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第13話 土下座メイド
しおりを挟む「エミリ様!! 良かった。探しましたよ。私としたことが、エミリ様の方向音痴を知りながら目を離すとは一生の不覚。この責任は私の死を持って償います」
ロウの鼻は確かだったようで、すぐに合流できた。
エミリさんの姿を見つけたのか、集団の中から物凄い勢いでメイドさんが走ってきた。それはもう人より馬に近い勢いだった
馬メイドさんだ。
ズザァァァー。
数メートル手前で膝を折ったメイドさんは、勢いのまま滑り込む。
この人はちょっと危険な香りがする。
僕の勘が告げていた。【魔眼】とか関係なくビンビン伝わってくる。
「もう。責任を感じなくてもいいって、サキ」
「そういう訳には行きません……! エミリ様に是非、死を見届けて欲しいのです」
グッと頭上に球体を投げる。
あれは――【爆発《ボム》】の魔法だ。
拳大の球体が衝撃を受けると爆発する魔法。手動で放る必要があるが、その分、威力は高い。
鎧を着てても生き残れるかどうか。装甲のないメイド服なら確実に死ぬ。
「なにしてるんですか!」
メイドさんの頭上を落ちる球体目掛けて【強化の矢】+【腕力強化《小》】を発動する。赤いオーラを纏った矢に貫かれ弾ける。
自害を邪魔されたメイドさんは「キっ」と睨んだ。
「貴様……何者だ! 私の覚悟の邪魔をするとは――死にたいらしいな」
「いや、死にたいのはお前だっただろうが」
ロウが呆れたように呟いた。
「魔物が喋っている? 貴様ら……ただモノじゃないな! エミリ様。こいつらに変なことされなかったですか?」
「ええ。彼らが私を助けてくれたんです」
「そんな……。エミリ様を助けるなんて、なんて良いことをするんだ!! 改めて感謝する」
僕たちからエミリさんを守るように前に出たと思ったら、今度は僕たちに膝を付く。
なんだか忙しい人だな……。
見ていて飽きないや。
「この恩は絶対返さないといけないな。よし、今度、私たちの屋敷に来るといい! 褒美として色々渡したいからな」
「褒美なんて……。困っていたら人を助けるのは当たり前じゃないですか」
もしも、バニスがここにいたら、頭を何度も殴ったことだろう。身分の高い人間にはとことん擦り寄るのがバニスだ。そして、褒美を貰ったら、「しけてんなぁ。俺がぶっ殺してやろうか?」と剣を振り回すとこまでがセットだ。
本当はそんなことやる勇気もなかったのにな。
断る僕にエミリさんが「クスリ」と笑う。
「本当に良い人なのですね。では、一緒に食事をしましょう。それくらいならいいでしょう?」
「まあ、それくらいなら……是非、お願いします」
相手の好意を頑なに断るのも失礼だ。
食事くらいなら良いよね?
エミリさんが手を振りながら去っていく。
なんだか面白い人達だったなぁ。貴族って嫌な人達ばっかりなイメージだったけど、あんな人達もいるんだ。
「ちょっとだけ、食事会が楽しみだな」
「ああ。俺の分も勿論あるんだろうなぁ!! 肉、肉、肉ぅ~!!」
「ちょっと。まだ、見えるところにいるんだから、エミリさんたちに聞こえちゃうよ」
ロウの遠吠えに馬車に乗る彼女達が笑ったような気がした。
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