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次の日の朝、目が覚めると、顔を真っ赤にした恋人の顔が目の前にあった。

「どうした?」

亮介が尋ねると、櫂斗は口をパクパクさせながらしどろもどろに話し出す。

「えっと、その……昨日お前の友達来てなかったか?」

「ああ、来てたな」

静かに答えると、櫂斗はますます慌てたように目が泳ぎ出した。どうやら、酔っている間の記憶は無いらしい。

「お、お、オレ……何か変な事してなかったか?」

「変な事? ……ああ、お前酔うとキス魔になるのな」

亮介がそう言うと、ああああ、と櫂斗は両手で顔を覆った。そんな反応も可愛いな、と亮介は思っていると、櫂斗はお前わざと飲ませただろ、と指の間から睨んでくる。

「わざと? 飲んだのは櫂斗の意思だよな?」

「……っ、人前で飲みたくないって言ったのに……」

櫂斗のその反応に、やはりな、と亮介はため息をついた。

「お前、酒飲んでやらかした失敗って、誰彼構わずキスしたんだろ」

「……そーだよ。合コンに誘われて飲んで、見事男だけに迫ってドン引きされたよ!」

櫂斗が言うには、ゲイだということを隠していたし、酒を飲んだら女性もいけるかなと思ったらしい。しかし結果は惨敗。しかも記憶は飛んでるわで、二度と酒なんか飲むかと思ったそうだ。

「酔ってる櫂斗、可愛かったけどなぁ」

「……」

亮介はそう言うけれど、櫂斗は顔を覆ったまま何も言わない。

「……また今度、櫂斗は酒無しでやり直そうって二人は言ってたぞ」

どうせ櫂斗の事だ、亮介の友達に引かれたんじゃと気にしてるかと思いそう言うと、案の定バッと手を外した。

「本当? 怒ってなかったか?」

「怒る? 櫂斗のあまりの色気に、二人ともタジタジだったけど、怒ってはいなかった」

「う……」

あ、そうか、と亮介はピンとくる。

「怜也は耐性はあまり無いけど、遊んでた時期の俺を知ってる唯一の友達だし、肇は彼氏がいる」

つまりは、亮介がゲイでSっ気があるのを知った上で付き合ってくれているのだ、その恋人がお酒で粗相したくらいでは怒らない。

「記憶が飛んでるからその辺の情報も忘れてるよな。大丈夫、言いふらしたりする奴らじゃないし」

そこまで言うと、櫂斗はようやく安心したらしい、肇さんも彼氏いるんだ、とか呟いている。昨日の態度といい、どうやら肇の事が気に入ったようだ。

「やたら肇と話が弾んでたぞ。気に入ったみたいだな」

それより、と亮介は櫂斗の上に移動した。それだけで動揺する櫂斗を可愛いと思いながら、両手を指を絡めて握る。

「俺の好きなようにしていいって言ったよな?」

記憶が飛んでいるので敢えての言葉だったが、櫂斗はそれで顔を真っ赤にした。

『いつもオレで遊んでばっかりで、亮介の好きなようにした事なかったから』って言ってたぞ、と言うと櫂斗は慌てる。

「い、いや……オレ覚えてねーしっ」

「酷いなぁ、櫂斗は」

逃げようとする櫂斗の身体に体重をかけると、櫂斗は何かに気付いて更に慌てる。

「おま、朝から……っ、てか、なんでたってるんだよっ?」

「ん? 昨日消化不良で終わったからじゃねーの? 好きなようにした事無いとか言って、誰かさんは寝ちゃったし」

「だ、から……覚えてないって……っ」

櫂斗の首筋に舌を這わせると、息を詰めて身体を震わせた彼は、涙目で亮介を見た。

「ホントに……覚えてないから……」

「じゃあ、今度二人で飲もうな」

二人きりなら良いだろ、と亮介が言うと、櫂斗は小さく頷いて、亮介の口付けを受け入れた。



今日一日、可愛がってやる。

亮介はそう言うと、櫂斗は素直にうん、と顔を赤らめたのだった。
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