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第2話 平原に落ちる雷
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「朝だ……」
結局、一睡も出来なかった。
自室のベッドの上で膝を抱えたまま夜が開けていた。睡眠不足からか、精神が不安定になる。
痛みが欲しい。
痛み、痛み、痛み、痛み。
僕は自分を傷付けるように、何度も、何度も壁を殴りつけた。
「痛っ……!」
やがて、拳の皮膚が破れたのか壁に血が付着する。壁よりも先に拳が壊れてしまった。
岩壁すらも砕けぬ腕力。僕と同じく痩せ型だったオストラは、余裕で岩を砕く魔法を持っていたというのに……。
自分の無力さが憎い。
痛みが冷静さを取り戻させてくれた。
「だったら、もっと努力しないと」
追放されたことを、四の五の言っても仕方がない。むしろ、この思いを三倍にして返すくらい強くならないと。
一人でもこれまでの魔物を倒せるくらいになる。
決意した俺はしっかりと睡眠を取り修行を開始した。
「やっぱり、まずは使える魔法を増やした方がいい。そのためには、どんどん魔物を倒さないと」
一般的に使える魔法が多くなるには、魔物を討伐する必要がある。僕も【占星の騎士団】として、それなりに魔物を倒していたつもりだったんだけど、強くなったのは三人だけ。
一体、何が違うというのだろうか?
「と、兎に角、魔物を倒してみよう!」
僕が使える魔法は【強化の矢】。
その名の通り放った矢の威力を高める魔法である。
「そう言えば、オストラは魔法を使わせてくれなかったっけ」
今思えば、僕に魔法を使わせようとしなかった。まあ、矢を強化したところで威力は低いから邪魔だってことだったんだろうけど。
戦闘では主に道具の管理と勘を伝えることだけが僕の仕事だった。
「でも、逆に考えれば一人だから魔法は使い放題ってことだよね?」
一人になっても、なるべく多くの人を助けたい。
弱くても魔法を使えるようになったんだから……。僕がそう思うのは出生が関係しているのだろう。
僕は双子の弟として生まれたらしい。実際は兄との記憶はないから事実なのか分からないんだけど。
兄は僕が意志を持つ前に死んだらしい。
魔法を生まれ持った僕と持たなかった兄。
両親は僕を可愛がり、兄を放っておいた。才能がある僕を育てるために付きっ切りで、兄は知人に預けていたらしい。
だが、知人は自分の子でもない兄を育てようとはしなかった。
放置して遊び歩いていたらしい。
二歳の時――兄は死んだ。一人で家の中で泣き続けて。
「才能がなかったら僕も死んでいたかもしれない。魔法によって助かった命。誰かを助けるために使わなきゃ」
困ってる人を助けるには、ギルドに依頼するクエストを受けるのが手っ取り早い。
僕はその中で最も弱いモンスターの討伐依頼を探し受注する。
「スライムか」
クエストを受けた僕は、踝よりも低い草が視界一面に広がる草原にやってきていた。
思えば初めて一人で訪れた。草原が広いのは知ってるけど、ここまで広かったっけ? 仲間たちとくれば、そう感じないのだろうけど、昨日の今日で新しい仲間を作りますなんて、古巣を裏切るような真似はしたくない。
そんなことをしたら、僕を切り捨てたバニス達と同類になる。
「スライム発見!」
僕は迷わず矢を放つ。
【強化の矢】を使用した矢は、ほんのりと赤みを帯びていた。
ブスっ。
柔らかなスライムの身体に突き刺さる。だが、致命傷にはならないのか、矢を地面に落として逃げようとする。
「待てっ!」
僕は次の矢を放とうとする。【強化の矢】が一日に使えるのは二回だけ。これを外したら今日、スライムを倒すのは絶望的になる。
走りながら狙いを定める。
大丈夫。技術だけなら練習は沢山したんだ。
「はっ!!」
二発目の矢もスライムの身体を貫いた。矢が刺さったスライムの身体が弾けて消えていく。
「はぁ。はぁ……。スライム一匹倒すのが限界なのか」
草原で大の字になって倒れる。
自分の不甲斐なさが嫌になる。だが、それと同時に初めて一人で魔物を倒した充実感もあった。
相反する二つの感情が風に流れて混ざる雲みたいだ。
そんなことを考えながら空を見ていると――、
『ギャアアア!!』
雲を突き破るようにして一匹の魔物が姿を見せた。
空を優雅に泳ぐ長い尾。
鱗がびっしりと敷き詰められており、身体に付いた手には鋭い爪が生えていた。
この魔物は――、
「ら、雷龍《らいりゅう》!?」
魔物としては最上級の危険度が割り振られる龍種《りゅうしゅ》。
比較的平和である草原に姿を見せるなんて聞いたこともない。
餌になる生物を探しているのか、草原に視線を落とす。隠れる場所のない俺と目があった。
結局、一睡も出来なかった。
自室のベッドの上で膝を抱えたまま夜が開けていた。睡眠不足からか、精神が不安定になる。
痛みが欲しい。
痛み、痛み、痛み、痛み。
僕は自分を傷付けるように、何度も、何度も壁を殴りつけた。
「痛っ……!」
やがて、拳の皮膚が破れたのか壁に血が付着する。壁よりも先に拳が壊れてしまった。
岩壁すらも砕けぬ腕力。僕と同じく痩せ型だったオストラは、余裕で岩を砕く魔法を持っていたというのに……。
自分の無力さが憎い。
痛みが冷静さを取り戻させてくれた。
「だったら、もっと努力しないと」
追放されたことを、四の五の言っても仕方がない。むしろ、この思いを三倍にして返すくらい強くならないと。
一人でもこれまでの魔物を倒せるくらいになる。
決意した俺はしっかりと睡眠を取り修行を開始した。
「やっぱり、まずは使える魔法を増やした方がいい。そのためには、どんどん魔物を倒さないと」
一般的に使える魔法が多くなるには、魔物を討伐する必要がある。僕も【占星の騎士団】として、それなりに魔物を倒していたつもりだったんだけど、強くなったのは三人だけ。
一体、何が違うというのだろうか?
「と、兎に角、魔物を倒してみよう!」
僕が使える魔法は【強化の矢】。
その名の通り放った矢の威力を高める魔法である。
「そう言えば、オストラは魔法を使わせてくれなかったっけ」
今思えば、僕に魔法を使わせようとしなかった。まあ、矢を強化したところで威力は低いから邪魔だってことだったんだろうけど。
戦闘では主に道具の管理と勘を伝えることだけが僕の仕事だった。
「でも、逆に考えれば一人だから魔法は使い放題ってことだよね?」
一人になっても、なるべく多くの人を助けたい。
弱くても魔法を使えるようになったんだから……。僕がそう思うのは出生が関係しているのだろう。
僕は双子の弟として生まれたらしい。実際は兄との記憶はないから事実なのか分からないんだけど。
兄は僕が意志を持つ前に死んだらしい。
魔法を生まれ持った僕と持たなかった兄。
両親は僕を可愛がり、兄を放っておいた。才能がある僕を育てるために付きっ切りで、兄は知人に預けていたらしい。
だが、知人は自分の子でもない兄を育てようとはしなかった。
放置して遊び歩いていたらしい。
二歳の時――兄は死んだ。一人で家の中で泣き続けて。
「才能がなかったら僕も死んでいたかもしれない。魔法によって助かった命。誰かを助けるために使わなきゃ」
困ってる人を助けるには、ギルドに依頼するクエストを受けるのが手っ取り早い。
僕はその中で最も弱いモンスターの討伐依頼を探し受注する。
「スライムか」
クエストを受けた僕は、踝よりも低い草が視界一面に広がる草原にやってきていた。
思えば初めて一人で訪れた。草原が広いのは知ってるけど、ここまで広かったっけ? 仲間たちとくれば、そう感じないのだろうけど、昨日の今日で新しい仲間を作りますなんて、古巣を裏切るような真似はしたくない。
そんなことをしたら、僕を切り捨てたバニス達と同類になる。
「スライム発見!」
僕は迷わず矢を放つ。
【強化の矢】を使用した矢は、ほんのりと赤みを帯びていた。
ブスっ。
柔らかなスライムの身体に突き刺さる。だが、致命傷にはならないのか、矢を地面に落として逃げようとする。
「待てっ!」
僕は次の矢を放とうとする。【強化の矢】が一日に使えるのは二回だけ。これを外したら今日、スライムを倒すのは絶望的になる。
走りながら狙いを定める。
大丈夫。技術だけなら練習は沢山したんだ。
「はっ!!」
二発目の矢もスライムの身体を貫いた。矢が刺さったスライムの身体が弾けて消えていく。
「はぁ。はぁ……。スライム一匹倒すのが限界なのか」
草原で大の字になって倒れる。
自分の不甲斐なさが嫌になる。だが、それと同時に初めて一人で魔物を倒した充実感もあった。
相反する二つの感情が風に流れて混ざる雲みたいだ。
そんなことを考えながら空を見ていると――、
『ギャアアア!!』
雲を突き破るようにして一匹の魔物が姿を見せた。
空を優雅に泳ぐ長い尾。
鱗がびっしりと敷き詰められており、身体に付いた手には鋭い爪が生えていた。
この魔物は――、
「ら、雷龍《らいりゅう》!?」
魔物としては最上級の危険度が割り振られる龍種《りゅうしゅ》。
比較的平和である草原に姿を見せるなんて聞いたこともない。
餌になる生物を探しているのか、草原に視線を落とす。隠れる場所のない俺と目があった。
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