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第42話
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迫る樹々を躱して400メートルほど走り抜けると、周辺よりも植生の密度が明らかに低い、小規模な森の広場と美しい緑肌の少女が視界に入る。
途切れた枝葉の天井から降り注ぐ陽光を受け、声なき声で歌う姿はとても神秘的に見えるが、様々な死体を養分にする植物から派生した魔物のアルラウネであり、その足元には人骨らしき物も散らばっていた。
蔦で下半身を覆われた少女の傍では、活動状態に移行した少なくない数の軍隊蜂が浮かび上がり、忠実な従者のように旋回し始める。
「これって、あいつが大蜂を操ってるの?」
「見た感じだと、そうだろうな」
聡いリィナに応じる一方で、人には聞こえない周波数の音波で従えているのかと目星をつけ、こちらに飛んできた尖兵らを迎撃すべく、途中まで多数同時に構築済みの魔法 “領域爆破” を完成させた。
「「ギィイッ!?」」
突如、虚空より生じた爆炎に大蜂どもが飲まれ、半透明の翅や外骨格を焼かれて、落ち葉の敷かれた草地に墜ちる。
されども、厄介な魔蟲のせいで体力的に消耗している上、動きが鈍ったところに集られて毒針を喰らえば、前後不覚のまま嬲り殺しとなるために油断はできない。
(小さな体躯もあって、ひと噛みが浅いだけに悲惨だろうな……)
最後まで死に切れず、意識のある状況で解体されていくのは御免被りたいと、気合を入れ直して腹の深い部分から声を出す。
「フィア、閃光弾を!!」
「ッ、光あれ!」
短い言葉で交わした移動中の取り決めに従い、侍祭の娘は発動直前の段階に留めていた術式を解き放ち、極光の球が顕現するや否やノータイムで炸裂させた。
「「ギィイイ――ッ!!」」
瞼のない昆虫系の魔物は抗うことを許されず、溢れる光の奔流に視野を奪われる。先刻と違って轟音は伴わないものの、十分な時間稼ぎになるはずだ。
ここが分水嶺と判断して、連続的に発生させた “魔力波の反射” を研ぎ澄ませた知覚で捉え、マナ制御で強化した頭脳にて定位の把握など行いながら、瞳を閉じた状態で加速する。
(見える、俺にも敵が見え… ッ!?)
脳裏で結ばれる影像に興奮した瞬間、真下の注意が欠けていたのか、木の根に躓き、頭から盛大に地面へ転がってしまう。
我が師サイアスの呵々大笑が響く中、視覚を取り戻した涙目のアルラウネは怒り心頭な様子で、露わな裸体に幾つも絡ませていた茨の鞭を振るった。
「いでむ えめる ぜれ!!」
「ぐぅ!!」
僅差で理解不能な叫びと共に見舞われた初撃を後方へ避け、追い縋る次撃は鞘走らせた鉄剣の一撃で断ち切って、返しの刃と連動させるように一歩目を踏み込む。
そこから神速の剣戟を以って、瞬時に再生して打ち寄せる大量の鞭を延々と薙ぎ払い、軽傷など負いつつも近くて遠い数歩分の距離を詰めていく。
「うるあ、うるあ、うるあぁああッ」
「これで、終わりだ」
刹那の銀閃が煌めき、驚愕の表情を浮かべた緑肌の少女に白刃が届いて、その華奢な身体を大きく斜めに切断した。
途切れた枝葉の天井から降り注ぐ陽光を受け、声なき声で歌う姿はとても神秘的に見えるが、様々な死体を養分にする植物から派生した魔物のアルラウネであり、その足元には人骨らしき物も散らばっていた。
蔦で下半身を覆われた少女の傍では、活動状態に移行した少なくない数の軍隊蜂が浮かび上がり、忠実な従者のように旋回し始める。
「これって、あいつが大蜂を操ってるの?」
「見た感じだと、そうだろうな」
聡いリィナに応じる一方で、人には聞こえない周波数の音波で従えているのかと目星をつけ、こちらに飛んできた尖兵らを迎撃すべく、途中まで多数同時に構築済みの魔法 “領域爆破” を完成させた。
「「ギィイッ!?」」
突如、虚空より生じた爆炎に大蜂どもが飲まれ、半透明の翅や外骨格を焼かれて、落ち葉の敷かれた草地に墜ちる。
されども、厄介な魔蟲のせいで体力的に消耗している上、動きが鈍ったところに集られて毒針を喰らえば、前後不覚のまま嬲り殺しとなるために油断はできない。
(小さな体躯もあって、ひと噛みが浅いだけに悲惨だろうな……)
最後まで死に切れず、意識のある状況で解体されていくのは御免被りたいと、気合を入れ直して腹の深い部分から声を出す。
「フィア、閃光弾を!!」
「ッ、光あれ!」
短い言葉で交わした移動中の取り決めに従い、侍祭の娘は発動直前の段階に留めていた術式を解き放ち、極光の球が顕現するや否やノータイムで炸裂させた。
「「ギィイイ――ッ!!」」
瞼のない昆虫系の魔物は抗うことを許されず、溢れる光の奔流に視野を奪われる。先刻と違って轟音は伴わないものの、十分な時間稼ぎになるはずだ。
ここが分水嶺と判断して、連続的に発生させた “魔力波の反射” を研ぎ澄ませた知覚で捉え、マナ制御で強化した頭脳にて定位の把握など行いながら、瞳を閉じた状態で加速する。
(見える、俺にも敵が見え… ッ!?)
脳裏で結ばれる影像に興奮した瞬間、真下の注意が欠けていたのか、木の根に躓き、頭から盛大に地面へ転がってしまう。
我が師サイアスの呵々大笑が響く中、視覚を取り戻した涙目のアルラウネは怒り心頭な様子で、露わな裸体に幾つも絡ませていた茨の鞭を振るった。
「いでむ えめる ぜれ!!」
「ぐぅ!!」
僅差で理解不能な叫びと共に見舞われた初撃を後方へ避け、追い縋る次撃は鞘走らせた鉄剣の一撃で断ち切って、返しの刃と連動させるように一歩目を踏み込む。
そこから神速の剣戟を以って、瞬時に再生して打ち寄せる大量の鞭を延々と薙ぎ払い、軽傷など負いつつも近くて遠い数歩分の距離を詰めていく。
「うるあ、うるあ、うるあぁああッ」
「これで、終わりだ」
刹那の銀閃が煌めき、驚愕の表情を浮かべた緑肌の少女に白刃が届いて、その華奢な身体を大きく斜めに切断した。
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