【完結】たんぽぽ!

大竹あやめ

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「っ、んんっ」

再び唇が塞がれると、今度は舌が入ってきた。あらゆる角度で英を犯し、抵抗の意識を奪っていく。

長い長いキスだった。歯列をなぞられ、舌を絡められ吸われ、唇に噛みつかれる。

(か、体が……)

頭がふわふわして体が言うことを利かない。立っているのがやっとになり、月成はまだ続くキスの合間にムカつくことを言ってくる。

「唇の感度は合格だな」

「……ぁ、ん……」

無意識のうちに、英は月成の首に腕を回していた。もう立っていられないのにしつこくキスをしてくるものだから、すがってしまったのかもしれない。

「……あれ、鍵空いてるぞー」

「……っ」

そこへ不意に新たな人の気配がした。数人の足音は、時々止まりながら奥へと入ってくる。

「あ……っ」

すると月成はこともあろうに英の下半身を撫でた。しつこいキスでそこはさすがに熱くなっていて、敏感になっている。

「ん? 何か今声が聞こえなかったか?」

「そうか?」

遠くで聞こえる声は、何かを探しているようだ。英の声に反応したものの、すぐに目的を果たそうと、話題が逸れた。

(こいつ、信じられない!)

今のもわざと声を上げさせたのだろう、月成を睨むと、彼はニヤニヤと笑っていた。

「楽しくなってきたな」

「ちょ、何するんですかっ」

やはり楽しんでいるような月成は、英のズボンのチャックを下すと、下着ごと太ももまで下ろしてしまう。小声で止めても無駄だった。

「…………う」

英の中心を掴んだ月成の手が、動き出す。ビクンと跳ねた体で、背中のセットがカタンと軽い音を立てた。

「おい動くな。見つかっても良いのか?」

耳元で囁く声は甘く、英はそれにも反応してしまう。必死に首を横に振りながら、月成の施す愛撫に完全に流されていた。荒くなる息と声を抑えていると、月成は中心を擦っていた手の動きを変え、英に新たな刺激を与える。

「……っ!」

(このバカ! 絶対わざとやってる!)

息を殺しているから、本当に気が遠くなってきた。月成にしがみつき、早く終わらないかと思う。

「おい、審査員に顔を見せないとはどういうことだ。合格したくないのか」

「あ……っ」

しかも俯いていたらそんなことを言われ、先端をぐりぐりと擦られる。もう少しで痛みにもなりそうな刺激に、思わず声を上げてしまった。

「……やっぱり何か聞こえなかったか?」

「ああ、俺も聞こえた。ここ、いるって本当か? 嫌だ、早く見つけて出ようぜ」

「奥に行ってみるか」

なかなか目的のものを見つけられない彼らは、奥から順に探すことにしたらしい。足音がどんどん近づいてくる。

(見つかったらどうしよう……っ)

英は、今度は恐怖で体が震える。さすがの月成も動きを止めて彼らの動向を気にしているようだ。

「あ、あった!」

「ホントだ、じゃ、すぐに出ようぜ」

彼らはどうやら少し手前で目的の物を見つけたらしい。ここにいたくないのか、逃げるようにして去っていく。

英はホッとして足の力が抜けると、月成が体を支えた。

「まだ終わってねぇ。ちゃんと立て」

「冗談じゃない、あなたにイかされるなんて、……っ!」

セットがガタン、と音を立てた。月成は本格的に英を追い立て始めたのだ。息を詰めたところに月成の唇が重なって、息ができなくなる。

「んぅっ……」

すると英はあっという間に追い詰められ、精を放ってしまった。

はぁはぁと荒い呼吸を繰り返していると、月成は目の前で英の顔をずっと見ている。英も、何故か目を離せず、見つめ返した。

野性的な容姿に合った二重の瞳は、武士かと言うほどの力を持っている。この人が刀を持ったら、さぞ泥臭い侍ができるだろう。月成は、爽やかイケメンと言うよりも、そっちの方が似合う。こんな時なのについそんな考えが浮かんでしまう。

すると、その顔がにやりと笑った。何か企んでいそうな笑いに、身構える。

「……何だ、可愛い顔もできんじゃねぇか」

「バカですかあなたは」

間髪入れずにツッコミを入れると、不覚にも照れてしまったことに自己嫌悪する。
遅れて顔が熱くなるのを自覚し、視線をそらす。月成が褒め言葉を言ったことが、こんなに嬉しいとは思わなかった。しかし、それが演技のことではないのが、少し複雑だが。

「バカだな。最初は本気で降ろそうと思ってたのに、すっかりハマっちまった」

月成の思ってもみない言葉に動揺した英は、ますます月成の視線から逃れるように顔を逸らし、抵抗する。これはまた嫌がらせの一環だ、英はそう思い込むことにした。

「こっちだって本気で出たいと思ってましたから。っていうか、何こんな所で襲ってるんですか。オーディションって、全くの嘘じゃないですか」

「オーディションは二次審査もあんだよ。後ろ向け」

月成は半ば強引に、英の体の向きを変えた。後ろから覆いかぶさるようにして、セットに押し付けてくる。それと同時に、英の脚の狭間から濡れた指を入れられ、まさか、と振り返る。

しかし月成はそれを許さず、耳を噛んできた。抵抗しようと動きかけた体は、すぐに力が入らなくなってしまう。

「……っ」

「溜まってたのか? 小井出に薬飲まされたときも抜かなかったみたいだし」

そう言って、月成はさらに指を奥へ進める。本来とは違う使い方を強いられるのは、もちろん初めてで、強い異物感に呻く。

「ふざけん、なっ」

やっぱり嫌な奴だ、と英は思う。しかし、月成は今までとは違うニュアンスで触れてくるから、拒みきれない。何故だろうと思いつつ、口だけは抵抗する。

「力抜け」

「あなたが指を抜けばいい」

歪む顔を見せたくなくて、セットに額を当てた。すると彼は笑いながら、「可愛くねぇな。そこが可愛いんだが」と訳の分からないことを言っている。

英は自分でも、どうして月成だけには突っかかってしまうのだろう、と思う。嫌がらせをしてきた小井出には、何をされても心は動かなかったのに、月成には嫌味一つ言われただけで言い返している。

「集中しろ」

「あ……っ」

いつの間にか服の下に潜り込んでいたらしい彼の手で、胸の突起を摘ままれた。そのまま捏ねられると、ゾクゾクと何かが這い上がる。同時に中もかき混ぜられて、その刺激が馴染んできていることに、恥ずかしくなった。

「嫌だ……」

「嫌だじゃねーよ。これはオーディションだって言ってんだろ」

どんなオーディションだと英は心の中で突っ込む。合格したらどうなるのか、考えるだけでも怖い。

「大体、オレの仕事とこのオーディション、何の関係があるんですかっ」

そういえば先ほど木村と言い合っていた内容については、月成は話してくれていない。

知らないところで仕事の邪魔をされ、そうまでして英が役者の世界にいることが気に入らないのか、と上がる息の中で問う。

「黙ってろ。これ以上何か言うなら、一生俺の脚本には出させねぇぞ」

「……っ!」

英の体がビクンと跳ねた。それは月成の脅しのようなセリフに対してだったのか、英の中の指がある個所に触れたからなのか、英にも分からなかった。

後ろで、月成が笑う気配がする。

「ここか……」

「あぁ……っ!」

英の悲鳴が倉庫に響いた。それに月成は「静かにしろ」と一喝し、しつこく今しがた見つけた英の奥を刺激する。

(嫌だ、何だコレ!?)

そこに触れられると直接脳を刺激されているみたいに体が熱くなる。強すぎる快感にのた打ち回りたくなる体は、奇妙にくねくねと踊ってしまう。

「嫌だ、やめろ……っ」

初めての経験にパニックを起こした脳は、英の目に涙を流せと命令したらしい。屈服させられた悔しさと相まって、それはすぐにボロボロと落ちてきた。

それを気配で悟ったらしい月成は、顔を見せろ、と嫌な要求をしてくる。顎に手が伸びてきて、無理やり後ろを振り向かせられそうになって、必死でその手から逃げる。

「監督の言うことが聞けないってのか」

「……っ、言うこと聞くくらいなら、死んだ方がましだっ!」

いくらなんでも、これはやり過ぎだろう、と英は悔しくなる。英の意思は無視されたまま、一方的に事を進める月成は強引すぎる。

しかし英の精一杯の抵抗も叶わず、月成は楽しそうに鼻で笑うだけだ。ねっとりと耳たぶを舐め、それこそ心臓が止まってしまうほどの甘い声で囁く。

「そう簡単に殺してやるか、このガキ」

言葉づかいは悪くても、触れる仕草は羽のように柔らかい。いろいろなことで混乱している英は、月成の喉の奥で転がすような笑いにも、快感を覚えていた。

(何なんだ、オレ、おかしい)

確かに月成は憧れではあるけれど、こういうことをする仲としては見ていないはずだ。けれど英を抱いて楽しそうにしている月成を見て、喜んでいる。

それから月成との行為が終わるまで、英はその答えを探していたが、結局は見つからなかった。
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