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このあと二人は付き合いました
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【お題(診断メーカーより)】
書き出し「まるで魔法のようだった。」
終わり「あーあ、言っちゃった。」
______________________
まるで魔法のようだった。
俺は、彼の別の生き物のように動く左手の指から、目が離せない。
しんとしていたホールは一気に彼の音で満たされ、弦の震えは俺の心までも震わせる。
俺も、こんな風に弾けたら……。
そう考えると、彼の息遣い、立ち方、楽器の構え方、弓が弦を擦る雑音までも聞き落としたり、見落としたりするのが惜しくて、息を詰めて彼を見つめる。
自分の呼吸音すら邪魔になりそう。そう思う程の音の主張。舞台上の強い光を浴びながら、彼が動く度にキラキラと光る汗が落ちる。
激しく動く右手の弓は何本か切れていた。けれど彼はそんなこと気にしていない。高らかに響く高音に、俺の胸も高鳴る。そして同時に、俺の下半身も熱くなった。これは興奮を性的興奮と勘違いして身体が反応しているのか。それとも、彼があまりにも懸命に演奏する姿に、妖艶さを見出してしまったからなのか。分からない。
けれど、俺は彼の音、姿に、間違いなく惹かれていることは確かだ。
彼の音は空気を震わせ、俺の身体を愛撫する。とても心地いい快感に身を委ねると、俺の下半身はダメだと思いつつも硬く、熱くそそり立っていく。
すごい、こんな魅惑的な音は初めてだ。
もっと……もっとその音で俺を愛撫して欲しい。煌びやかな音で俺の耳をくすぐって、力強い音で俺を穿って、穏やかな音で俺を快楽の底まで誘って欲しい……。
……危うく達してしまいそうだった。
演奏が終わると、彼の友人たちだろうか、花束を持って舞台に駆け寄っていった。俺も、彼のいちファンとして花束を持って順番を待つ。
ついに俺の番が来た。演奏中に考えていたひと言を、彼と握手をしながら伝える。
「素晴らしい演奏でした」
「ありがとうございます」
彼は微笑んだ。その笑顔に俺は、余計なことを言ってしまったのだ。
「思わずイッてしまいそうでした。とても蠱惑的でしたよ」
彼の顔がすん、と真顔になった。
……あーあ、言っちゃった。
[完]
書き出し「まるで魔法のようだった。」
終わり「あーあ、言っちゃった。」
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まるで魔法のようだった。
俺は、彼の別の生き物のように動く左手の指から、目が離せない。
しんとしていたホールは一気に彼の音で満たされ、弦の震えは俺の心までも震わせる。
俺も、こんな風に弾けたら……。
そう考えると、彼の息遣い、立ち方、楽器の構え方、弓が弦を擦る雑音までも聞き落としたり、見落としたりするのが惜しくて、息を詰めて彼を見つめる。
自分の呼吸音すら邪魔になりそう。そう思う程の音の主張。舞台上の強い光を浴びながら、彼が動く度にキラキラと光る汗が落ちる。
激しく動く右手の弓は何本か切れていた。けれど彼はそんなこと気にしていない。高らかに響く高音に、俺の胸も高鳴る。そして同時に、俺の下半身も熱くなった。これは興奮を性的興奮と勘違いして身体が反応しているのか。それとも、彼があまりにも懸命に演奏する姿に、妖艶さを見出してしまったからなのか。分からない。
けれど、俺は彼の音、姿に、間違いなく惹かれていることは確かだ。
彼の音は空気を震わせ、俺の身体を愛撫する。とても心地いい快感に身を委ねると、俺の下半身はダメだと思いつつも硬く、熱くそそり立っていく。
すごい、こんな魅惑的な音は初めてだ。
もっと……もっとその音で俺を愛撫して欲しい。煌びやかな音で俺の耳をくすぐって、力強い音で俺を穿って、穏やかな音で俺を快楽の底まで誘って欲しい……。
……危うく達してしまいそうだった。
演奏が終わると、彼の友人たちだろうか、花束を持って舞台に駆け寄っていった。俺も、彼のいちファンとして花束を持って順番を待つ。
ついに俺の番が来た。演奏中に考えていたひと言を、彼と握手をしながら伝える。
「素晴らしい演奏でした」
「ありがとうございます」
彼は微笑んだ。その笑顔に俺は、余計なことを言ってしまったのだ。
「思わずイッてしまいそうでした。とても蠱惑的でしたよ」
彼の顔がすん、と真顔になった。
……あーあ、言っちゃった。
[完]
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い、言っちゃったんだ))))))))))))))))))))Σヾ('ω';)ノ
ピロシキさん、いつもありがとうございます(*´꒳`*)
ええ。診断メーカーのお題で、終わりがそうなってたので(笑)
それでも二人は付き合ったらしいので、二人とも同類な……ごにょごにょ。