《戦》いの《鳥》と《少女》たちは二つの世界を舞う

たくみ

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07. 魔法使いの思惑

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   「しかし……俺に異世界の王族の血が流れているなんてなぁ」

    父は自分の手のひらを見つめてしみじみ呟く。

    「健康診断では問題なかったわよねぇ」

    「いや、まぁ、ばあちゃんは普通の人間で宇宙人とかじゃないからそこは大丈夫じゃないかな?    子供だって生んでる訳だし……」

    母の言っている事はやや的外れな感じがするが仕方がないとも思う。
    自分達の家族に異世界の人がいる等と、こんな話を誰が信じられるだろうか。
    だが、信じるに足る理由がある。
    それこそが、これから話す若返りについての事だ。

    「母さん、改めて聞くけど若返りについても思い当たる節があるんだね?」

    「ええ、ごめんなさい。    全てを話す事になるから知らないなんて嘘をついてしまって」

    「いや、気にしないで。    説明してもらえるかな?」

    「私の若返りは……。    魔法によるものよ」

    「凄いな!    ひいばあの世界では魔法で若返る事が出来るんだ」

    魔法による若返りとは、それこそ人類の究極の夢である不老不死が可能だという事だろうか。
    それともひいばあだけが特別なのか、話にはまだ続きが有るので皆聞き入る。

    「いいえ、正確には寿命を移す魔法なの。 むしろ魔法と言うよりは、呪術の類とも言うべきものね」

    寿命を移すとはどういう事か、ひいばあは詳細を説明する。
    元来この魔法は禁断、禁忌の魔法として永らく封印されていたものの一つだという。
    厄災に対抗する手段としてやむ無く封印を解くことを国王が許可し、ひいばあを逃したネフィアという人が責任者となって解析を進めていた。
 結果、封印されていた魔法の殆どが寿命操作に関わるもので、厄災への対抗手段とは成り得なかったのだが、この寿命を移す魔法に関しては何を持って寿命とするか議論になっていたという。

    「私に術をかけたのはネフィアで間違いないわ。   あの時、転移の間に導くまでの間、どのタイミングかは分からないけど私に自分の寿命を託したの」

    「ただあの時ネフィアは重傷を負って治療も出来ず、助かる見込みはなかった。    移せる寿命というのは怪我や病気が無いと仮定したものかもしれないわね」

 だとしたらひいばあは正に人一人分の寿命を得た事になる。
 だが、衝撃的な内容はこれだけではない。

 「なぜこのタイミングで若返ったのかな? 何かきっかけになることがあったとか?」

 「術が発動する条件は、対象者の死よ……」

 「そんな! それじゃ、あの時ひいばあは……」

 あの日、私が起こしに行った時ひいばあは誰にも知られる事なく、ひっそりと息を引き取っていたのだ。
 だが、その直後黄泉の国から引き戻された、かつての若さを取り戻して。
 ひいばあは文字通りこれから第二の人生を歩むのだが、それは息子であるじぃじや孫である父、どうにかするとひ孫である私たちの最期を看取る事になる。

 「なんか……あんまり良いイメージないね」

 「古くは刑罰に使われていたのではと言われているわ。 受刑者の家族の寿命を使って罰を与え続けるの」

 ひいばあの言葉に皆がしかめっ面をする。

 「時の権力者が放っておかないだろうな」

 父がぼそっと呟いた。
 永遠の命を得るのは権力者の夢であるのはどの世界でも変わりないのかもしれないだろう、民の寿命を吸い上げるようにして君臨するなどとんでも無いことだ。
 この魔法が禁断とされてきたのもうなずけるが、どうしても分からない事がある。
 ネフィアという人は何故寿命を託したのか。
 普通に考えれば、そんな事をする必要は無いのだが、こればかりはひいばあも分からず、今は亡き魔法使いのみぞ知るといった所だ。

 唯一はっきりと言える事は、ひいばあは若返りかつての力を取り戻し、厄災を退ける事が出来た。

 「ねぇ、ひいばあ。 あの鳥は何なの?」

 「あれは、こちらの言葉で言えば戦鳥せんちょうと言うべきかしら。 そしてあの戦鳥の名は、黒き死の翼よ」

 「何だか不吉な名前だね」

 「そうね。 でも、王家に伝わる人知を超えた神の力とされているもので、女子が生まれた際にはこの力を受け継ぐよう定められていたの」

 「女の人だけなの?」

 「戦鳥と契約出来るのは女性だけよ。 最もその資質も必要なの。 私の前に戦鳥と契約したのはひいおばあ様だったわ」

 (ひいばあのひいばあと言う事は私のひいひいひい……。 うん、もうご先祖様だよね)

 以上がひいばあの知る全ての事で家族の反応は様々だが、息子であるじぃじはこの事をどう思っているのだろうか。

 「まさか、母さんにこんな秘密があったなんてなぁ」

 「ごめんなさい。 今まで黙っていて、息子であるあなたには何度となく本当の事を伝えた方が良いと思っていたのだけれど、その度に周平が必要無いと……」

 「いや、いいんだよ。 それで良かったと思う。 ありがとう、本当の事を話してくれて」

 じぃじは穏やかな顔をしている。
 言葉の通り、黙っていたことに対する恨みなんてものは全く無い。
 そこには、深い親子の絆がある。
 家族の誰もがそれを感じていた。
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