【完結】天使の愛は鬼を喰らう

大竹あやめ

文字の大きさ
22 / 44
契の指輪

22

しおりを挟む
「意外に呆気なく終わったな」

 二人が家に帰って来たのは、日が暮れる前だった。何日かかかると思っていたと鷹使は呟いたが、緋嶺は聞こえないふりをしてリビングへと向かう。

(何か、今更だけど……気まずい)

 出会いが特殊過ぎたからか、何もかも見られてしまってから鷹使の事が好きだと自覚したので、いたたまれない。どうして奴は平気なのだろう、とうらめしく思う。

「おい、どうして急に落ち着かなくなった?」

 鷹使を避けるように動く緋嶺の様子に気付いて、鷹使はずい、と近付く。緋嶺はう、と息を詰まらせ視線を逸らすと、鷹使はなるほどな、と更に顔を近付けた。

「今更意識してるのか」

「ち、ちげーし」

「じゃあ何だ?」

「……」

 緋嶺は鷹使に見つめられて、顔が熱くなるのを自覚した。その反応に一番戸惑っているのが緋嶺で、思えば誰かを好きになること自体が初めてだったと気付く。

(……ってか、ホント人間離れした綺麗な顔してんだよな。人間じゃないから当たり前なんだけど)

「お前の初恋が俺で良かったよ」

「自惚れんな……」

 鷹使は笑う。そうじゃなければ、今頃緋嶺は好きになった人のそばを離れたがらないだろう、と言われ、とことん読まれているな、と思った。

「……あんた、俺の伯父さんだろ? いいのかよ、こんな……」

「それも、今更だ」

 鷹使の唇が、更にいい募ろうとした緋嶺の唇を塞ぐ。とろりとした甘い蜜が緋嶺の唾液と混ざり、足の力が抜けそうになって耐えた。

「……甘い」

「……じゃあ、もっとするか?」

 唇が離れた隙に軽く文句を言うと、鷹使は声色も甘くまた口付けをする。

 すると、スマホのバイブレーションの音がした。緋嶺は少しホッとすると、鷹使は舌打ちをする。

「……はい。お世話になっております……はい」

 電話に出た鷹使はリビングから出ていく。緋嶺はその場に座り込むと、長く息を吐いた。

 顔が熱い。身体が疼く。

 自分はこんなにも快楽に弱かったのか、とショックを受けた。ある程度鷹使がコントロールしていると思うけれど、それにしても流されすぎではないかと思う程だ。

(護ってくれてるのは分かる。でもこのままだと……)

 緋嶺を探す人ならざる者が、いつまでも返り討ちにできるとは限らない。ジリ貧決定の未来に、どうしたものかとまたため息をついた。

(俺は鷹使との【ちぎり】で安定してる。なら指輪をどうにかすればいいのか?)

 またどうして緋月は緋嶺の体内に指輪を隠したのか? 緋嶺にしか扱えないというなら、さっさと破壊してくれたら良かったのに。

「緋嶺」

 不意に呼ばれてハッとすると、いつの間にか鷹使が戻って来ていたらしい。しかし彼の表情は晴れず、重苦しい雰囲気をまとっていた。

「また出るぞ。今度は……死亡事件だ」
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話

降魔 鬼灯
BL
 ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。  両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。  しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。  コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。  

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

望まれなかった代役婚ですが、投資で村を救っていたら旦那様に溺愛されました。

ivy
BL
⭐︎毎朝更新⭐︎ 兄の身代わりで望まれぬ結婚を押しつけられたライネル。 冷たく「帰れ」と言われても、帰る家なんてない! 仕方なく寂れた村をもらい受け、前世の記憶を活かして“投資”で村おこしに挑戦することに。 宝石をぽりぽり食べるマスコット少年や、クセの強い職人たちに囲まれて、にぎやかな日々が始まる。 一方、彼を追い出したはずの旦那様は、いつの間にかライネルのがんばりに心を奪われていき──? 「村おこしと恋愛、どっちも想定外!?」 コミカルだけど甘い、投資×BLラブコメディ。

勇者様への片思いを拗らせていた僕は勇者様から溺愛される

八朔バニラ
BL
蓮とリアムは共に孤児院育ちの幼馴染。 蓮とリアムは切磋琢磨しながら成長し、リアムは村の勇者として祭り上げられた。 リアムは勇者として村に入ってくる魔物退治をしていたが、だんだんと疲れが見えてきた。 ある日、蓮は何者かに誘拐されてしまい…… スパダリ勇者×ツンデレ陰陽師(忘却の術熟練者)

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。 ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら! 完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

〈完結〉【書籍化・取り下げ予定】「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です

ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」 「では、契約結婚といたしましょう」 そうして今の夫と結婚したシドローネ。 夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。 彼には愛するひとがいる。 それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?

処理中です...