特注になってしまったけど、無理をした甲斐はあったと思う。
その結果、いままでお年玉を貯め続けた貯金は全て使い切ることになってしまったけど。
玄関の姿見には、軍の特殊部隊のような自分の姿。
うん、悪くない。
「本当に大丈夫なの?母さん心配よ…」
準備を見守っていた母さんから声がかかる。
「せめて指定ダンジョンの方にできないの?むこうなら何人かでまとまって入るんでしょう?」
指定ダンジョンは講習を終えた探索者のために、国と県が準備を整えたダンジョンだ。
自衛隊も常駐してるし、多くの探索者が集まるんだから危険は少ないだろう。
「ごめん母さん。どうしてもひとりで試したいんだ。」
そう、試したかった。
確かめたかった。
自分になにができるのか。
自分がどこまでできるかを。
母さんの長いため息。
「いい?絶対に無理はしないのよ。危ないと思ったらすぐに戻るように。」
「わかってる。絶対に無理はしません。」
もう何度も繰り返したやり取りだ。
それだけ心配をかけていると思うと申し訳ない。だからといって止めるつもりはないんだけど。
「行くのか宗助。」
2階への階段からの声。
「うわ!兄さん帰ってたの!?」
寝間着姿の兄さんが階段を下りてくる。
父さんの秘書として、いつもはビシっとしてるけど、いまは髪もボサボサで目の下には濃いクマ。せっかくのイケメンが台無しだ。
「ああ、久しぶりにな。父さん、初探索の見送りができないのを残念がってたぞ。」
「心配は?」
「してないな。心配してるのは母さんだけだ。」
もうっ、うちの男達は!と非難が上がるがあえて無視する。
「まあ、お前なら万が一もないと思うが油断はするなよ。」
「ありがとう、気をつけるよ。」
少しの沈黙。
「お前のそんな生き生きした顔を見るのは久しぶりだな。」
「うん、自分でも久しぶりだと思ってる。」
そう、本当に久しぶりだ。
こんな日がくるなんて思いもしなかった。
「そうか…。」
「うん。」
「よかったな。」
「うん。」
なんか、ちょっと恥ずかしい。出よう。
「それじゃ、母さん、兄さん、いってきます。」
慌てて玄関ドアを開け、外に出ようとして…。
ゴッ!
と、重い音に額に衝撃。
「っで!、久しぶりにやった!」
ドアの上枠に思い切り頭をぶつけてしまった。
低いんだよ!日本の玄関!いや、外国の玄関だって低いのかもしれないけどさ。
「お前、いきなり油断するなよ…」
「もう、やっぱりリフォームしようかしら。」
もう一回やったんだからやらなくていいよ!
はぁ…
「それじゃ、今度こそ行ってきます。」
「ああ、気をつけてな。」
「いってらっしゃい。初日なんだから早めに帰ってくるのよ。」
今度は上枠に頭をぶつけないよう、しっかり身をかがめて家を出た。
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