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出会い斡旋 反組織
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「あれから、無事に学校生活は送れてる? 前ほど学生同士の争いは無い気がするけど」
強盗、盗みが日常であるように、高校生たちの喧嘩もまた日常的に起こっていた。しかし、統合してからここ数か月はその姿を目にする回数は減っていた。「統合することで荒れる。これからもっと大変になるぜ?」とキアカが言っていたけど、そんなことはなかった。
予想が外れたから、今度、あの少年に甘い物でもご馳走になるとしよう。
カノンちゃんが争いが沈静化している理由を教えてくれた。
「はい。なんでも、兄たちの喧嘩が下らなく、激しすぎるせいで、他の生徒達は毒気が抜かれていると言うか……」
「あー。彼ら、喧嘩しているようでどこか遊んでるようだもんね」
「はい。しかも、最近はもっぱら、兄が他の二人にちょっかいを掛けているようで……。姉妹が付き合ってるのが納得できてないらしいんです」
「まあ、複雑は複雑かも知れないね」
「ええ。喧嘩だけなら良いんですけど、兄が何やら最近おかしいんです」
「おかしい?」
「はい。兄はどうやら今週、一度も学校に来てないみたいなんです」
双子の姉はそっくりな顔を曇らせる。
「そのことを兄に聞いてみても、「お前には関係ない。テツと仲良くしてろ」の一点張りでして。それで、昨日、心配になって付けて行ったらここに――」
カノンはそう言ってポケットから一枚の紙を取り出す。そこには現実と見まごうばかりの美麗なイラストが映し出されていた。
こんな物質を僕は初めて見た。
「これは?」
「あ、これは、その……。実は、私の【異能】でして」
「ああ、なるほど。【念写】ね」
話には聞いたことが合ったけど、実物を見るのは初めてだった。ここまで現実に近い形で紙に映し出せるのか。
【念写】とは本人が見た映像を記憶から紙に映し出す【異能】の能力。
「それにしても、姉弟揃って【異能】持ってるなんて将来有望だね」
「……そんなことないですよ。こんなの、何の役にも立ちませんから」
「そんなことないと思うけどな……【念写】使ってる人も王国には沢山いると思うよ?」
「……全然。私は、こんなのを描きたい訳じゃ――って、そこは別にいいんです。それより、これ、写ってる場面を見てください」
今、話したいのは【異能】に付いてではなく、紙に映し出された場面だと強く指さす。
映し出されていたのは、どこかの建物に入るエガミの姿だった。
「これが、どうしたの?」
「どうしたのって、ここ、この場所知らないんですか!?」
凄い驚かれた。今後、僕がカノンちゃんを思い出すことがあるとしたら、この驚いてる顔だろうな。驚かせてばかりで、少し申し訳なくなってきた。
心の中で謝りながら、改めて【念写】に視線を戻す。
よく見ても普通の建物。怪しい所は何もないように思えるけど。何がおかしいのかと悩む僕の隣に、いつの間に起きたのだろうか。
オキド・ベルが覗き込んでいた。
「ここは【出会い斡旋所】ね。全く、こんな低俗な場所を利用する人間がどんな顔をしているのか見てみたいと、常日頃から思っていたのだけれど、予想を裏切らない間抜けな顔してるわね」
「……いきなり、起きて、人の兄を間抜けって、なんなんですか、この人?」
「僕の同僚だよ。同じく見張り人」
「……見張り人?」
ベルの職業が見張り人ということに、怪訝そうな顔をする。
それもそうだ。
不要な見張り人と呼ばれるくらい社会に貢献していない。むしろ、貢献している人々の努力を貪っているのだ。
貢《みつぎ》を貪《むさぼ》る。
文字の形こそ似ていても、その意味は正反対だった。
「そうよ? 悪い?」
「わ、悪くはないですけど……」
カノンちゃんはそう言いながら、罰が悪そうに僕を見る。
彼女もきっと他の人と同じで壁の上で暮らす僕らを軽蔑していたのだろう。怠ける子供に「何もしないと見張り人になるよ」なんて、叱るのが当たり前なこの国だ。
軽蔑してしまうのは無理はない。
むしろ、僕に気を使っている分、カノンちゃんの性格は良いと言えるだろう。
そして、それを理解しながら強気な態度で接するベルの性格は悪い。ベルが性格悪いことは前々から知ってるけどね。
「なら、話はこれでお終いでしょう?」
「いえ、兄が間抜けということがまだ――兄は、その、間抜けじゃ……ないと、思う……。じゃないと、いいな」
「……」
エガミが間抜けじゃないことに関しての自身はないようだった。
もはや最後は願望だ。
この場にいないエガミが、ベルとカノンちゃんにこれ以上傷を付けられないように話題を戻す。
「それで、その【出会い斡旋所】って言うのはどういう場所なの?」
「その名の通りよ。男女の出会いを援助する新手のビジネスってところね」
「出会いを……?」
「そう。今の世の中、男女が恋人になるのは中々難しいのよ。そこに目を付けて商売にした人がいるのよ。本当、世の中、なんでもお金になるのね」
「そのわりに、僕たちは【不要な見張り人】だけどね」
【出会い斡旋所】に登録した男女の内、それぞれの希望に見合った相手を紹介し、デートや食事を通してカップルを成立させているらしい。
今や【下街】では大人気となっている商売とのことだった。
「そこにエガミが通ってるって訳か」
「ええ。そうなんです」
「それなら、別にいいじゃない。本人の意思なんだから」
この話にもう興味を無くしたのか、ベルはいつものように日傘の下で眠りにつく。
晴れの日も雨の日もよくここで眠れるものだ。
「でも、まあ、確かにベルの言うことも一理あると思うけど……」
恋愛は自由だ。
学校をサボって通っているのは頂けないが、無理のない範疇であれば構わないのではないか。
エガミとしても3人の番長の内、2人は彼女がいて――しかも、それは自分の姉妹。故に自分も彼女が欲しいと思ってもおかしくはない。
「でも、家にそんなお金なくて。ひょっとしたら、なにか、悪いことをしてるのかもと心配で……」
「なるほど……」
「それで、彼――テツくんに相談したんだけど、「エガミは俺にそんなこと知られたくねぇだろ。そういうことなら、ソウさんに相談してみろ。あの人なら上手く説得してくれるさ」って」
「……」
どうやら、僕の知らないところで評価に誤りがあるようだった。
確かにテツの相談には乗ったが、あれは殆んど王国最強の戦士、ローマンが解決したようなものだ。
僕はなにもしていない。
しかし、だからと言って――。
カノンちゃんの相談を無下にするわけにはいかない。
兄のことが余程心配なのだろう。
目に涙を溜めている。
泣くまいと顔を赤らめて震えるカノンちゃん。こんな顔をされたのでは、何かしなければと思ってしまう。
……昔の僕なら浮かびもしない感情だった。
「分かった。取り敢えずお金の出所だけ調べてみるよ」
強盗、盗みが日常であるように、高校生たちの喧嘩もまた日常的に起こっていた。しかし、統合してからここ数か月はその姿を目にする回数は減っていた。「統合することで荒れる。これからもっと大変になるぜ?」とキアカが言っていたけど、そんなことはなかった。
予想が外れたから、今度、あの少年に甘い物でもご馳走になるとしよう。
カノンちゃんが争いが沈静化している理由を教えてくれた。
「はい。なんでも、兄たちの喧嘩が下らなく、激しすぎるせいで、他の生徒達は毒気が抜かれていると言うか……」
「あー。彼ら、喧嘩しているようでどこか遊んでるようだもんね」
「はい。しかも、最近はもっぱら、兄が他の二人にちょっかいを掛けているようで……。姉妹が付き合ってるのが納得できてないらしいんです」
「まあ、複雑は複雑かも知れないね」
「ええ。喧嘩だけなら良いんですけど、兄が何やら最近おかしいんです」
「おかしい?」
「はい。兄はどうやら今週、一度も学校に来てないみたいなんです」
双子の姉はそっくりな顔を曇らせる。
「そのことを兄に聞いてみても、「お前には関係ない。テツと仲良くしてろ」の一点張りでして。それで、昨日、心配になって付けて行ったらここに――」
カノンはそう言ってポケットから一枚の紙を取り出す。そこには現実と見まごうばかりの美麗なイラストが映し出されていた。
こんな物質を僕は初めて見た。
「これは?」
「あ、これは、その……。実は、私の【異能】でして」
「ああ、なるほど。【念写】ね」
話には聞いたことが合ったけど、実物を見るのは初めてだった。ここまで現実に近い形で紙に映し出せるのか。
【念写】とは本人が見た映像を記憶から紙に映し出す【異能】の能力。
「それにしても、姉弟揃って【異能】持ってるなんて将来有望だね」
「……そんなことないですよ。こんなの、何の役にも立ちませんから」
「そんなことないと思うけどな……【念写】使ってる人も王国には沢山いると思うよ?」
「……全然。私は、こんなのを描きたい訳じゃ――って、そこは別にいいんです。それより、これ、写ってる場面を見てください」
今、話したいのは【異能】に付いてではなく、紙に映し出された場面だと強く指さす。
映し出されていたのは、どこかの建物に入るエガミの姿だった。
「これが、どうしたの?」
「どうしたのって、ここ、この場所知らないんですか!?」
凄い驚かれた。今後、僕がカノンちゃんを思い出すことがあるとしたら、この驚いてる顔だろうな。驚かせてばかりで、少し申し訳なくなってきた。
心の中で謝りながら、改めて【念写】に視線を戻す。
よく見ても普通の建物。怪しい所は何もないように思えるけど。何がおかしいのかと悩む僕の隣に、いつの間に起きたのだろうか。
オキド・ベルが覗き込んでいた。
「ここは【出会い斡旋所】ね。全く、こんな低俗な場所を利用する人間がどんな顔をしているのか見てみたいと、常日頃から思っていたのだけれど、予想を裏切らない間抜けな顔してるわね」
「……いきなり、起きて、人の兄を間抜けって、なんなんですか、この人?」
「僕の同僚だよ。同じく見張り人」
「……見張り人?」
ベルの職業が見張り人ということに、怪訝そうな顔をする。
それもそうだ。
不要な見張り人と呼ばれるくらい社会に貢献していない。むしろ、貢献している人々の努力を貪っているのだ。
貢《みつぎ》を貪《むさぼ》る。
文字の形こそ似ていても、その意味は正反対だった。
「そうよ? 悪い?」
「わ、悪くはないですけど……」
カノンちゃんはそう言いながら、罰が悪そうに僕を見る。
彼女もきっと他の人と同じで壁の上で暮らす僕らを軽蔑していたのだろう。怠ける子供に「何もしないと見張り人になるよ」なんて、叱るのが当たり前なこの国だ。
軽蔑してしまうのは無理はない。
むしろ、僕に気を使っている分、カノンちゃんの性格は良いと言えるだろう。
そして、それを理解しながら強気な態度で接するベルの性格は悪い。ベルが性格悪いことは前々から知ってるけどね。
「なら、話はこれでお終いでしょう?」
「いえ、兄が間抜けということがまだ――兄は、その、間抜けじゃ……ないと、思う……。じゃないと、いいな」
「……」
エガミが間抜けじゃないことに関しての自身はないようだった。
もはや最後は願望だ。
この場にいないエガミが、ベルとカノンちゃんにこれ以上傷を付けられないように話題を戻す。
「それで、その【出会い斡旋所】って言うのはどういう場所なの?」
「その名の通りよ。男女の出会いを援助する新手のビジネスってところね」
「出会いを……?」
「そう。今の世の中、男女が恋人になるのは中々難しいのよ。そこに目を付けて商売にした人がいるのよ。本当、世の中、なんでもお金になるのね」
「そのわりに、僕たちは【不要な見張り人】だけどね」
【出会い斡旋所】に登録した男女の内、それぞれの希望に見合った相手を紹介し、デートや食事を通してカップルを成立させているらしい。
今や【下街】では大人気となっている商売とのことだった。
「そこにエガミが通ってるって訳か」
「ええ。そうなんです」
「それなら、別にいいじゃない。本人の意思なんだから」
この話にもう興味を無くしたのか、ベルはいつものように日傘の下で眠りにつく。
晴れの日も雨の日もよくここで眠れるものだ。
「でも、まあ、確かにベルの言うことも一理あると思うけど……」
恋愛は自由だ。
学校をサボって通っているのは頂けないが、無理のない範疇であれば構わないのではないか。
エガミとしても3人の番長の内、2人は彼女がいて――しかも、それは自分の姉妹。故に自分も彼女が欲しいと思ってもおかしくはない。
「でも、家にそんなお金なくて。ひょっとしたら、なにか、悪いことをしてるのかもと心配で……」
「なるほど……」
「それで、彼――テツくんに相談したんだけど、「エガミは俺にそんなこと知られたくねぇだろ。そういうことなら、ソウさんに相談してみろ。あの人なら上手く説得してくれるさ」って」
「……」
どうやら、僕の知らないところで評価に誤りがあるようだった。
確かにテツの相談には乗ったが、あれは殆んど王国最強の戦士、ローマンが解決したようなものだ。
僕はなにもしていない。
しかし、だからと言って――。
カノンちゃんの相談を無下にするわけにはいかない。
兄のことが余程心配なのだろう。
目に涙を溜めている。
泣くまいと顔を赤らめて震えるカノンちゃん。こんな顔をされたのでは、何かしなければと思ってしまう。
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