悪役皇子、ざまぁされたので反省する ~ 馬鹿は死ななきゃ治らないって… 一度、死んだからな、同じ轍(てつ)は踏まんよ ~

shiba

文字の大きさ
63 / 155

第63話 ~ とある倉庫にて① ~

しおりを挟む
丁度、王国の各地より救援物資が港湾都市ハザルに届き始めた頃、波止場はとばに近い倉庫街の一角にて少数の者達がつどい、多岐たきに及ぶ事柄のり合わせを行う運びとなる。

 会談に参加する一人、伝染病におかされた共和国都市の代表であり、評議会で重鎮を務める男は浮かべた微笑と裏腹にいきどおっていた。

(発症者を船倉に隔離した船内で一週間、連れて来られた検疫所での様子見を含めて二週間以上も待たされた挙句あげく、私の半分も生きてない若造らが交渉役とは)

 王国側に軽く見られている懸念けねんおさえて、微妙な位置で足を止めた行政局の官吏かんりに近寄り、握手を求めたものの嫌そうな態度で拒否されてしまう。

「次代の領主に接触を控えるよう厳命されています、ご理解ください」
「………… そうか、済まなかった」

 必死に自制して怒りを飲み込んだ直後、付き添いの従僕から隠し切れない不満が漏れていたのか、慌てて商人風の若者が杓子定規しゃくしじょうぎな相方の横に並んだ。

「こちらこそ申し訳ありません、イルファの評議員殿。彼は契約文書の草案と作成にけた優秀な役人ですが、世間知らずな部分もありますので御容赦ごようしゃを願います」

 慇懃いんぎんな仕草でことわりを入れた若者は救援物資の管理や、会計の一部を預かる中堅貿易商の長男だと名乗り、殺風景な庫内に用意されていた長机の席を勧める。

 その一方で自身は倉庫の奥へ向かうと、沖の船舶に積み入れて持ち帰らせる予定の物資をあさり、麻紙の束を見つけて運んできた。

 どんと机上に置いた紙束を紐解ひもとき、其々それぞれに疫病対策が記された書類を一枚ずつ手渡してから席に着けば、目ざとく隣の従僕と見比べていた評議員が唸り声を漏らす。

「これが貴領で造られた地場産の麻紙、寸分たがわない筆跡は活版のせるわざだな」

「えぇ、うちの弟が主計を担当する郊外の紙工場区で量産されたものですけど、一先ひとまずは印字された内容に着目してください、不敬の理由を説明致します」

 何の役にも立たない無益な誤解を払拭ふっしょくするため、若き商人は真摯しんし面持おももちで “病気の原因となるモノ” について、可及的速やかな知識の共有を試みる。

 異彩を放つウェルゼリアの碩学せきがく、領主嫡男たるジェオ・クライストの薫陶くんとうを直接受け、海都ルルイエの魔導書とやらの断章を叩き込まれた本人も信じ切れてないが、円滑に話を進める上で重要なことだ。

「手元の紙面にも書かれている通り、病気には原因があります。何も見つからないのは “目視できない” ほどに小さな微生物、若しくは物質ウィルスだからです」

 それらが呼吸や媒介者ベクターとの接触で身体へ入り込み、大きさは違えど寄生虫と同じく増殖することで、様々な弊害を生じさせて人を死に至らしめる。

 ゆえに病原体を持つ可能性がある者との触れ合いは避け、多少の距離を普段より保つのが肝要かんようと先方に伝えるも… やはりと言うべきか、疑わしげな眼差しが返された。


------------------------------------------------------------------------------------------------


ウィルスって細胞を持たないので、一般的に生物とは定義されてません。
増殖性の構造体という表現がよく用いられますけど、つまりは物質です。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

ガチャで破滅した男は異世界でもガチャをやめられないようです

一色孝太郎
ファンタジー
 前世でとあるソシャゲのガチャに全ツッパして人生が終わった記憶を持つ 13 歳の少年ディーノは、今世でもハズレギフト『ガチャ』を授かる。ガチャなんかもう引くもんか! そう決意するも結局はガチャの誘惑には勝てず……。  これはガチャの妖精と共に運を天に任せて成り上がりを目指す男の物語である。 ※作中のガチャは実際のガチャ同様の確率テーブルを作り、一発勝負でランダムに抽選をさせています。そのため、ガチャの結果によって物語の未来は変化します ※本作品は他サイト様でも同時掲載しております ※2020/12/26 タイトルを変更しました(旧題:ガチャに人生全ツッパ) ※2020/12/26 あらすじをシンプルにしました

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。 広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。 ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。 彼の名はレッド=カーマイン。 最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。 ※この作品は「小説になろう、カクヨム」にも掲載しています。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

転生先の説明書を見るとどうやら俺はモブキャラらしい

夢見望
ファンタジー
 レインは、前世で子供を助けるために車の前に飛び出し、そのまま死んでしまう。神様に転生しなくてはならないことを言われ、せめて転生先の世界の事を教えて欲しいと願うが何も説明を受けずに転生されてしまう。転生してから数年後に、神様から手紙が届いておりその中身には1冊の説明書が入っていた。

最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。

棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。

処理中です...