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友達に、夜のドライブに誘われて
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「このあと、ちょっとドライブでもしない?」
僕は友人と店で晩ご飯を楽しんだあと、彼にそう誘われ、一緒に車に乗り込んだ。どうせ僕は電車で来ていたし、ついでに送るよとまで言われたら、断る理由はない。
車窓から、早く通り過ぎていくビル街の明かりを眺める。初めは大通りを通っていた車は、しばらくして高速道路に乗った。
どこまで行くんだろう?
そう思いながら、僕はハンドルを握る彼の腕を盗み見る。程よくついた筋肉が見えて、僕は慌てて視線を逸らした。
先程から、彼はほとんど喋らない。だから、何となく僕も話すことは躊躇われて、黙っている。
少し緊張してるの、バレていないかな?
閉ざされた空間、二人きり。意識してしまうと余計に緊張してしまい、僕は再び窓の外を眺めた。
早く着かないかな。この緊張から逃れるためにそんなことを思っていると、車は高速道路を降り始める。
そこで見えたのは、先程とは大違いの緑が多い場所。って言っても、暗いから空より黒い影でそう判断してるだけだけど。
車はやがて山へ入り、お世辞にも快適とは言えない道を進んでいく。
「ねぇ、どこまで行くの?」
さすがに不安になって聞くと、彼は素っ気なく「いいトコ」としか答えなかった。
そしてある所で車を停める。「降りるぞ」と言われ、さっさと先に行ってしまう友人を追い掛けるようにして、僕も後を付いて行った。
すると少しした所で彼は景色を眺めている。「待ってよ」と彼の隣に行くと、目下に見えた景色に僕は声を上げた。
「わぁ、綺麗!」
見えたのは、先程僕たちがいた街の夜景だ。オレンジから白、そして青色も混ざる光が、遠く下の方で輝いている。
でも、僕はそれ以上言葉を発することができなかった。しんとなった空気は重くはないけれど、何となく、ピリピリとした緊張感が漂っている。
「なぁ」
彼がこちらを向く気配がした。僕は身体に力が入るのを自覚する。
「……綺麗だな」
「……うん」
さあっと、風が吹いた。緊張で熱くなった身体の火照りを、風が取り去ってくれて涼しいな、と思って彼を見ると、彼はこちらを見ている。ドキリとした。
「……」
彼が笑う。
「やっと視線が合った」
「……うん」
風で木々が揺れる音、葉が擦れ合う音が、妙に耳に響く。
「……あのさ」
そのあと彼が緊張した面持ちで言った言葉に、僕は「うん」と頷いた。
[完]
僕は友人と店で晩ご飯を楽しんだあと、彼にそう誘われ、一緒に車に乗り込んだ。どうせ僕は電車で来ていたし、ついでに送るよとまで言われたら、断る理由はない。
車窓から、早く通り過ぎていくビル街の明かりを眺める。初めは大通りを通っていた車は、しばらくして高速道路に乗った。
どこまで行くんだろう?
そう思いながら、僕はハンドルを握る彼の腕を盗み見る。程よくついた筋肉が見えて、僕は慌てて視線を逸らした。
先程から、彼はほとんど喋らない。だから、何となく僕も話すことは躊躇われて、黙っている。
少し緊張してるの、バレていないかな?
閉ざされた空間、二人きり。意識してしまうと余計に緊張してしまい、僕は再び窓の外を眺めた。
早く着かないかな。この緊張から逃れるためにそんなことを思っていると、車は高速道路を降り始める。
そこで見えたのは、先程とは大違いの緑が多い場所。って言っても、暗いから空より黒い影でそう判断してるだけだけど。
車はやがて山へ入り、お世辞にも快適とは言えない道を進んでいく。
「ねぇ、どこまで行くの?」
さすがに不安になって聞くと、彼は素っ気なく「いいトコ」としか答えなかった。
そしてある所で車を停める。「降りるぞ」と言われ、さっさと先に行ってしまう友人を追い掛けるようにして、僕も後を付いて行った。
すると少しした所で彼は景色を眺めている。「待ってよ」と彼の隣に行くと、目下に見えた景色に僕は声を上げた。
「わぁ、綺麗!」
見えたのは、先程僕たちがいた街の夜景だ。オレンジから白、そして青色も混ざる光が、遠く下の方で輝いている。
でも、僕はそれ以上言葉を発することができなかった。しんとなった空気は重くはないけれど、何となく、ピリピリとした緊張感が漂っている。
「なぁ」
彼がこちらを向く気配がした。僕は身体に力が入るのを自覚する。
「……綺麗だな」
「……うん」
さあっと、風が吹いた。緊張で熱くなった身体の火照りを、風が取り去ってくれて涼しいな、と思って彼を見ると、彼はこちらを見ている。ドキリとした。
「……」
彼が笑う。
「やっと視線が合った」
「……うん」
風で木々が揺れる音、葉が擦れ合う音が、妙に耳に響く。
「……あのさ」
そのあと彼が緊張した面持ちで言った言葉に、僕は「うん」と頷いた。
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