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第80話 ~とある専属司祭の視点④~
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都市郊外にグラシア王国の支援団が本営を構えてから三ヶ月、若き碩学の主導による疫病対策の効果が顕れてきた昨今、そこかしこで日常の光景は戻りつつある。
目に見えて感染者や死者の数が減るのに伴い、閑古鳥の泣いていた夕刻前の市場には活気が戻り、食材を買い求める人々の表情にも笑顔が垣間見えていた。
「やはりジェオ君は英雄、若しくは賢者の部類ですね」
「素直に惚れてると言いなさい、結構面倒な性格だよね、フィアってさ」
胡乱な琥珀色の瞳を向けてくる幼馴染に怯まず、自身が寄り添う君主の器量を讃えるも、やや倒錯的に見えるのか、護衛の冒険者らに苦笑されてしまう。
「まぁ、なんだ、教会から専属の司祭が派遣されるのは名誉なことだが」
「重いっすよ、そこまで懸想されていたら」
勝手知ったる港湾都市ハザルの組合に属する者達のため、私の胸中など見抜いていると言わんばかりの露骨な態度、これは頂けませんので悔い改めさせねば。
少しだけ憤りながらも赤く染まった顔を背け、軽く咳払いをひとつ。
「んぅ… 市場の視察は程々にして、商業組合に伺いましょう」
「ふふっ、仕入れの要望を聞いて上げないと、お店屋さんが困るよね~」
軽妙な仕草でおどけるリィナはさておき、経済の正常化を阻害し兼ねない市井への無償支援は控える段階に来ており、受注品を原価で売り捌くという慈善事業の時期も過ぎたように思える。
まだ諸国の封鎖が解除されてない以上、外交を肩代わりする支援団に主権がある現状など踏まえて、適切な利益を卸値に乗せると伝えたら……
老獪な商人らの猛反発に遭い、 延々と揉めているうちに日が暮れた。
「なんで貿易商のセルジさんが居ない時にお金の話するかなぁ、もう!」
「うぐっ、面目ありません、判断を誤りました」
「まぁ、進展はあったし、酒と肴でも買って帰りましょうや」
「良い気晴らしになりますよ、お二人とも」
不機嫌なリィナを気遣い、先日飲んだ美味い銘柄を勧める冒険者の一人に酒蔵までの案内を任せて、数分ほど入り組んだ路地を進む。
徐々に人の気配が無くなってきたことで、幾ばくかの疑念が生じた刹那、振り向きざまの斬撃が私の喉元に迫った。
それを無刃の聖槍で弾き、鋭く眇めた視線を投げる。
「…… なんの真似でしょう?」
「やっぱ無理か、凄げぇな、二つ名持ちは」
こちらに答えることなく、連続的なバックステップで間者と思しき相手が飛び退り、ぐにゃりと折れ曲がった長剣を忌々しげに捨てれば、狭所の前後を塞ぐように十名ほどの無頼漢が現れる始末。
「っ、少々厳しいようだな」
「不甲斐なくてすみませんが、頼らせて貰います」
数的不利の状況に陥った護衛役の三人が緊張感を漂わせる中、隣のリイナを一瞥すると気負わず、自然体のまま踵を返して無造作に動き出す。
瞬時に視界から掻き消えた幼馴染に遅れて、自身も最初の一歩を詰めた。
目に見えて感染者や死者の数が減るのに伴い、閑古鳥の泣いていた夕刻前の市場には活気が戻り、食材を買い求める人々の表情にも笑顔が垣間見えていた。
「やはりジェオ君は英雄、若しくは賢者の部類ですね」
「素直に惚れてると言いなさい、結構面倒な性格だよね、フィアってさ」
胡乱な琥珀色の瞳を向けてくる幼馴染に怯まず、自身が寄り添う君主の器量を讃えるも、やや倒錯的に見えるのか、護衛の冒険者らに苦笑されてしまう。
「まぁ、なんだ、教会から専属の司祭が派遣されるのは名誉なことだが」
「重いっすよ、そこまで懸想されていたら」
勝手知ったる港湾都市ハザルの組合に属する者達のため、私の胸中など見抜いていると言わんばかりの露骨な態度、これは頂けませんので悔い改めさせねば。
少しだけ憤りながらも赤く染まった顔を背け、軽く咳払いをひとつ。
「んぅ… 市場の視察は程々にして、商業組合に伺いましょう」
「ふふっ、仕入れの要望を聞いて上げないと、お店屋さんが困るよね~」
軽妙な仕草でおどけるリィナはさておき、経済の正常化を阻害し兼ねない市井への無償支援は控える段階に来ており、受注品を原価で売り捌くという慈善事業の時期も過ぎたように思える。
まだ諸国の封鎖が解除されてない以上、外交を肩代わりする支援団に主権がある現状など踏まえて、適切な利益を卸値に乗せると伝えたら……
老獪な商人らの猛反発に遭い、 延々と揉めているうちに日が暮れた。
「なんで貿易商のセルジさんが居ない時にお金の話するかなぁ、もう!」
「うぐっ、面目ありません、判断を誤りました」
「まぁ、進展はあったし、酒と肴でも買って帰りましょうや」
「良い気晴らしになりますよ、お二人とも」
不機嫌なリィナを気遣い、先日飲んだ美味い銘柄を勧める冒険者の一人に酒蔵までの案内を任せて、数分ほど入り組んだ路地を進む。
徐々に人の気配が無くなってきたことで、幾ばくかの疑念が生じた刹那、振り向きざまの斬撃が私の喉元に迫った。
それを無刃の聖槍で弾き、鋭く眇めた視線を投げる。
「…… なんの真似でしょう?」
「やっぱ無理か、凄げぇな、二つ名持ちは」
こちらに答えることなく、連続的なバックステップで間者と思しき相手が飛び退り、ぐにゃりと折れ曲がった長剣を忌々しげに捨てれば、狭所の前後を塞ぐように十名ほどの無頼漢が現れる始末。
「っ、少々厳しいようだな」
「不甲斐なくてすみませんが、頼らせて貰います」
数的不利の状況に陥った護衛役の三人が緊張感を漂わせる中、隣のリイナを一瞥すると気負わず、自然体のまま踵を返して無造作に動き出す。
瞬時に視界から掻き消えた幼馴染に遅れて、自身も最初の一歩を詰めた。
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