血に濡れた約束は廃墟に眠る

まちにゃ

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仲間

感謝

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夜の帰り道。灯りの少ない地下の通りに、静かな足音が三つ。

そのうちの一つが、急に止まった。

「あ、あの!」

少女――先ほどまで薬の副作用に苦しんでいた被害者の一人が、勇気を振り絞って声を上げた。

「ありがとうございました……!本当に……!」

目に涙を浮かべ、両手をぎこちなく握りしめながら、レヴィア、ラナード、そしてマチルダに深く頭を下げる。

マチルダは立ち止まり、無表情のままじっと彼女を見つめる。

(……あれが、“感謝”?)

「へへ、大したことしてないっすよ!」

ラナードが照れくさそうに後頭部をかきながら笑った。

「事実だな」

レヴィアが鼻で笑う。

「えぇ!?まぁ確かに俺はほとんど何もできてないけどさ……」

ラナードがしょんぼりうなだれる。

マチルダは黙っていた。

(……気持ち悪い。いや、“悪い”って感覚とも違う。……ただ、分からない)

何で泣くの?
何でそんな顔で「ありがとう」なんて言うの?
私は誰も助けたつもりなんてなかったのに。

被害者の少女が、そっとこちらを見つめて言った。

「あなたは……大丈夫なんですか?」

「……あぁー、平気。さっき解毒剤飲んだから」

それは嘘だった。

けど、それを信じた少女は安心したように、にこっと微笑んだ。

「良かった……!」

そう言い残して、少女は仲間たちのもとへと戻っていった。

マチルダはその背中を、ぽかんとした顔で見送る。

(……“良かった”?私が無事で?……なんで?)

ただの他人。初対面。名前も知らない。
――それでも彼女は、私の無事を「良かった」と言った。

「マチルダのおかげで被害者が救われたな!すげぇよ!」

横でラナードが声を弾ませる。

「……ふーん」

「ふーんってなんだ!?ほんとマチルダって14歳のくせに冷めてるよ!」

「ラナードがうるさいだけ」

「ぐっ……」

その様子を、レヴィアは少し後ろから見つめていた。

(あいつ……)

――無表情。でも、その目は揺れていた。
わずかに、ほんのわずかに。

「無茶しやがって」

ふと声をかけると、マチルダは振り返って小さく言った。

「ん、ごめんね」

「……でもまぁ、よくやった」

そう言って、そっと彼女の頭を撫でる。

マチルダの目が丸くなって、ふにゃっと口元がほころんだ。

「ホント?んふ、嬉しい」

――感謝されることは分からなかった。
だけど、レヴィアに褒められたことは、ちゃんと“嬉しい”と感じられた。

それでいい。
それが、今のマチルダにとっての“正解”だ。

その夜、レヴィアは思う。

(あいつは人の痛みに共鳴できねぇ。けど、誰かの声に耳を傾けることは……少しずつ、できるようになってきた)

――それは、確かに進んでいる証だった。
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