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それから……
番外編 約束
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「追っ手は?」
これは緋月とサラ、緋嶺が逃亡生活をしている頃の話。ヒスイはある森の中にある、ちょっとした洞窟の中に入ると、待ち構えていた緋月が聞いてくる。
「……今のところ、この場所はバレていないようだ」
ヒスイはそう言うと、緋月はホッとした表情を浮かべ、サラが抱いた緋嶺の頬を撫でる。
「だがこのままだと、いずれ見つかる。何とかしないと……」
「ヒスイ」
サラが止めた。不穏な話は緋嶺の前ではしないと、つい先日決めたのだ。ヒスイはため息をついて、緋月を洞窟の外へ連れ出す。
「ヒスイ、落ち着いて聞いてくれ。やっぱり、俺たちはお前の立場を悪くするような事はできない」
もう何回その話をしただろう、ヒスイはまたため息をつくと、それも承知の上だ、と返す。
「だからな? 俺たちを悪者にしてくれ。緋嶺の事は、何とかするから」
それはもちろんの事だが、緋月とサラも無事でいる事が条件だ。こんな幼子を置いて行くなんて許される事じゃない。
そう言って怒ると、緋月は分かった分かったと笑う。どうして笑うのか、とヒスイは更に怒った。
「俺な、緋嶺と将来やりたい事があるんだ」
「……なんだそれは」
緋月は話してくれた。彼は一つの場所に留まるのが嫌な性格らしく、こっそり色んな世界を見て回ったという。
「人間界のな、公園ってところで緋嶺と遊びたい」
緋月はその公園で、親子が楽しそうに遊んでいるのを見て、羨ましかったと言う。平和で、殺伐とした自分たちの状況に無いものだったから、強く憧れたと。
「だからな、もし俺が……」
「それ以上言うと殴る」
ヒスイは堪らず声を上げた。親子で行けないだろうから、お前が代わりになんて言葉、聞きたくもない。
「……お前が自分で行け。俺は知らん」
そう言ってそっぽを向くと、緋月は分かった、と苦笑する。そして、まだ道はあると思ってるからな、と歯を見せて笑い、サラと緋嶺の元へ戻って行った。
「なあ、わざわざここに来て、何するんだ?」
「特に何も。好きなように遊べ」
鷹使は緋嶺を連れて、とある公園に来ていた。それなりに大きな公園で、様々な遊具があり、親子連れがたくさん来ていて賑わっている。
「遊べって……俺、さすがにあの中に混ざって楽しむ勇気はないよ」
「……そうか」
鷹使はそう言ってベンチに座る。緋嶺もその隣に腰を下ろすと、声を上げてはしゃぐ子供たちを眺めていた。その目はどこか嬉しそうだけれど、寂しそうにも見える。
「……羨ましいか?」
そう聞くと、緋嶺は苦笑した。
「悪かったな、早く見つけてあげられなくて」
もう少し、緋嶺を見つけるのが早かったら。
そんなことを思っていると、緋嶺は立ち上がった。
「別に、アンタのせいじゃないだろ……」
そして緋嶺は右手を差し出してくる。何? と首を傾げると、遊ぶんだろ、早く行くぞ、と手を引かれた。そしてそのまま駆け出す。
「おい、俺は……っ」
「何だよ、俺一人で子供に混ざって遊べって? アンタも道連れだよ!」
そう言って振り向いた緋嶺は、歯を見せて笑った。その顔が緋月と重なって、鷹使は思わず息を飲む。
緋月、これで良いよな?
あの時最後まで聞かなかった約束は果たしたぞ、と鷹使は心の中で呟いた。
そばにいられないお前の代わりに、俺がずっと一緒にいて、お前以上に愛してやる。
それが、俺が産まれた意味だ、と。
(約束 終)
これは緋月とサラ、緋嶺が逃亡生活をしている頃の話。ヒスイはある森の中にある、ちょっとした洞窟の中に入ると、待ち構えていた緋月が聞いてくる。
「……今のところ、この場所はバレていないようだ」
ヒスイはそう言うと、緋月はホッとした表情を浮かべ、サラが抱いた緋嶺の頬を撫でる。
「だがこのままだと、いずれ見つかる。何とかしないと……」
「ヒスイ」
サラが止めた。不穏な話は緋嶺の前ではしないと、つい先日決めたのだ。ヒスイはため息をついて、緋月を洞窟の外へ連れ出す。
「ヒスイ、落ち着いて聞いてくれ。やっぱり、俺たちはお前の立場を悪くするような事はできない」
もう何回その話をしただろう、ヒスイはまたため息をつくと、それも承知の上だ、と返す。
「だからな? 俺たちを悪者にしてくれ。緋嶺の事は、何とかするから」
それはもちろんの事だが、緋月とサラも無事でいる事が条件だ。こんな幼子を置いて行くなんて許される事じゃない。
そう言って怒ると、緋月は分かった分かったと笑う。どうして笑うのか、とヒスイは更に怒った。
「俺な、緋嶺と将来やりたい事があるんだ」
「……なんだそれは」
緋月は話してくれた。彼は一つの場所に留まるのが嫌な性格らしく、こっそり色んな世界を見て回ったという。
「人間界のな、公園ってところで緋嶺と遊びたい」
緋月はその公園で、親子が楽しそうに遊んでいるのを見て、羨ましかったと言う。平和で、殺伐とした自分たちの状況に無いものだったから、強く憧れたと。
「だからな、もし俺が……」
「それ以上言うと殴る」
ヒスイは堪らず声を上げた。親子で行けないだろうから、お前が代わりになんて言葉、聞きたくもない。
「……お前が自分で行け。俺は知らん」
そう言ってそっぽを向くと、緋月は分かった、と苦笑する。そして、まだ道はあると思ってるからな、と歯を見せて笑い、サラと緋嶺の元へ戻って行った。
「なあ、わざわざここに来て、何するんだ?」
「特に何も。好きなように遊べ」
鷹使は緋嶺を連れて、とある公園に来ていた。それなりに大きな公園で、様々な遊具があり、親子連れがたくさん来ていて賑わっている。
「遊べって……俺、さすがにあの中に混ざって楽しむ勇気はないよ」
「……そうか」
鷹使はそう言ってベンチに座る。緋嶺もその隣に腰を下ろすと、声を上げてはしゃぐ子供たちを眺めていた。その目はどこか嬉しそうだけれど、寂しそうにも見える。
「……羨ましいか?」
そう聞くと、緋嶺は苦笑した。
「悪かったな、早く見つけてあげられなくて」
もう少し、緋嶺を見つけるのが早かったら。
そんなことを思っていると、緋嶺は立ち上がった。
「別に、アンタのせいじゃないだろ……」
そして緋嶺は右手を差し出してくる。何? と首を傾げると、遊ぶんだろ、早く行くぞ、と手を引かれた。そしてそのまま駆け出す。
「おい、俺は……っ」
「何だよ、俺一人で子供に混ざって遊べって? アンタも道連れだよ!」
そう言って振り向いた緋嶺は、歯を見せて笑った。その顔が緋月と重なって、鷹使は思わず息を飲む。
緋月、これで良いよな?
あの時最後まで聞かなかった約束は果たしたぞ、と鷹使は心の中で呟いた。
そばにいられないお前の代わりに、俺がずっと一緒にいて、お前以上に愛してやる。
それが、俺が産まれた意味だ、と。
(約束 終)
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