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第127話
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微かな気疲れを覚えつつも居間兼用の食堂へ向かい、本職たるフィア監修の下で祈りを捧げて、彼女が調理してくれたハムエッグとパンを頂く傍ら、秋蕪と原茸の入ったスープで喉を潤す。
先日、イヌ科獣人が食べられない物を聞かれた際、あの手この手で地母神派に勧誘されているウルリカは玉葱を挙げていたものの……
人狼族は完全な雑食に適応しているため、しれっと苦手なものを伝えていたに過ぎず、先祖伝来の自然信仰も捨てる気はないように見えた。
(結構、強かな性格ではあるな)
輪廻の狭間、繰り返す “邯鄲の夢” で毛色の違う宗教を複数経験したこともあり、寛容の精神すら忘れて惨劇を生むような執着や、頑なさも不合理だと心得ているが、個人的に見習うべき部分は多いと思える。
郷に入っては郷に従えと謂えども、過去に崇め奉っていた八百万の神々より、心が離れている現状に気付いてしまえば、それなりに考えさせられるモノがあった。
(くっ、前世は皇国人のはずなのに! もしや… 米を喰ってない弊害か!?)
食事時なのもあって炊き立てのご飯や、おにぎりが心を掠めてしまえば、もはや米食に対する渇望は止められない。
少しでも紛らせようとライ麦パンに齧りつき、やや豪快に嚙み千切ると対面にいた半人造の少女が訝しげな視線を投げてきた。
「焼き立てだから、まだ硬くないはずだけど?」
「急に荒ぶられても困ります、ジェオ君」
「…… すまない、何やら故郷が恋しくなったようだ」
「ん~、こっちは内陸だし、海産物がないよね」
自領の話だと勘違いしたリィナの相槌により、幸いにも信憑性を疑われそうな彼是の説明は求められず、再び緩りとした朝食の時間が流れていく。
その後は食器などの片付けや、隙あらば俺の世話を焼いて見返りに甘えようとする人狼娘との攻防を挟んで、皆とフィアの職場でもある聖マリア教会へ出向いた。
王都地下の錬成陣を破壊して以降、新たな昏睡事件の被害者は出ておらず、殆どの者達が顕著な恢復を見せているのも調べた上、押収品を持参しての訪問となる。
「取り敢えずは現時点で解決したと言えるが、大司教殿がどう判断するかだな」
「手柄を教会の喧伝に使って、もし次の事件が発生したら……」
「うぐッ、やめてください、胃がキリキリします」
何かあった時、真っ先に誤報の責任を取らされそうな司祭の娘が呻いて、そっと法衣越しのお腹を撫ぜる姿など見遣りながら、先方にも慎重な対応を求めなければと意識に留めておく。
グラシアの内部だと国教会、他国では教皇庁に属する柔軟かつ特殊な立場を鑑みるなら、自領と縁深い地母神派には責められる原因を作らないよう、無難に立ち廻ってもらうことが望ましい。
それは相手も理解していたのか、人払い済みの大聖堂で待っていた若い淑女、稀代の英雄と結ばれた聖女の子孫であり、自身も派閥の最精鋭たる大司教は一通りの話へ耳を傾けると、柔らかに微笑んだ。
先日、イヌ科獣人が食べられない物を聞かれた際、あの手この手で地母神派に勧誘されているウルリカは玉葱を挙げていたものの……
人狼族は完全な雑食に適応しているため、しれっと苦手なものを伝えていたに過ぎず、先祖伝来の自然信仰も捨てる気はないように見えた。
(結構、強かな性格ではあるな)
輪廻の狭間、繰り返す “邯鄲の夢” で毛色の違う宗教を複数経験したこともあり、寛容の精神すら忘れて惨劇を生むような執着や、頑なさも不合理だと心得ているが、個人的に見習うべき部分は多いと思える。
郷に入っては郷に従えと謂えども、過去に崇め奉っていた八百万の神々より、心が離れている現状に気付いてしまえば、それなりに考えさせられるモノがあった。
(くっ、前世は皇国人のはずなのに! もしや… 米を喰ってない弊害か!?)
食事時なのもあって炊き立てのご飯や、おにぎりが心を掠めてしまえば、もはや米食に対する渇望は止められない。
少しでも紛らせようとライ麦パンに齧りつき、やや豪快に嚙み千切ると対面にいた半人造の少女が訝しげな視線を投げてきた。
「焼き立てだから、まだ硬くないはずだけど?」
「急に荒ぶられても困ります、ジェオ君」
「…… すまない、何やら故郷が恋しくなったようだ」
「ん~、こっちは内陸だし、海産物がないよね」
自領の話だと勘違いしたリィナの相槌により、幸いにも信憑性を疑われそうな彼是の説明は求められず、再び緩りとした朝食の時間が流れていく。
その後は食器などの片付けや、隙あらば俺の世話を焼いて見返りに甘えようとする人狼娘との攻防を挟んで、皆とフィアの職場でもある聖マリア教会へ出向いた。
王都地下の錬成陣を破壊して以降、新たな昏睡事件の被害者は出ておらず、殆どの者達が顕著な恢復を見せているのも調べた上、押収品を持参しての訪問となる。
「取り敢えずは現時点で解決したと言えるが、大司教殿がどう判断するかだな」
「手柄を教会の喧伝に使って、もし次の事件が発生したら……」
「うぐッ、やめてください、胃がキリキリします」
何かあった時、真っ先に誤報の責任を取らされそうな司祭の娘が呻いて、そっと法衣越しのお腹を撫ぜる姿など見遣りながら、先方にも慎重な対応を求めなければと意識に留めておく。
グラシアの内部だと国教会、他国では教皇庁に属する柔軟かつ特殊な立場を鑑みるなら、自領と縁深い地母神派には責められる原因を作らないよう、無難に立ち廻ってもらうことが望ましい。
それは相手も理解していたのか、人払い済みの大聖堂で待っていた若い淑女、稀代の英雄と結ばれた聖女の子孫であり、自身も派閥の最精鋭たる大司教は一通りの話へ耳を傾けると、柔らかに微笑んだ。
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