天から二物も三物も与えられ過ぎた俺がダンジョンで青春を取り戻す

黒丸

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スペシャルセット

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諦めて上品な薄い黄色の店へと入る。
昼時なのに、すぐに座れたのは本当に運がよかった。
日差しが差し込む明るい店内は、洋食屋と言うよりカフェかケーキ屋のような雰囲気。
あと、レジに有名なアイドルグループの人のサインがあった。ほんとに有名店なんだ。
「えっと、ソウスケ。何を頼んだらいいんだ?」
レンが少し緊張してる。周りから見られてるもんなあ。俺だけでも目立つのにレンもかなり目立つから。
「うーん、俺もこの店は初めてなんだよ。ただ、やっぱり名物のチキン南蛮かなぁ。あとハンバーグも美味しいらしいよ」
「ちきんなんばん?」
ひら仮名になってるよ、レン。
「うん。揚げた鶏肉に甘酸っぱいソースをかけた料理。美味しいよ」
「なるほど。じゃあそれにしよう」
「あ、待って」
メニューの目立つ場所に、一度に食べ尽くすの売り文句と一緒に書かれているセットメニュー。これだ!
「レン、スペシャルセットにしよう。これだったらチキン南蛮とハンバーグとエビフライが全部食べれる」
「あ、エビか。わかった!それにする!」
「飲み物はどうする?」
「そうだな。ソウスケ、このカプチーノというのはなんだろう?」
「濃い目のコーヒーに牛乳をいれたやつ、だったかな。」
あれ、でもそれってカフェオレ?カフェラテ?カプチーノってなんだ?
「じゃあ、それにしよう。ソウスケは?」
「俺もカプチーノにする」
「それと、その、ケーキを…」
恥ずかしそうに申し出るレン。
「甘いの好きなんだ?」
「好きだ。似合っていないのはわかっているんだが…」
「そんなことないよ。俺も頼む」
喉まで出かかった、可愛いと思うという言葉を飲み込んで店員に声をかける。
注文はスペシャルセットとイチゴのショートケーキ。
ほんとは四人前くらい食べたいけど、ランチタイムだし迷惑になるから我慢。
「ソウスケは身体は大きいのに、食べる量は普通なんだな」
「いや、あんまり頼むと悪いから我慢してる。だから後で何か食べると思う」
そういうことか、とレンが笑う。
不思議だな。ほんの少し前まで命がけで戦ってたのに。なんかドキドキしてきた。
「どうかしたのか?」
俺の顔を覗き込んでくる。
睫毛ながいなぁ。
「いや、こんなふうに女の子と食事するのって初めてだから。緊張してた」
「あ…、私も、初めてだ。少し…嬉しいな…」
レンが恥ずかしそうに俯く。こういうときどんな反応するのが正解なんだ…。
「ちょっと意外だ。レンってもてそうだし」
「私は、その、どうしても恩人達と比べてしまうし、同年代にろくなのがいなかったんだ。それに私だって意外だった」
「俺は目立ちすぎるし大きすぎるしで避けられてたんじゃないかなあ」
先に出てきたサラダを突きながら、そんな話をしていると、料理が運ばれてくる。
「うわぁ」
レンの子供のような声をあげる。なにがあったの?
「すごいなソウスケ!まるで高級店みたいだ!これがちきんなんばん?エビに頭がついてる!頭も食べていいんだろうか!?」
びっくりするほどはしゃいでる。周りのお客さん達も微笑ましそうに見てるし。
「うん、頭も尻尾も食べていいよ」
「そうか、食べていいんだ。ああ、どれから食べよう。ソウスケ、どれから食べたらいい?」
レン、キャラが、テンションが。ギャップが凄いことになってるよ!?
「俺はチキン南蛮からにするよ」
「私もそうする!」
二人で同時にチキン南蛮を口に運ぶ。
うわっ、やわらかっ!
「おいひぃ…」
レンが緩みまくった顔で呟く。
うん、でも美味しい。少し甘めのタルタルソースとしっかり染み込んだ甘酢。ジューシーで柔らかいモモ肉。チキン南蛮はムネ肉派だったけど、モモ肉派に乗り換えてしまいそう。
「ソウスケ!エビ、エビを食べてもいいかな?」
「うん、俺も食べるよ」
タルタルソースをエビの頭にのせて、豪快にかぶりつくレン。そんないい食べっぷりなんだ。
「んふふふふ、おぃひぃ…」
笑いながら呟いて、あっと言う間にエビフライを平らげてしまう。
いや、確かに美味しいよ。エビはぷりぷりで衣はサクサクで頭も尻尾も香ばしくって。
でもレンの幸せそうな顔を見るので、それどころじゃなくなってきてる。
「レン、ハンバーグは食べないの?」
「う、その、ハンバーグは…」
話を聞いてみると、牧畜の技術が進んでないムー大陸では、ハンバーグは食べようのないスジ肉やクズ肉を無理やり食べるための料理らしい。
ようは美味しくないそうだ。
「食べてみなよ。美味しいから」
肉汁がじゅわ~と溢れてくる柔らかハンバーグ。ソースもたっぷりかかっていて本当に美味しい。ご飯がいくらでも入りそう。
「ソウスケがそう言うなら…」
恐る恐るハンバーグを口に運んで、目を瞑って口に放り込む。一瞬でレンの顔が緩んで…。
「ふゃぁぁあぁあぁ…」
美味しかったみたいだ。
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