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隠されていたこと
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「うん、そうだね…。まずは今回の作戦について謝罪させてほしい。まずソンビの数だけど想定より遥かに多かった。」
やっぱり。50人くらいの探索者で、あの数はおかしいと思ったんだよ。
「けど、最初の奮戦を見ていけると感じてね。強行してしまった。これは後で公式に謝罪するよ。」
「そうしてください。」
話は聞いてたし強行した事情はわかる。実際になんとかなってしまったし、怪我人も出てなかったように見えた。それでもやっぱり気分は悪い。
「あとは、さっきも言った"なりそこない"についてだね。本当なら、あれが出るときは予測できるはずだったんだ。けど今回はそれが狂った。もし最初に遭遇したのが秋月君じゃなかったら、間違いなく犠牲者が出てただろう。」
確かに、そのくらいに強かった。バットしか持ってない50人なら全滅だってありえたかもしれない。
「あれは一体、なんなんですか?」
中武さんが腕を組み、右手で顎に触れる。
「年を経て魔力を貯めたダンジョンコアは人の姿をとるようになる。その途中にあるのが、その名の通り"なりかけ"。その中でも人とかけ離れた姿のものを"なりそこない"って呼んでるんだ。本当になりそこないなのかは分からないんだけどね。」
大体予想通りだ。けど聞きたいことが多すぎる。
「すいません、1個ずつ確認させてください。あの"なりそこない"は、このダンジョンのコアですか?」
これでコアがなくなってダンジョン終了とか洒落にもならない。
「それは心配しなくていい。あれは別の、たぶんムーかアトランティスのダンジョンのものだよ。彼らはダンジョン同士なら自由に移動できるようだから。」
よかった。ひとつ解決。
「じゃあ、"なりかけ"ってことは"なった"奴がいるってことですよね。さっきの、女性がそうなんですか?」
「そうだね。さっき見た彼女。彼女が"なった"姿だよ。彼女は必ず"なりかけ"や"なりそこない"のコアを手にした人の前に現れて、コアを受け取って去っていく。そんな存在さ。」
「…他にも、いるんですか?」
「もちろんいる。遭遇例は少ないけど、ほとんどは友好的でないか敵対的だ。もし運わるく出会ってしまったら、すぐに逃げることだね。ダンジョンは本来、彼らの世界なんだから。」
彼らの世界。
その言葉が胸に刺さる。胃をぎゅっと掴まれたような不快感。
「僕たちは、彼らのことを迷宮の主。ダンジョンマスターと呼んでる。まぁ実際はなにをしてるのか全然わからないんだけど。…秋月くん、どうかしたかい?」
中武さんの気遣わしげな声。
そんなに顔に出てたかな。
「いや、大丈夫です。でもそんな大事なことを、なんで講習で説明しないんですか?」
「…ダンジョン探索には反対勢力が多いよね。」
「はい。」
海外だと、けっこう過激な団体なんかもいるらしい。
「探索者はダンジョンに踏み込んで魔物を倒し、場合によってはダンジョンコアを破壊するしかない時だってある。でも、そのダンジョンコアに知性があるかもしれないってなるとどうなると思う?」
「反対派の格好の批判材料にされるってことですか。」
「そういうこと。だからせめて軌道に乗るまでは隠しておきたかったんだ。彼らが現れる時は事前に分かるし、その時は理由をつけてダンジョンを封鎖すればいい。はずだったんだけど…。」
組んでいた腕を解き、ハンドルへ突っ伏す中武さん。
「こうなってしまうと公表するしかないだろうね。気が重いよ。こんな事情で秋月君を危険に晒したのは申し訳ないんだけど。」
「俺は楽しかったからいいですよ。」
これは本音。今までで一番の闘いだったし、ダンジョンの秘密も聞けた。大きな組織だと非公開情報がいくつもあっても仕方ないとも思う。
ただ、彼らの世界か…。
「ほんとに君でよかったよ。ありがとう。他に聞きたいことはあるかい?」
「そうですね…。」
だいたい聞きたいことは聞けたんだけど…。
「中武さん、あの女性に親しげに話しかけてましたよね。あれってなんですか?」
ピクリと反応する。表情は変わらないけど。
「まぁ、歳を重ねると色々あるってことだよ。」
「そんな逃げ方はよくないと思います。」
ぶふっ、と中武さんが噴出す。
「いや、本当に言えないこともあるんだよ!」
「なにがですか!もう何かあるって臭わせた時点で終わってるじゃないですか!昨日今日でダンジョンに関わったんじゃないってモロバレですよ!だいたい雰囲気が堅気じゃないんですよ!」
中武さんが、しょぼんと肩を落とす。ちょっと言い過ぎた。八つ当たり入ってたかも。
「すいません。言い過ぎました。」
「いや、いいよ。実際その通りだしね。」
声に破棄がない。しぼみかけの風船みたいだ。
「まぁ、そうだね。ひとつ言えるとすると。」
フロントガラスの向こう、遠くを見るような目。
「僕は彼女に会うために、未だにダンジョンに関わり続けてるんだ。」
じゃあ戻ろうか、とさっさと外に出る中武さん。恥ずかしかったらしい。
そうかぁ。あのくらいの歳になっても普通に恋愛とかするんだなぁ。
いや、普通なのかな、これ。
やっぱり。50人くらいの探索者で、あの数はおかしいと思ったんだよ。
「けど、最初の奮戦を見ていけると感じてね。強行してしまった。これは後で公式に謝罪するよ。」
「そうしてください。」
話は聞いてたし強行した事情はわかる。実際になんとかなってしまったし、怪我人も出てなかったように見えた。それでもやっぱり気分は悪い。
「あとは、さっきも言った"なりそこない"についてだね。本当なら、あれが出るときは予測できるはずだったんだ。けど今回はそれが狂った。もし最初に遭遇したのが秋月君じゃなかったら、間違いなく犠牲者が出てただろう。」
確かに、そのくらいに強かった。バットしか持ってない50人なら全滅だってありえたかもしれない。
「あれは一体、なんなんですか?」
中武さんが腕を組み、右手で顎に触れる。
「年を経て魔力を貯めたダンジョンコアは人の姿をとるようになる。その途中にあるのが、その名の通り"なりかけ"。その中でも人とかけ離れた姿のものを"なりそこない"って呼んでるんだ。本当になりそこないなのかは分からないんだけどね。」
大体予想通りだ。けど聞きたいことが多すぎる。
「すいません、1個ずつ確認させてください。あの"なりそこない"は、このダンジョンのコアですか?」
これでコアがなくなってダンジョン終了とか洒落にもならない。
「それは心配しなくていい。あれは別の、たぶんムーかアトランティスのダンジョンのものだよ。彼らはダンジョン同士なら自由に移動できるようだから。」
よかった。ひとつ解決。
「じゃあ、"なりかけ"ってことは"なった"奴がいるってことですよね。さっきの、女性がそうなんですか?」
「そうだね。さっき見た彼女。彼女が"なった"姿だよ。彼女は必ず"なりかけ"や"なりそこない"のコアを手にした人の前に現れて、コアを受け取って去っていく。そんな存在さ。」
「…他にも、いるんですか?」
「もちろんいる。遭遇例は少ないけど、ほとんどは友好的でないか敵対的だ。もし運わるく出会ってしまったら、すぐに逃げることだね。ダンジョンは本来、彼らの世界なんだから。」
彼らの世界。
その言葉が胸に刺さる。胃をぎゅっと掴まれたような不快感。
「僕たちは、彼らのことを迷宮の主。ダンジョンマスターと呼んでる。まぁ実際はなにをしてるのか全然わからないんだけど。…秋月くん、どうかしたかい?」
中武さんの気遣わしげな声。
そんなに顔に出てたかな。
「いや、大丈夫です。でもそんな大事なことを、なんで講習で説明しないんですか?」
「…ダンジョン探索には反対勢力が多いよね。」
「はい。」
海外だと、けっこう過激な団体なんかもいるらしい。
「探索者はダンジョンに踏み込んで魔物を倒し、場合によってはダンジョンコアを破壊するしかない時だってある。でも、そのダンジョンコアに知性があるかもしれないってなるとどうなると思う?」
「反対派の格好の批判材料にされるってことですか。」
「そういうこと。だからせめて軌道に乗るまでは隠しておきたかったんだ。彼らが現れる時は事前に分かるし、その時は理由をつけてダンジョンを封鎖すればいい。はずだったんだけど…。」
組んでいた腕を解き、ハンドルへ突っ伏す中武さん。
「こうなってしまうと公表するしかないだろうね。気が重いよ。こんな事情で秋月君を危険に晒したのは申し訳ないんだけど。」
「俺は楽しかったからいいですよ。」
これは本音。今までで一番の闘いだったし、ダンジョンの秘密も聞けた。大きな組織だと非公開情報がいくつもあっても仕方ないとも思う。
ただ、彼らの世界か…。
「ほんとに君でよかったよ。ありがとう。他に聞きたいことはあるかい?」
「そうですね…。」
だいたい聞きたいことは聞けたんだけど…。
「中武さん、あの女性に親しげに話しかけてましたよね。あれってなんですか?」
ピクリと反応する。表情は変わらないけど。
「まぁ、歳を重ねると色々あるってことだよ。」
「そんな逃げ方はよくないと思います。」
ぶふっ、と中武さんが噴出す。
「いや、本当に言えないこともあるんだよ!」
「なにがですか!もう何かあるって臭わせた時点で終わってるじゃないですか!昨日今日でダンジョンに関わったんじゃないってモロバレですよ!だいたい雰囲気が堅気じゃないんですよ!」
中武さんが、しょぼんと肩を落とす。ちょっと言い過ぎた。八つ当たり入ってたかも。
「すいません。言い過ぎました。」
「いや、いいよ。実際その通りだしね。」
声に破棄がない。しぼみかけの風船みたいだ。
「まぁ、そうだね。ひとつ言えるとすると。」
フロントガラスの向こう、遠くを見るような目。
「僕は彼女に会うために、未だにダンジョンに関わり続けてるんだ。」
じゃあ戻ろうか、とさっさと外に出る中武さん。恥ずかしかったらしい。
そうかぁ。あのくらいの歳になっても普通に恋愛とかするんだなぁ。
いや、普通なのかな、これ。
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