魔力は自由だ!~魔法を使えない僕は、悪役令嬢を追放された彼女に命を救われる。恩返しするため、魔力放出を鍛えます~

白慨 揶揄

文字の大きさ
34 / 39

第4−2話 二度目の危険

しおりを挟む
 前触れもなく聞こえてきた赤ん坊の声。
 いつもは人を小ばかにしたような口調なのだが、今回は明らかに慌てているようだった。
 日々の仕返しとばかりにフルムさんが、お返しとばかりに意地悪く言う。

「あなたねぇ。そりゃ、あの【獣人】を置いてきてるんだから、いるに決まってるでしょう。久しぶりに出てきて無駄な時間を使わなせないでくれるかしら? 頭まで凍ってるんじゃないの?」

 デネボラ村に【獣人】がいる。
 冷静になって聞けば当然のことだった。何故なら、僕たちが倒したイヌの【獣人】を、村に置いてきているのだから。

 そのことは赤ん坊も承知のはず。
 村に置いていき、その間に監守を名乗るあの二人に連絡を取る手はずではなかったか?

 そんなことまで忘れてしまったのか……?
 前から思っていたけど、この赤ん坊は全知全能感を醸し出しているが、基本的には抜けた・・・性格だと最近気付き始めた。
 まあ、だって、最初から能力を渡し間違えているしね。

『ちょっと、私まで馬鹿にするのは辞めて貰えないかな? そこにいるアウラくんだけで充分だろう!』

 赤ん坊が言う。
 そんな。
 まさか、なんてことを――。

「……名前、覚えてくれたんですか!!」

 今まで僕が話しかけなきゃ話しかけてくれなかったから、フルムさんのオマケと考えられてるのかと思ったけど、名前を覚えてくれていたとは!

「馬鹿ばっかりなの、ここは!!」

 フルムさんが馬車を叩いた。
 強い衝撃に、揺れる揺れる。

『と、こんなこと話している場合じゃなかった。勿論、僕が言っているのは君たちが倒した【獣人】じゃない。新しい【獣人】の気配だよ。それも一つじゃない……』

「……それはどういうことかしら?」

『だから、そのまんまの意味だよ。デネボラ村に【獣人】がいる。これは完全に計算外だよ。だから、ミッション変更!! この原因を突き止めて排除するんだ』

 どうやら、赤ん坊は自分の言ったことも忘れていたわけじゃなかった。
 僕の名前も憶えていてくれたのに、疑って申し訳ない気持ちになるが、それどころじゃない。
 別の【獣人】がデネボラ村に?
 僕たちが村を出て半日。
 引き返せばそれと同じだけの時間が必要になる。

「だとしたら、もっと早く言って欲しいわね。それに、私たちが向かわなくても、あの監守達が行くんじゃなかったかしら?」

 引き返さなくても、監守達が行く約束。
 ならば、あの二人に任せればいいとフルムさんは言うが――。

『ああ。でも、手が足りない可能性がある。だから、頼んだよ!』

 監守達でも人手が足りない。
 それがどれだけのことなのか、僕とフルムさんは直ぐに察した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

ひだまりのFランク冒険者

みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。 そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。 そんな中 冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。 その名は、リルド。 彼は、特に何もない感じに毎日 「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。 この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

処理中です...