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ガキ大将と幼なじみ
怪異(前編)
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「ごめんください、かよちゃんはいますか?」
「…るすかな?」
「はーい…あっ、こうちゃん」
「ゆき姉ちゃんこんにちは、かよはいますか?」
「あら、佳代子だったらもうお友達と遊びに行ったわよ」
「え? もう?…」
いつもと同じように朝食を済ませ、着替えてから掃除等の家の手伝いの後、隣の家の玄関へ行き遊ぶために幼馴染に声を掛ける。 だが、今日は少し様子が違い、佳代子は既に他の友達と遊びに出かけてしまったようで、代りに部屋から出て来たのは佳代子の二歳年上の姉、由紀子だった。
「いつもの空き地であそんでんのかな?」
遠くへはいかないと言っていたようなので、恐らくは近所の空き地で遊んでいるのだろうと踏んだ浩平は、空き地を目指す。 一重に空き地と言ってもどこそこにあるので、いくつか見て回らねばならないので厄介だが、急ぐ必要がある、何故なら…。
(あいつら、またかよをいじめたらぜったいにゆるさないぞ)
遊ぶ分には良いのだが、一緒に居てやらないと直ぐにその容姿をからかい出すので油断も隙も無い。 だが、近所には同世代の女の子が殆どおらず、居たとしてもその恰好からして混ざって遊びにくかろうというのは、小さい子供でも何となく察しがつく。
(かよも、ゆきねえちゃんみたいにスカートがはければ違うんだけどな…)
髪こそ短いもののたまにスカートを履いているので、佳代子の姉は女児然として見える。 同じような恰好が出来れば、皆にいじめられる事も無いのではないか…。
そんな事を考えていると、畑の方まで出てきてしまった。 これ以上進むと隣町に入ってしまう上に遊べるような空き地も無い。 遠くへ来過ぎてしまったと思い引き返そうとすると、少し離れたあぜ道に同い年の男子が三人いるのが視界に入る。
「あいつらなにやってんだ?」
遠目に見る限りでは何するわけでも無く、立ち話をしているように見えるとして、何か違和感を感じるがそれは直ぐに疑問に変わる。
(かよがいない…?)
「おーい、おまえたち」
幼馴染が居ない理由をいち早く確かめる為に駆けて少年たちの元へ行くのだが、こちらに気付いた三人の表情は驚きに変わる。 そして、あの顔は何か知られたく無い事を隠している時の表情だ…もしかしたらかよが居ない事と関係しているのかもしれない。 そんな予感が少年にはありそしてーー
「こっ、こうちゃん!!」
「なにおどろいているんだよ! またかよに悪さしたのか? かよはどこだ!!」
こちらの問いに対して三人が三人共顔を見つめ合い、中々答えようとしない…いらっ、としてしまいまた投げ飛ばしてやろうかと思った時、内一人のタケなる少年がようやく口を開く。
「こうちゃん! たいへんなんだ! かよが…」
「たいへん? いったいどうしたんだ」
「ハァ、ハァ…」
夏の暑い日差しを受け、少年は汗だくになりながらもひたすらに走る。
(あいつら、こんどというこんどはぜったいに許さないぞ!! …でも、まずはかよを見つけるのが先だ)
あの少年達をどんなひどい目に合わせようかと少年は憤る。 それと言うのも事の発端は例のからかいであり、佳代子に対して、男っぽいのに弱虫で臆病だと言い出したのだ。
反発する少女に対して、ならば弱虫では無い証拠を見せろと詰め寄り、ならばどのようにして証明するかの話になった。 そして、少女はとある場所に向かう事になったのだが…。
「ハァ、ハァ…フゥ……ここだ」
三平山ーー
山とは言いつつさほど高くは無く、子供の足であっても山頂まで辿り着く事は容易だが、そこが問題なのでは無い。 この山はかつての空襲により木々や山頂の神社も焼け落ちてしまい、危険なので立ち入り禁止になっている。
年が上の子供達がここに立ち入ることで度胸試しを行っているのは、小さい子らの間でも有名ではあるのだが、勿論大人にバレてしまえば大目玉を喰らう事は避けられない…。
(あいつら、バレたらかよがおこられると知っててやったな!)
少年達の悪質な煽りにまた憤ってしまうが、今はそんな事を気にしている場合では無く、少女を探すのが先決だ。 碌に舗装もされていない山道を、道に迫り出している雑草に注意しながら歩くのは、葉が鋭利な草で足を切ってしまわぬようにだ。
(どこだ? かよ…)
初めて立ち入るが、雑草が生い茂っているものの、木々は焼けているので視界は悪くは無い。 だが、山頂部分にはかろうじて木々が生い茂っている部分があるのは、たまに見て把握しているとして、中腹まで歩いて分かれ道も無い。 どうやら山頂まで一本道のようなのだが、道中で少女を見つける事は無く、上まで辿り着いてしまった。
(かよはいなかった…やしろの方か?)
山頂の神社は子供達の間で朽ちた社、と呼ばれており本来の名前を知っている子は居ない。 大人に聞けば分かるのだろうが、どうやら難しい字を書くようで皆言い易い方で呼んでいるのだ。
程なくして焼け落ちてしまった神社に辿り着くのだが、ここにも少女の姿は無い…以前は立派な建物だったと聞いた事があったが、今は全てが炭になっており見る影も無くなっている。 地域の大人達、特に自身の父がその再建に腐心している事は何となく知っているのだが、まずは人の生活が優先だ。
もし父の代で再建が叶わぬなら、自身が将来立派になって建て直そうと考えているのだが、今は何故皆が神社の再建に拘るのかは完全に理解していない、まだまだ幼い子供なのだ。
(残るはあそこか…)
唯一木々が生い茂るあの一角…少女はあそこにいるのかもしれないのだが…。
「…るすかな?」
「はーい…あっ、こうちゃん」
「ゆき姉ちゃんこんにちは、かよはいますか?」
「あら、佳代子だったらもうお友達と遊びに行ったわよ」
「え? もう?…」
いつもと同じように朝食を済ませ、着替えてから掃除等の家の手伝いの後、隣の家の玄関へ行き遊ぶために幼馴染に声を掛ける。 だが、今日は少し様子が違い、佳代子は既に他の友達と遊びに出かけてしまったようで、代りに部屋から出て来たのは佳代子の二歳年上の姉、由紀子だった。
「いつもの空き地であそんでんのかな?」
遠くへはいかないと言っていたようなので、恐らくは近所の空き地で遊んでいるのだろうと踏んだ浩平は、空き地を目指す。 一重に空き地と言ってもどこそこにあるので、いくつか見て回らねばならないので厄介だが、急ぐ必要がある、何故なら…。
(あいつら、またかよをいじめたらぜったいにゆるさないぞ)
遊ぶ分には良いのだが、一緒に居てやらないと直ぐにその容姿をからかい出すので油断も隙も無い。 だが、近所には同世代の女の子が殆どおらず、居たとしてもその恰好からして混ざって遊びにくかろうというのは、小さい子供でも何となく察しがつく。
(かよも、ゆきねえちゃんみたいにスカートがはければ違うんだけどな…)
髪こそ短いもののたまにスカートを履いているので、佳代子の姉は女児然として見える。 同じような恰好が出来れば、皆にいじめられる事も無いのではないか…。
そんな事を考えていると、畑の方まで出てきてしまった。 これ以上進むと隣町に入ってしまう上に遊べるような空き地も無い。 遠くへ来過ぎてしまったと思い引き返そうとすると、少し離れたあぜ道に同い年の男子が三人いるのが視界に入る。
「あいつらなにやってんだ?」
遠目に見る限りでは何するわけでも無く、立ち話をしているように見えるとして、何か違和感を感じるがそれは直ぐに疑問に変わる。
(かよがいない…?)
「おーい、おまえたち」
幼馴染が居ない理由をいち早く確かめる為に駆けて少年たちの元へ行くのだが、こちらに気付いた三人の表情は驚きに変わる。 そして、あの顔は何か知られたく無い事を隠している時の表情だ…もしかしたらかよが居ない事と関係しているのかもしれない。 そんな予感が少年にはありそしてーー
「こっ、こうちゃん!!」
「なにおどろいているんだよ! またかよに悪さしたのか? かよはどこだ!!」
こちらの問いに対して三人が三人共顔を見つめ合い、中々答えようとしない…いらっ、としてしまいまた投げ飛ばしてやろうかと思った時、内一人のタケなる少年がようやく口を開く。
「こうちゃん! たいへんなんだ! かよが…」
「たいへん? いったいどうしたんだ」
「ハァ、ハァ…」
夏の暑い日差しを受け、少年は汗だくになりながらもひたすらに走る。
(あいつら、こんどというこんどはぜったいに許さないぞ!! …でも、まずはかよを見つけるのが先だ)
あの少年達をどんなひどい目に合わせようかと少年は憤る。 それと言うのも事の発端は例のからかいであり、佳代子に対して、男っぽいのに弱虫で臆病だと言い出したのだ。
反発する少女に対して、ならば弱虫では無い証拠を見せろと詰め寄り、ならばどのようにして証明するかの話になった。 そして、少女はとある場所に向かう事になったのだが…。
「ハァ、ハァ…フゥ……ここだ」
三平山ーー
山とは言いつつさほど高くは無く、子供の足であっても山頂まで辿り着く事は容易だが、そこが問題なのでは無い。 この山はかつての空襲により木々や山頂の神社も焼け落ちてしまい、危険なので立ち入り禁止になっている。
年が上の子供達がここに立ち入ることで度胸試しを行っているのは、小さい子らの間でも有名ではあるのだが、勿論大人にバレてしまえば大目玉を喰らう事は避けられない…。
(あいつら、バレたらかよがおこられると知っててやったな!)
少年達の悪質な煽りにまた憤ってしまうが、今はそんな事を気にしている場合では無く、少女を探すのが先決だ。 碌に舗装もされていない山道を、道に迫り出している雑草に注意しながら歩くのは、葉が鋭利な草で足を切ってしまわぬようにだ。
(どこだ? かよ…)
初めて立ち入るが、雑草が生い茂っているものの、木々は焼けているので視界は悪くは無い。 だが、山頂部分にはかろうじて木々が生い茂っている部分があるのは、たまに見て把握しているとして、中腹まで歩いて分かれ道も無い。 どうやら山頂まで一本道のようなのだが、道中で少女を見つける事は無く、上まで辿り着いてしまった。
(かよはいなかった…やしろの方か?)
山頂の神社は子供達の間で朽ちた社、と呼ばれており本来の名前を知っている子は居ない。 大人に聞けば分かるのだろうが、どうやら難しい字を書くようで皆言い易い方で呼んでいるのだ。
程なくして焼け落ちてしまった神社に辿り着くのだが、ここにも少女の姿は無い…以前は立派な建物だったと聞いた事があったが、今は全てが炭になっており見る影も無くなっている。 地域の大人達、特に自身の父がその再建に腐心している事は何となく知っているのだが、まずは人の生活が優先だ。
もし父の代で再建が叶わぬなら、自身が将来立派になって建て直そうと考えているのだが、今は何故皆が神社の再建に拘るのかは完全に理解していない、まだまだ幼い子供なのだ。
(残るはあそこか…)
唯一木々が生い茂るあの一角…少女はあそこにいるのかもしれないのだが…。
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