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第35話 襲われた園
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「はぁ、ちょっと舐めてたわ。まさか、魔物に芸まで仕込んでるとは思わなかったぜ」
【魔物園】には観光客が休めるように、いくつかの休憩スペースが設けられていた。ロウは興奮冷めやらぬ口調だ。
「だね。気付けばもう、辺りは真っ暗だ」
壁に囲われているからか、空が狭く感じる。それにしても、魔物にあそこまで芸を仕込むことが出来るんだな……。
飼育員の合図で自在にボールを操る水属性の魔物――牙海驢《アシカファング》。
空中から獲物目掛けて滑空する飛行能力を持つ魔物、鷲突《わしとつ》。
僕も何度か倒したことがある魔物たちだけど、あんなに人と仲良くなれるんだ。魔物と人の新たな関係を見た気がした。
「はぁ。腹減ったな。そろそろ帰るか」
「そうだね。アディさんも帰ってきてるだろうし」
もう一度、今度はアディさんも連れてこよう。折角、港街に来たんだから、観光しないと勿体ない。
エミリさんが待つ城に帰ろうとした時、
「キャア!!」
と、悲鳴が聞こえてきた。楽しい観光施設に相応しくない叫び声。僕とロウは打ち合わせることなく、互いに顔を確認する。
声が聞こえてきた場所は、さっきまでショーを見ていた方向だ。
「ロウ!!」
「ああ。様子を見に行くぞ!」
踵を返してショー会場を目指す。『ようこそ』と書かれた小さな門を抜けると、囲われた壁を抜けて海へ出る。会場は海を利用して作られていた。
海を円で囲いステージを浮かべる。自然を利用した会場では魔物たちが多くの人を笑顔にしていた。
その場所で――
「た、助けて!!」
魔物に指示を出していた飼育員が、その魔物達に襲われていた。
「あれは、矢魚《ボウフィッシュ》!?」
その名の通り、矢のような形状をした魚だ。細い体は海の中では高速に近い速度を出すことが可能で、頭は鋭く尖っていた。
ショーでは、的を貫いて観客を沸かせていたが、今は頭についた矢で威嚇するように水中から跳ねては沈みを繰り返していた。
これは先ほど、僕たちが見たショーと同じ光景。
「おいおい、まさか!」
だが、何よりも違っていたのは、指示を出すはずの飼育員が、ステージの中心で的に貼りつけられているということ。
まさか、人がその状態でショーと同じ内容を行おうというのか。そんなことをしたら、飼育員は死んでしまう。
水の中をグルグルと泳ぎ、速度を増していく。
迷ってる暇はなさそうだ。
今直ぐにでも、飼育員さんを助けないと!!
「【強化の矢】+【腕力強化《中》】!!」
【選択領域】を開いた僕は、手札に揃っていた魔法進化を迷わず選択する。
「はっ!!」
弓を引き矢を放つ。赤いオーラを纏った矢がプールの中心目掛けて飛来する。
バシャーン。
水を抉るように矢が水中へ沈む。変形を強要された海水は凹んだ水面を補うように一気に流れ込む。まるで、噴水みたいだ。
泳いでいた矢魚《ボウフィッシュ》が、ステージに打ち上げられ、ぴちぴちと跳ねる。勢いを失ってしまえば、水中から的を目掛けて飛ぶことは出来ない。
「よし! 大丈夫ですか!」
貼りつけられた飼育員の元へ駆け寄る。両手両足を縄で雁字搦めに縛られていた。明らかに人の仕業だ……。
それに矢魚達も……。
「運が良かったな。こいつらが芸を仕込まれた魔物じゃなかったら、助けられなかったかもな」
ロウが縄を爪で引っ掻く。
確かに、自然を生きる矢魚だったら、無防備な餌を前に泳ぎ回ったりはしない。観客を盛り上げるために、仕込まれていたから魔法が間に合ったんだ。
「何があったんですか!?」
的から飼育員さんを引き剥した僕は、何が逢ったのか問う。
「それが……、背後から誰かに襲われたことは覚えてるんですけど……誰に襲われたか見れなくて……」
「誰かに襲われた……」
「はい。多分なんですけど、私たちと同じ飼育員だと思うんです。じゃないと、矢魚《ボウフィッシュ》たちに指示を出すことは出来ないと思うので……」
「なるほど……」
もしかしたら、飼育員の誰かが彼女に恨みを持っていたのか? だが、僕の考えを覆すように、再び悲鳴が聞こえてきた。
「まさか、他の飼育員さんも!?」
「だな。迷ってる暇はねぇ。さっさと助けに行くぞ!」
助けた飼育員さんを安全な場所まで運び、僕たちは次の被害者を探そうと走り出す。
「へへへっ」
「何をこんな時に笑ってるのさ」
足元でニヤニヤと笑いながら走るロウ。そんな状況じゃないのに、なんで嬉しそうなんだろう?
「悪い悪い。確かに非常事態だけどよ、お前が頼れるようになったことが俺は嬉しいんだよ」
「だから、それもロウのお陰なんだってば。いいからほら、足を動かすよ!!」
【魔物園】には観光客が休めるように、いくつかの休憩スペースが設けられていた。ロウは興奮冷めやらぬ口調だ。
「だね。気付けばもう、辺りは真っ暗だ」
壁に囲われているからか、空が狭く感じる。それにしても、魔物にあそこまで芸を仕込むことが出来るんだな……。
飼育員の合図で自在にボールを操る水属性の魔物――牙海驢《アシカファング》。
空中から獲物目掛けて滑空する飛行能力を持つ魔物、鷲突《わしとつ》。
僕も何度か倒したことがある魔物たちだけど、あんなに人と仲良くなれるんだ。魔物と人の新たな関係を見た気がした。
「はぁ。腹減ったな。そろそろ帰るか」
「そうだね。アディさんも帰ってきてるだろうし」
もう一度、今度はアディさんも連れてこよう。折角、港街に来たんだから、観光しないと勿体ない。
エミリさんが待つ城に帰ろうとした時、
「キャア!!」
と、悲鳴が聞こえてきた。楽しい観光施設に相応しくない叫び声。僕とロウは打ち合わせることなく、互いに顔を確認する。
声が聞こえてきた場所は、さっきまでショーを見ていた方向だ。
「ロウ!!」
「ああ。様子を見に行くぞ!」
踵を返してショー会場を目指す。『ようこそ』と書かれた小さな門を抜けると、囲われた壁を抜けて海へ出る。会場は海を利用して作られていた。
海を円で囲いステージを浮かべる。自然を利用した会場では魔物たちが多くの人を笑顔にしていた。
その場所で――
「た、助けて!!」
魔物に指示を出していた飼育員が、その魔物達に襲われていた。
「あれは、矢魚《ボウフィッシュ》!?」
その名の通り、矢のような形状をした魚だ。細い体は海の中では高速に近い速度を出すことが可能で、頭は鋭く尖っていた。
ショーでは、的を貫いて観客を沸かせていたが、今は頭についた矢で威嚇するように水中から跳ねては沈みを繰り返していた。
これは先ほど、僕たちが見たショーと同じ光景。
「おいおい、まさか!」
だが、何よりも違っていたのは、指示を出すはずの飼育員が、ステージの中心で的に貼りつけられているということ。
まさか、人がその状態でショーと同じ内容を行おうというのか。そんなことをしたら、飼育員は死んでしまう。
水の中をグルグルと泳ぎ、速度を増していく。
迷ってる暇はなさそうだ。
今直ぐにでも、飼育員さんを助けないと!!
「【強化の矢】+【腕力強化《中》】!!」
【選択領域】を開いた僕は、手札に揃っていた魔法進化を迷わず選択する。
「はっ!!」
弓を引き矢を放つ。赤いオーラを纏った矢がプールの中心目掛けて飛来する。
バシャーン。
水を抉るように矢が水中へ沈む。変形を強要された海水は凹んだ水面を補うように一気に流れ込む。まるで、噴水みたいだ。
泳いでいた矢魚《ボウフィッシュ》が、ステージに打ち上げられ、ぴちぴちと跳ねる。勢いを失ってしまえば、水中から的を目掛けて飛ぶことは出来ない。
「よし! 大丈夫ですか!」
貼りつけられた飼育員の元へ駆け寄る。両手両足を縄で雁字搦めに縛られていた。明らかに人の仕業だ……。
それに矢魚達も……。
「運が良かったな。こいつらが芸を仕込まれた魔物じゃなかったら、助けられなかったかもな」
ロウが縄を爪で引っ掻く。
確かに、自然を生きる矢魚だったら、無防備な餌を前に泳ぎ回ったりはしない。観客を盛り上げるために、仕込まれていたから魔法が間に合ったんだ。
「何があったんですか!?」
的から飼育員さんを引き剥した僕は、何が逢ったのか問う。
「それが……、背後から誰かに襲われたことは覚えてるんですけど……誰に襲われたか見れなくて……」
「誰かに襲われた……」
「はい。多分なんですけど、私たちと同じ飼育員だと思うんです。じゃないと、矢魚《ボウフィッシュ》たちに指示を出すことは出来ないと思うので……」
「なるほど……」
もしかしたら、飼育員の誰かが彼女に恨みを持っていたのか? だが、僕の考えを覆すように、再び悲鳴が聞こえてきた。
「まさか、他の飼育員さんも!?」
「だな。迷ってる暇はねぇ。さっさと助けに行くぞ!」
助けた飼育員さんを安全な場所まで運び、僕たちは次の被害者を探そうと走り出す。
「へへへっ」
「何をこんな時に笑ってるのさ」
足元でニヤニヤと笑いながら走るロウ。そんな状況じゃないのに、なんで嬉しそうなんだろう?
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