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第81話 ~とある専属司祭の視点⑤~
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いつでも即応可能な間合いを取り、突発的な事態に構えていた襲撃者らの虚を突き、地を這う獣のような速度で吶喊しながら、斜めの槍撃を放つ。
手前で凶刃を携える二人のうち、片方の鳩尾へ刃の無い穂先が勢いよく刺さって、内臓の損傷に伴う吐血を引き起こさせた。
「がはッ!?」
唾液交じりの血飛沫が付着するよりも早く、突き出した得物を引き戻すや否や、狙いを変えて残る一方の腹部も容赦なく穿ち、同じく血反吐を零させる。
(っ、致命傷を負わせるのは不本意ですけど、仕方ありません)
積極的に殺める意志はなくても、下手な手心で害意ある者達を御し切れず、仲間を死なせては本末転倒なため、仕留めるつもりで聖槍という名の鈍器を扱うしかない。
そう割り切って横殴りに振るい、斃れた敵前衛の二人を避けつつも、果敢に斬り込んできた後衛達の機先を制す。
体内のマナを制御下に置いて、全身の膂力を極限まで高めていることもあり、正面と左右から迫る鉄剣の斬撃を纏めて弾けば、その余波で体勢を崩した連中の表情が驚愕に歪んだ。
「なんだと!!」「うぉおッ!?」
「化物かよ、こいつ」
失礼な言葉を投げた右端の襲撃者が私の脇腹目掛け、逆袈裟の一撃を繰り出したのに先んじて、片掌に収まるキューブ状の魔法障壁を銀閃の軌道上へ浮遊させる。
弛まぬ鍛錬の末、大気中に含まれる近場のマナに干渉して、すぐさま生成できるようになった半透明の四面体は微塵も揺らがず、あっさりと鋭い剣戟を受け止めた。
「ぐぅ… くそがっ!」
振り抜くことができないため、中途半端な状態で固まった標的に向け、上段に構えた聖槍を斜に下ろす。
その際に後ろ足を引かせて、深めに腰を落とす動きにより、打撃の威力を増加させるのも忘れない。
「ぐぎッ!!」
奇声を上げた傭兵風の男は鎖骨や胸骨を砕かれて吹き飛び、暗い路肩に転がった。
魔法の類を用いた身体強化の見識がないのか、さらに困惑を深めた真中と左端の襲撃者も破れかぶれの次撃など放ってきたが、ふわりと浮かんだ無数の小さな四面体に阻まれて、私まで届くことはない。
「炸裂しないだけ、ジェオ君の爆発反応障壁よりも良心的なのです」
独りごちる傍らに数歩退き、自身が生じさせた障害物の合間を縫って、五月雨式に喰らわせた八連撃で相手方の四肢骨を砕く。
踏ん張りが利かずに頽れる間際、魔法の解除を挟んで渾身の打撃も叩き込み、念の為に剣戟の間合いから大きく弾き出した。
「ぅあ…っうぅ、畜生」
「ッ、手足が動かねぇ」
「さて……」
喫緊の脅威を退けてすぐ、某嫡男の直伝となる魔力波を同心円状に広げ、定位反射を拾うことで可視範囲外の伏兵は存在しないのと、リィナが後方の無頼漢らを排除し終えたのも確認する。
あっけに取られていた護衛の冒険者らが我に返り、こちらを庇うように二人ほど前へ出たところで、自分だけ安全圏にいる裏切り者の間者を睨みつけた。
手前で凶刃を携える二人のうち、片方の鳩尾へ刃の無い穂先が勢いよく刺さって、内臓の損傷に伴う吐血を引き起こさせた。
「がはッ!?」
唾液交じりの血飛沫が付着するよりも早く、突き出した得物を引き戻すや否や、狙いを変えて残る一方の腹部も容赦なく穿ち、同じく血反吐を零させる。
(っ、致命傷を負わせるのは不本意ですけど、仕方ありません)
積極的に殺める意志はなくても、下手な手心で害意ある者達を御し切れず、仲間を死なせては本末転倒なため、仕留めるつもりで聖槍という名の鈍器を扱うしかない。
そう割り切って横殴りに振るい、斃れた敵前衛の二人を避けつつも、果敢に斬り込んできた後衛達の機先を制す。
体内のマナを制御下に置いて、全身の膂力を極限まで高めていることもあり、正面と左右から迫る鉄剣の斬撃を纏めて弾けば、その余波で体勢を崩した連中の表情が驚愕に歪んだ。
「なんだと!!」「うぉおッ!?」
「化物かよ、こいつ」
失礼な言葉を投げた右端の襲撃者が私の脇腹目掛け、逆袈裟の一撃を繰り出したのに先んじて、片掌に収まるキューブ状の魔法障壁を銀閃の軌道上へ浮遊させる。
弛まぬ鍛錬の末、大気中に含まれる近場のマナに干渉して、すぐさま生成できるようになった半透明の四面体は微塵も揺らがず、あっさりと鋭い剣戟を受け止めた。
「ぐぅ… くそがっ!」
振り抜くことができないため、中途半端な状態で固まった標的に向け、上段に構えた聖槍を斜に下ろす。
その際に後ろ足を引かせて、深めに腰を落とす動きにより、打撃の威力を増加させるのも忘れない。
「ぐぎッ!!」
奇声を上げた傭兵風の男は鎖骨や胸骨を砕かれて吹き飛び、暗い路肩に転がった。
魔法の類を用いた身体強化の見識がないのか、さらに困惑を深めた真中と左端の襲撃者も破れかぶれの次撃など放ってきたが、ふわりと浮かんだ無数の小さな四面体に阻まれて、私まで届くことはない。
「炸裂しないだけ、ジェオ君の爆発反応障壁よりも良心的なのです」
独りごちる傍らに数歩退き、自身が生じさせた障害物の合間を縫って、五月雨式に喰らわせた八連撃で相手方の四肢骨を砕く。
踏ん張りが利かずに頽れる間際、魔法の解除を挟んで渾身の打撃も叩き込み、念の為に剣戟の間合いから大きく弾き出した。
「ぅあ…っうぅ、畜生」
「ッ、手足が動かねぇ」
「さて……」
喫緊の脅威を退けてすぐ、某嫡男の直伝となる魔力波を同心円状に広げ、定位反射を拾うことで可視範囲外の伏兵は存在しないのと、リィナが後方の無頼漢らを排除し終えたのも確認する。
あっけに取られていた護衛の冒険者らが我に返り、こちらを庇うように二人ほど前へ出たところで、自分だけ安全圏にいる裏切り者の間者を睨みつけた。
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