Knight&Gunner

かはり かは

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第1話 サービス開始

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6限目の授業を受ける2-3の教室。
教師が黒板にチョークで文字を書く心地好い音が教室内に響いている。
週末に近いからか、皆疲れが溜まり眠そうにしている昼下がりの古典の授業。
窓側から縦に2列目の前から3番目の席に座る⟬崎田 悠真さきだ ゆうま⟭と4番目の席に座るその親友⟬木浪 健哉きなみ けんや⟭は暖かな昼の太陽を受けつつも必死にノートを取っていた。
何故、彼らがここまで頑張っているのか。
彼らが古典を好きだから?
─否
今日が彼らが1年ほど前から楽しみにしていたゲーム[ナイトメア・N/G]のサービスが開始するからである。今まで1度もβテストやPVによるゲーム内容の告知等も行われなかった異質な謎のゲーム。
ゲーム業界中から多大な注目を集めている今最もホットなゲームである。
予約受付が開始された瞬間から予約を入れた熱狂的なゲームプレイヤーである2人の心は今、通じ合っていた。
「「早く学校終われ!!」」
「「ゲームやりたい!!」」
完璧なシンクロである。
そして、その日の授業が終わり帰りのHRを終えてからの彼らの動きは文字通り“神速”であった。
廊下を高速の早歩きで歩き1番に校門を出ては2人で共に走って駅へ向かい電車に乗り家の最寄り駅の構内にあるコンビニで大量のエナジードリンクを買い占め家への分かれ道で解散。
ここまでに掛かった時間は13分。いつもは25分程掛けているのだからその速度はよく分かるだろう。
双方が家に帰った頃には時刻は間もなく18時45分と言う頃であった。
ここまでは2人の計画通りである。
後はお風呂に入り食事を済ませエナジードリンク片手に23時からの公式生放送を見て24時からのサービス開始に備えるのみである。
帰宅してから23時までは彼らにとってほんの一瞬であった。何かを待つ時間は長く感じると言うがそんな事は無かったようである。
公式生放送の告知は終わりネットは大賑わいを見せている。
同接35万人と言う凄まじい記録を残しつつ遂にサービス開始のカウントダウンが始まる。配信開始前にフルダイブ専用ゲーム機⟬LifeSafe⟭通称⟬L・S⟭の機器設定は終えている。後は装着しサービス開始を待つのみ。
2人の鼓動は高まる。
カウントダウンが1分を切りL・Sを装着する。
耳が塞がれ神経が現実からカットされて仮想現実へと入ってく感覚。その感覚に慣れ心地良いとも感じる様になってしまった2人はゆっくりと目を閉じ神経接続を受け入れて行く。
─そして、24時。その時は来た。
恒例行事、ソフト起動の連打が始まるがその必要な無かった。1発で入る事が出来たのだ。
これも、今まで貯めてきた徳のお陰だろうか。
さぁ、ログイン開始である。
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