【ショートショート集】#適当なタイトルをもらうとそれっぽい書出しが返ってくる(Twitterタグ企画)

大竹あやめ

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性癖で殴り合う男達の負けられない闘い

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「ほら、見ろよこの上腕二頭筋」

 男はその盛り上がった筋肉を見せる。

「まだまだ。オレの大腿四頭筋の方が素敵だろう?」

 もう一人の男もパンパンに膨らませた太腿を見せた。

「うーん! じゃあこの大胸筋はどうだ!」
「それじゃあオレの腹直筋!」

 負けられない闘いが、そこにある。

 男たちは互いに鍛え上げた、美しく映える筋肉を見せびらかす。日頃から筋肉のため、食事に気を遣ったり、休息にまで気を遣う。

 運動はその最たるもので、その律された生活に裏付けされた筋肉たちは、見られる為に大きく育つのだ。自分を律すれば律する程、筋肉は輝く。筋肉は、裏切らない。

「俺の筋肉の方が美しいだろ!?」
「いや! オレの方が均整が取れてる!」

 男たちは、どちらが美しい筋肉の持ち主か競い合っていた。一人は大胸筋をヒクヒクと動かし、もう一人は腰を捻って腹斜筋をこれでもか、と見せて近付く。

 近付いた二人はそっと唇を合わせた。

「はああああ……俺の負けだ、お前の大腿二頭筋には敵わないよ」
「それを言うなら、オレはお前より綺麗な大臀筋見たことない……」
「なぁにぃ!? お前の僧帽筋は屋根みたいで、しっかり俺を守ってくれそうじゃないか!」
「いやいや! お前の下腿三頭筋だって、かぶりつきたいくらい美味そうじゃないか!」

 互いに闘っていたはずなのに、いつの間にか互いを褒めあっていたことに気付いた男たちは、その厚い胸板を合わせて抱き合った。

「もう……お前の筋肉全部好き」
「オレら、筋肉フェチ同士で良かったな」

 そう言うと、二人はまた口付けを交わす。

 そしてまた明日も、二人の仁義なき戦いが始まるだろう。

 二人ともお幸せに。


[完]
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