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第閑−3話 王子の苛立ち
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「アウラ! アウラはいるか!!」
父からの説教を受けたフレアは、王国の片隅にある畑を訪れた。
自身にまつわる秘密にアウラが関係しているのであれば、本人に聞いた方が早い。
「……おい! 聞こえているんだろう! 何故、誰も姿を見せない!」
家の前に立ち乱暴に扉を叩くが、一向に人が現れる気配はない。
ただですら苛立っているフレアは、【魔法】によって家そのものを破壊しようとする。意識を集中し、【魔力】を呼び起こす。
「【水《ウォーター》――】!」
フレアが詠唱を終えようとしたところで、
「フレア様!! 何かあったでしょうか?」
アウラの叔父であるフィールが姿を見せた。
走り回っていたのか全身汗まみれ。常に泥を弄っているからか、手も爪も黒みを帯びており、余計汚らしい姿になっているとフレアは蔑む。
こんな年をいった老人より、自分の方が偉い。
次期国王である自分とは身分が違うのだと。その優越感がフレアを冷静にさせる。
「なに。父たちは俺に秘密を隠しているらしくてな。秘密のヒントがアウラにあると俺は考えているんだが……お前は何か知っているか?」
「わ、儂は……」
フレアの問いに瞳に影を作る。
その表情は肯定。
何か知っているんだろうと、フレアは問い詰める。
「お前が知っていることを、全て俺に教えろ!!」
「そういう訳には――いかないのです」
「父上の炎か」
「何故、それを!!」
「今しがた、目の前で見てきたからな。あの父が自らの身体に【魔法】を掛けていたのだ。他に知っている者がいれば当然だ」
対象者が口にすることで発動する【魔法】。
そんな【魔法】をフレアは聞いたこともなかったが。国王として民の上に立つ人間。誰もが知らぬ【魔法】を扱えても不思議はない。
いずれ、自分のモノになるのだから。
「しかし、これで確定したか。秘密はやはりアウラが絡んでいるわけだ」
「……」
「俺とアイツに一体、何の秘密があるというのだ? まさか、アウラが王の子供とでもいうのか?」
「……」
何度聞いてもフィールは口を開かない。
頑固な老人にフレアは両手を上げる。
「ふん。何も答えないか。なら、お前を拷問にでもかけて聞き出してもいいんだぞ?」
王族の権力を使えば、それぐらい訳がない。
無い罪を作り上げて、牢で監禁することだってできる。
フレアの脅しに対して、ゆっくりと口を開いた。
「フレア様は――」
「ようやく話す気になったか。最初からそうして置けばいいのにな」
「フレア様は、アウラがどこに行ったか知りませぬでしょうか?」
「なんだと?」
聞いた質問から大きく外れた言葉に、フレアは耳を疑う。
「なんで俺が薄汚れた馬鹿の居場所を知らなきゃいけないんだ! いいから、俺の質問に答えろ!!」
「その、フルム様と一緒ではないかと思いまして……。婚約を結んでいるフレア様なら居場所を知っているのかと――」
「俺は知らん! フルムなんて尻軽女のこともな!! 妹とアウラと三人で仲良く国をでたんじゃないのか?」
婚約者であるフルムもアウラを選んだ。
全てがアウラ、アウラ、アウラ。
なんで無能ばかりが、特別扱いされるのか。
フレアは理解できぬ苛立ちに、近くにあったテーブルを蹴る。
「そんな奴らのことはどうでもいいんだよ! 俺の、俺のことについて聞いてるんだ!! お前が何か知ってるなら、さっさと吐け!!」
フレアは両手を合わせて【魔法】を発動する。
「【水《ウォーター》・波《ウェーブ》】!!」
空中を滑るようにして波が生み出される。
白波が先陣を気ってフィールを飲み込もうとするが、
「……【水《ウォーター》・波《ウェーブ》】!」
フィールも同じ【魔法】で応じた。
波と波がぶつかり飛沫が上がる。
同じ【魔法】。
勝敗を決めるのは個人が持つ濃度。そして、もっとも優れた血筋は――王族。
「馬鹿が! 俺は王族だぞ! お前みたいな農家が俺に【魔力】の質で勝てる訳ないだろうがぁ!!」
だが、威勢のいい言葉すらも飲み込むようにして、フィールの波は勢いが衰えない。
完全に――互角だった。
「ば、馬鹿な!! 俺は王族だぞ!!」
「……あなたは知らないでしょうが、私もまた――」
フィールが言葉を告げようとした瞬間。
右腕から赤き炎が現れた。
「これは、父上の!!」
「グっ!!」
発動していた【魔法】を止め、燃える右腕に【水】属性の【魔法】を打ちかけた。
煙が上がり勢いが弱まっていく。
だが、その炎が消えることはない。
腕を焼く炎に歯を食いしばり、フィールは言う。
「私もまた、王族の血筋が1人なのですよ」
「なに!?」
「真実を知りたければ、【黒い医者】を探しなさい。彼には王の【魔法】は付いてませんから」
「……そいつは、どこにいる!」
「残念ながら、私が話せるのはここまでです……。【水《ウォーター》・剣《ソード》】」
フェールは詠唱と共に言葉を止めた。
燃えていない左手に水で作られた剣を握ると、躊躇うことなく右肩に突き刺し、地面に向けて真っ直ぐ落とした。
だん。
命から切り裂かれた腕が、重力に負けて床に落ちた。
切り落とした傷を塞ぐように、【魔法】で鎖を生み出し、傷口を縛る。
「お、お前、なにを……」
自らの腕を切り落としたフェールの迫力に負けたのか、数歩後ろに下がるフレア。
「こうしなければ、命は助からなかったので……」
「だとしたら、なんでお前はそんなことをッ!!」
「フレア様。あなたは常に苛立っておられる。それを解消するために弱い人を見つけては傷付ける。そんな生き方が可哀そうだと――思ったのですよ」
「か、可哀そうだと!? ふざけるな!! 俺はお前如き農家に同情をされるほど、低俗な人間ではない! 俺はフレア・ブレイズだぞ!!」
王としての誇りを込めてフレアが叫ぶが――その声は虚しく轟くだけだった。
父からの説教を受けたフレアは、王国の片隅にある畑を訪れた。
自身にまつわる秘密にアウラが関係しているのであれば、本人に聞いた方が早い。
「……おい! 聞こえているんだろう! 何故、誰も姿を見せない!」
家の前に立ち乱暴に扉を叩くが、一向に人が現れる気配はない。
ただですら苛立っているフレアは、【魔法】によって家そのものを破壊しようとする。意識を集中し、【魔力】を呼び起こす。
「【水《ウォーター》――】!」
フレアが詠唱を終えようとしたところで、
「フレア様!! 何かあったでしょうか?」
アウラの叔父であるフィールが姿を見せた。
走り回っていたのか全身汗まみれ。常に泥を弄っているからか、手も爪も黒みを帯びており、余計汚らしい姿になっているとフレアは蔑む。
こんな年をいった老人より、自分の方が偉い。
次期国王である自分とは身分が違うのだと。その優越感がフレアを冷静にさせる。
「なに。父たちは俺に秘密を隠しているらしくてな。秘密のヒントがアウラにあると俺は考えているんだが……お前は何か知っているか?」
「わ、儂は……」
フレアの問いに瞳に影を作る。
その表情は肯定。
何か知っているんだろうと、フレアは問い詰める。
「お前が知っていることを、全て俺に教えろ!!」
「そういう訳には――いかないのです」
「父上の炎か」
「何故、それを!!」
「今しがた、目の前で見てきたからな。あの父が自らの身体に【魔法】を掛けていたのだ。他に知っている者がいれば当然だ」
対象者が口にすることで発動する【魔法】。
そんな【魔法】をフレアは聞いたこともなかったが。国王として民の上に立つ人間。誰もが知らぬ【魔法】を扱えても不思議はない。
いずれ、自分のモノになるのだから。
「しかし、これで確定したか。秘密はやはりアウラが絡んでいるわけだ」
「……」
「俺とアイツに一体、何の秘密があるというのだ? まさか、アウラが王の子供とでもいうのか?」
「……」
何度聞いてもフィールは口を開かない。
頑固な老人にフレアは両手を上げる。
「ふん。何も答えないか。なら、お前を拷問にでもかけて聞き出してもいいんだぞ?」
王族の権力を使えば、それぐらい訳がない。
無い罪を作り上げて、牢で監禁することだってできる。
フレアの脅しに対して、ゆっくりと口を開いた。
「フレア様は――」
「ようやく話す気になったか。最初からそうして置けばいいのにな」
「フレア様は、アウラがどこに行ったか知りませぬでしょうか?」
「なんだと?」
聞いた質問から大きく外れた言葉に、フレアは耳を疑う。
「なんで俺が薄汚れた馬鹿の居場所を知らなきゃいけないんだ! いいから、俺の質問に答えろ!!」
「その、フルム様と一緒ではないかと思いまして……。婚約を結んでいるフレア様なら居場所を知っているのかと――」
「俺は知らん! フルムなんて尻軽女のこともな!! 妹とアウラと三人で仲良く国をでたんじゃないのか?」
婚約者であるフルムもアウラを選んだ。
全てがアウラ、アウラ、アウラ。
なんで無能ばかりが、特別扱いされるのか。
フレアは理解できぬ苛立ちに、近くにあったテーブルを蹴る。
「そんな奴らのことはどうでもいいんだよ! 俺の、俺のことについて聞いてるんだ!! お前が何か知ってるなら、さっさと吐け!!」
フレアは両手を合わせて【魔法】を発動する。
「【水《ウォーター》・波《ウェーブ》】!!」
空中を滑るようにして波が生み出される。
白波が先陣を気ってフィールを飲み込もうとするが、
「……【水《ウォーター》・波《ウェーブ》】!」
フィールも同じ【魔法】で応じた。
波と波がぶつかり飛沫が上がる。
同じ【魔法】。
勝敗を決めるのは個人が持つ濃度。そして、もっとも優れた血筋は――王族。
「馬鹿が! 俺は王族だぞ! お前みたいな農家が俺に【魔力】の質で勝てる訳ないだろうがぁ!!」
だが、威勢のいい言葉すらも飲み込むようにして、フィールの波は勢いが衰えない。
完全に――互角だった。
「ば、馬鹿な!! 俺は王族だぞ!!」
「……あなたは知らないでしょうが、私もまた――」
フィールが言葉を告げようとした瞬間。
右腕から赤き炎が現れた。
「これは、父上の!!」
「グっ!!」
発動していた【魔法】を止め、燃える右腕に【水】属性の【魔法】を打ちかけた。
煙が上がり勢いが弱まっていく。
だが、その炎が消えることはない。
腕を焼く炎に歯を食いしばり、フィールは言う。
「私もまた、王族の血筋が1人なのですよ」
「なに!?」
「真実を知りたければ、【黒い医者】を探しなさい。彼には王の【魔法】は付いてませんから」
「……そいつは、どこにいる!」
「残念ながら、私が話せるのはここまでです……。【水《ウォーター》・剣《ソード》】」
フェールは詠唱と共に言葉を止めた。
燃えていない左手に水で作られた剣を握ると、躊躇うことなく右肩に突き刺し、地面に向けて真っ直ぐ落とした。
だん。
命から切り裂かれた腕が、重力に負けて床に落ちた。
切り落とした傷を塞ぐように、【魔法】で鎖を生み出し、傷口を縛る。
「お、お前、なにを……」
自らの腕を切り落としたフェールの迫力に負けたのか、数歩後ろに下がるフレア。
「こうしなければ、命は助からなかったので……」
「だとしたら、なんでお前はそんなことをッ!!」
「フレア様。あなたは常に苛立っておられる。それを解消するために弱い人を見つけては傷付ける。そんな生き方が可哀そうだと――思ったのですよ」
「か、可哀そうだと!? ふざけるな!! 俺はお前如き農家に同情をされるほど、低俗な人間ではない! 俺はフレア・ブレイズだぞ!!」
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