騎士団長と副団長の恋物語

かはり かは

文字の大きさ
3 / 3
第一章 出会い編

第3話 ヘラクスの挑戦①

しおりを挟む
決闘より4日後、ヘラクスは1つ悩みを抱えていた。
4日前の決闘よりセラスより避けられている、そんな気がして居るのだ。

ヘラクスは休日故に騎士団の防具は身に付けず騎士団の証である紋章が刻まれた鞘とそれに入れられたブロンドソード(いつも使用している大剣は大きい為の日常生活での帯刀用)を腰に差し騎士団の赤色の制服を着て居た。

「ん~どうしたらまた前みたいに仲良く出来るかな...」

彼はまるで喧嘩した思春期の男の様に仲直りをどうしようかと悩んでいた。
どうにか仲直りの機会を...と悩みまだ午前の絶妙な賑わいを見せる街を適当に歩いているうちにヘラクスは1つの食事店に行き着いた。

❴ミュゼ・ルナール❵

と、可愛らしい文字質で書かれた赤い木の看板を掲げ“OPEN”と書かれた掛け看板をドアに掛けた恐らくは料理。それも甘い物メインの料理屋のようであった。

「甘い物、あの人好きそうな感じじゃないけど一か八かで誘ってみるか...」

ヘラクスは思い付けば即座に行動するタイプである。
その為、気付けば騎士団の本部に行きセラスを探すに至っていた。

さて、美しい造形が施された石像や良く切り揃えられた垣木が並び規則的なレンガの道により舗装されている本部の庭を歩く事数分。
遂に目的の人物、セラスを発見した。
本部内に設けられた薔薇園。
赤や黄を初めとした様々な色の薔薇が咲き誇る場所、美しい建物等一流品が並ぶ本部内でももう一段階上。最も美しいと謳われる場所の中心に設けられた広場、そこに幾つか置かれた白色の椅子と机のセットの内一つに座りとセラスは船を漕いでいた。
いつも真面目な彼女らしく無い珍しい姿とその美しい寝顔を見たヘラクスは瞬間、息を飲んだ。
この薔薇園の中であっても全く見劣りせず逆に一際目立つような美しさを放っている様に彼は思えたのだ。

その時、仄かに暖かい風が吹き咲き乱れた薔薇の花弁とその香りを幾つか運んで行った。
赤色、黄色、桃色、青色等虹を思わせる様な色があたりの空間に満ちる。

ヘラクスの足はいつの間にやら動き、顔を微かに伏せながら可愛らしい寝息を立てるセラスの横に立っていた。
セラスの金色の髪に着いた一つの赤い花弁、それにゆっくりと手を伸ばし取り除く。
然し、それにより刺激してしまったのだろう。
セラスはまだ眠そうな半目で顔を起こしヘラクスの事を見た。

そして、次の瞬間セラスの目をぱっちりと見開かれ薔薇のように真っ赤に染まった。

「...ヘラクス!?どうして此処に──」

恐らくは、寝顔を見られた事からの恥じらいだろうか。
何故、ヘラクスがここに居るのかとセラスは問い掛けた。

「あ~えっとまぁ...ちょっと良い店を見つけたので食事に誘おうと思いまして。今からどうです?」

ヘラクスはと言うと一瞬瞳を泳がせ答える言葉を探す時間を稼いだ後に食事に誘おうと思って。と返した。
然し、ヘラクスはその店に入った事すらない。だがセラスを誘いたいが余りにと付け足してしまったのだ。

「今から?ええ、構わないわよ。」

セラスはヘラクスからの提案に対し微かな喜びを心に秘めつつ返答を返した。
他の者よりも洞察力が鋭いヘラクスが気付かぬ程に小さく口の端を緩め、自身の喜びの感情を発散せんとしていた。

「嗚呼、良かった。でしたら行きましょうか此処からならほんの数分で着きますからね。」

さて、対するヘラクスであったが彼は返ってきた前向きな返答に安堵していた。
正直彼はセラスの気を更に損ねてしまうのではとちょっとした恐怖を抱いていたのだ。
然し今はそんな心配など無さそうだ。
ヘラクスは心の中でそう呟き、目の前の椅子に座ったセラスへとそっと完全に無心、反射的に出てしまった手を引こうとした時である。
ヘラクスの手へとセラスのきめ細かで色白な〔綺麗〕と言う言葉が良く似合う手が触れた。
そう、セラスはヘラクスの差し伸べた手を取ったのだ。そこに何も不思議な事は無い、だがヘラクスは驚きを隠せずに居た。
セラスは自分を嫌って居るのでは無いかと、ヘラクスは思っていた。その為、嫌って居る者の手を取ると言う行為に混乱していた。

そして、手に触れてから2秒程フリーズしているヘラクスを不安に思ったのかセラスは小首を小さく傾げながら「大丈夫?」と問い掛けた。
顔を動かすのに連動して動く長く美しい金糸の様な髪の毛、言葉を発する度に動く唇。
それらを見る度にヘラクスの聴覚にドクドクと心音が混じってくる。
この動悸は何だろうと、セラスは口を動かし続けて何かを言っている様に見えるが心臓の音が煩く聞こえない。
そして更に数秒時を置いた後に兎に角店に行かねばと、彼は自分のまともな思考を取り戻しこう声を掛けた。

「すいません、少し取り乱しました。
では行きましょうか。」

彼の美しい宵闇の黒髪とは真逆の太陽かと錯覚させる程の明るい満面の笑み、セラスはそれを見ては満足そうに口を緩め「ええ」と返した。



ヘラクスの挑戦①



---------------------

こんにちは。かはり かはです、この作品では初めてのあとがきですので初めましての方が正しいかも知れませんね。
さて、そんなことは置いておき今回のお話は如何でしたでしょうか?
これから始まるヘラクス君の仲直り(?)の為の挑戦、お楽しみに!
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が

和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」 エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。 けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。 「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」 「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」 ──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。

〖完結〗終着駅のパッセージ

苺迷音
恋愛
分厚い眼鏡と、ひっつめた髪を毛糸帽で覆う女性・カレン。 彼女はとある想いを胸に北へ向かう蒸気機関車に乗っていた。 王都から離れてゆく車窓を眺めながら、カレンは振り返る。 夫と婚姻してから三年という長い時間。 その間に夫が帰宅したのは数えるほどだった。 ※ご覧いただけましたらとても嬉しいです。よろしくお願いいたします。

狼隊長さんは、私のやわはだのトリコになりました。

汐瀬うに
恋愛
目が覚めたら、そこは獣人たちの国だった。 元看護師の百合は、この世界では珍しい“ヒト”として、狐の婆さんが仕切る風呂屋で働くことになる。 与えられた仕事は、獣人のお客を湯に通し、その体を洗ってもてなすこと。 本来ならこの先にあるはずの行為まで求められてもおかしくないのに、百合の素肌で背中を撫でられた獣人たちは、皆ふわふわの毛皮を揺らして眠りに落ちてしまうのだった。 人間の肌は、獣人にとって子犬の毛並みのようなもの――そう気づいた時には、百合は「眠りを売る“やわはだ嬢”」として静かな人気者になっていた。 そんな百合の元へある日、一つの依頼が舞い込む。 「眠れない狼隊長を、あんたの手で眠らせてやってほしい」 戦場の静けさに怯え、目を閉じれば仲間の最期がよみがえる狼隊長ライガ。 誰よりも強くあろうとする男の震えに触れた百合は、自分もまた失った人を忘れられずにいることを思い出す。 やわらかな人肌と、眠れない心。 静けさを怖がるふたりが、湯気の向こうで少しずつ寄り添っていく、獣人×ヒトの異世界恋愛譚。 [こちらは以前あげていた「やわはだの、お風呂やさん」の改稿ver.になります]

【完結】リゼットスティアの王妃様

通木遼平
恋愛
 リゼットスティアという美しく豊かな国があった。その国を治める国王も美しいと評判で、隣国の王女フィロメナは一度でいいから彼に会ってみたいと思い、兄である王子についてリゼットスティアに赴く。  フィロメナはなんとか国王にアピールしようとするが国王にはすでに強引に婚姻に至ったと噂の王妃がいた。国王はフィロメナに王妃との出会いを話して聞かせる。 ※他のサイトにも掲載しています

【書籍化】番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました

降魔 鬼灯
恋愛
 コミカライズ化決定しました。 ユリアンナは王太子ルードヴィッヒの婚約者。  幼い頃は仲良しの2人だったのに、最近では全く会話がない。  月一度の砂時計で時間を計られた義務の様なお茶会もルードヴィッヒはこちらを睨みつけるだけで、なんの会話もない。    お茶会が終わったあとに義務的に届く手紙や花束。義務的に届くドレスやアクセサリー。    しまいには「ずっと番と一緒にいたい」なんて言葉も聞いてしまって。 よし分かった、もう無理、婚約破棄しよう! 誤解から婚約破棄を申し出て自制していた番を怒らせ、執着溺愛のブーメランを食らうユリアンナの運命は? 全十話。一日2回更新 完結済  コミカライズ化に伴いタイトルを『憂鬱なお茶会〜殿下、お茶会を止めて番探しをされては?え?義務?彼女は自分が殿下の番であることを知らない。溺愛まであと半年〜』から『番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました』に変更しています。

【完結】微笑みを絶やさない王太子殿下の意外な心の声

miniko
恋愛
王太子の婚約者であるアンジェリクは、ある日、彼の乳兄弟から怪しげな魔道具のペンダントを渡される。 若干の疑念を持ちつつも「婚約者との絆が深まる道具だ」と言われて興味が湧いてしまう。 それを持ったまま夜会に出席すると、いつも穏やかに微笑む王太子の意外な心の声が、頭の中に直接聞こえてきて・・・。 ※本作は『氷の仮面を付けた婚約者と王太子の話』の続編となります。 本作のみでもお楽しみ頂ける仕様となっておりますが、どちらも短いお話ですので、本編の方もお読み頂けると嬉しいです。 ※4話でサクッと完結します。

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...