不要な見張りは何を見る?

白慨 揶揄

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念話と世界

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「キアカ……!」

 キアカは全身を縛られ、【異能】が使えないほど全身を痛めつけられていた。狩人とはいえまだ子供。
 誰か判別出来ないほど痛めつけられたキアカの下は涙と恐怖で濡れていた。力が入らなくなるほど暴力を振るわれたのか。
 キアカを攫った2人を俺は睨む。

「イタリカ……!! やっぱり、君が……」
「あれー。その顔、なんか気付いちゃったかな? 無能者だと思ってたけどやるじゃん」

 イタリカは無邪気に悪意を浮かべていた。
 キアカ達が居た場所は川の畔。
 俺がオルキスに襲われた場所だった。

「あれれ、しかも王国最強の戦士まで連れてきちゃって。君、何者なの?」
「ソウちゃんはソウちゃん。幼馴染だよ!」
「あー。そう言えばそうだっけね。王国最強の戦士は【枯挟街】出身の落ちこぼれ。隣国の人体改造で最強になったんだっけ?」
「そこまで知ってるってことは――君は裏に精通してる人間みたいだな」

 ローマンが声を落として言う。
 人体改造?
 そこまでして、ローマンは強さを求めたのか?

「ひょっとして最近、その真似事をするために狩人を攫ってる組織があるって聞いたけど、君たちのことかな?」

 キアカを攫ったのはイタリカだけでない。
 ローマンに引けを取らない巨体の男が背後に立っていた。その頭には小さな羽の付いた帽子が。
 あれは最初に出会った時に一緒にいた男の帽子だった。
 やはり、彼も犠牲に……。

「まさか。私たちは只の人身売買屋だよ。狩人を行方不明に見立てて売りさばく、効率重視の金儲け集団だよ」
「そうかい。だとしても舐められたモノだよ。王国最強の戦士と知りながら、そこまでベラベラ話すとはね。そこにいる用心棒が余程強いのかな?」

 そう言った刹那。
 立っていた用心棒の背後にいつの間に移動したのか、ローマンが首筋を軽く叩くと同時に崩れ落ちた。

「さあ、残るは美しいお嬢さんだ。どうする?」

 イタリカも倒そうとするローマンを僕は止めた。

「ちょっと、待ってローマン。もう少しだけ話したいんだ」
「分かった」

 僕はイタリカに向かって言う。
 これこそ――僕が聞きたい、問いたい質問だ。

「なんで――オルキスも殺したの?」

 僕の問いに答えを隠す気もないのだろうか。
 イタリカは呆気からんと答える。

「あ、それも気付いたんだ」
「うん。オルキスも同じ組織の人間だったんでしょ? それで、あの日、ここで僕が襲われたのを見て殺すことを考えた」
「正解~!! ただ殺したんじゃ私たちが疑われると思って事件にしてみたんだけど、まさか、ソウくんに暴かれるとは。無能な兵士は騙せたのにな」

 自分の罪を認めると同時にイタリカはニヤリと笑う。
 仲間だったオルキスは、本当に僕たちとパーティーを組むことを気に入ってしまった。だから、本来ならば人攫いの標的であるキアカを狙うのを辞めた。
 結果、オルキスは仲間を裏切り――殺された。

 真実に辿り着いた僕にイタリカは言う。

「けど、それなら正面から挑むのは無謀だったんじゃないかな? どうやって殺したのか。そこまで辿り付いたんじゃないの?」
「……っ!」

 イタリカに対する答えを僕なりに用意してきていた。
 オルキス殺しの男とあの兵士。
 身体が勝手に動いた。 
 そのことから僕は【異能】がもう一人いると踏んでいた。人を操る能力を持った人間がいるのだと考えていた。
 そして、予想通り男がいて、それはもうローマンが倒した。
 だが――。
 僕の身体が勝手に動き、キアカのクビに手を掛ける。

「ごめーん。私、【異能】に付いて嘘ついてたんだ。私の【異能】はポルダーガイストじゃないの。本当はテレキネシスなのよ」

 見えない力で物質を物理的に操る力。
 物だけでなく人の身体すらもそ動かせるのか!!

「ほら、動かないでね、最強の戦士さん! と言っても、もう、あなたも殺せるんだけど」

 ローマンがイタリカの仲間を瞬時に倒したように、彼もまた唐突に倒れた。
 王国最強の戦士の身体が呆気なく横たわる。

「なにをした……」
「ふふ。簡単なこと。身体じゃなくて心臓を握って動きを止めただけよ」
「化け物か……」
「ふふふ。人体改造の肉体なら高く売れるわね――」

 これから入る大金に舌なめずりをするイタリカ。
 その一瞬の隙を王国最強の戦士が見逃す筈もなかった。

「お嬢さん。私を倒したかったら心臓を止めるのではなく、握りつぶすべきだったな。それでも、私は死なないのだけど」

 背後の声に咄嗟に【異能】を発動するが、ローマンの拳の方が速かった。
 単純な肉体の暴力によってイタリカは吹き飛び、川の上流に向けて水切りのように跳ねて沈んでいった。
 川に流されるイタリカを引き上げてローマンが笑う。

「この力、凄いでしょ?」





 イタリカが掴まってから1か月が経過した。
 僕はローマンに王国兵団に入らないかと誘われた。【異能】が無くても結果を残している仲間は沢山いると。「今回の事件の真相に辿り着いたのはソウちゃんだけだよ」と、推薦すると言ってくれたが丁重に断らせて貰った。

 僕はオルキスのいう通り何もない人間だ。
 だから、ここで不要な見張りをしているのが相応しい。
 その変わりといってはアレなのだが、キアカがローマン専属の念話担当として王国兵団に入団することになった。
 なんでも、【竜の森】から僕がいた場所にまで念話が届くのは、実はかなり凄いことらしい。
 能力はあっても、キアカは喋るのが好きだから苦労するぞ。
 ローマンと気は合うだろうけど。

「今ならいいかな」

 僕は隣で眠るベルの前に花瓶を置いた。
 彼女にお礼をしなければとローマンに相談した結果、花を送ることにした。緑があると落ち着くしベルには丁度いいのではないかと、僕も納得だった。
 花屋に行った僕は一目でこの花が気に入った。花瓶の中の花はどこか人間のような形がしていて面白かったからだ。
 目を覚ました時のベルの反応が楽しみだと――悪戯心が芽吹いていた。
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