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壊すべきものは

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 陽の光が入ってきて、緋嶺は目が覚めた。

 身体がだるい。けれど心はとてもスッキリしている。

「起きたか」

 横から声がして見ると、鷹使が隣で肘をついて寝ていた。その顔は穏やかに笑っている。

「寝顔を見てんじゃねーよ……」

 幸せそうに自分を見る鷹使を見て、緋嶺は照れくさくなった。照れ隠しにそう言うと、あまりにも可愛かったからつい、と恥ずかしげもなく言うので閉口してしまう。

「アンタ……初めて会った時とキャラ違くねぇ?」

「まあ、それは認める。サラとの約束もあったし、お前は何も知らなかったからな」

 それでもいきなりキスをしたり、身体を触っていたので、やはり鷹使が緋嶺のことを、ずっと好きだったというのは本当だったらしい、と緋嶺は呆れてため息をついた。

「緋嶺……」

「なに……? ん……」

 呼ばれて返事をすると、キスをされる。そして離れた鷹使の琥珀色の瞳に、緋嶺は見蕩れた。その目が細められた。

「そのうち、旅行にでも行こう。……新婚旅行だ」

「……アンタなぁ……」

 緋嶺は熱くなった顔を背ける。しかし、そこでぎったのはセナと索冥のことだ。自分だけ楽しんで良いのか、と自分の心にブレーキをかけるように、思い出してしまう。

 鷹使は緋嶺の髪を梳いた。

「……ここのところ食事の量も落ちてる。美味いもの食って、のんびりしよう」

 それが、今お前にできるアイツらへの弔いだ、と鷹使は言う。

「ま、セナはほっといてよ、とか言いそうだし、索冥も……何だかんだ言ってツンツンしてそうだしな」

 そう言って想像したら笑えてきた。鷹使も笑う。

「それにほら、お前は一人じゃないし、大野さんだっている」

 だから元気出せ、とまた頭を撫でられて笑おうとして、失敗した。

「アイツら、本当に俺のせいじゃないって、思ってくれてるのかなぁ?」

 溢れてきた涙を拭うと、緋嶺は鷹使に抱きつく。鷹使は当たり前だ、と抱き締め返してくれた。その温もりにまた泣けてきて、緋嶺は気が済むまで泣く。

「そうじゃなきゃ、緋嶺の味方になろうなんて思わない。力じゃない方法で、族長たちを仲間にしたのはたいしたものだ」

 鷹使はとことん自分に甘いな、と緋嶺は思った。けれど緋嶺も単純で、その言葉に少しだけ救われた、とも思う。

「さあ、朝食にするぞ。メニューは……ステーキにするか?」

「朝から肉はいらない」




 鷹使の冗談に、緋嶺は笑った。


《壊すべきものは 完》
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