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ダンジョンウォー
旅立ちの前に
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気がつくと、知らない部屋のベットに寝かされていた。窓の外を見ると、まだ薄暗い。今何時くらいだろうか、どれくらい寝ていたんだろうか。すごい喉の渇きを感じたので、俺は部屋を出て飲み物を探した。
そうか・・まだランティークの屋敷にいたんだ・・
ぶらぶら歩いていると、飲み水用のツボを見つけた。置いてあった柄杓で水をすくい口に運んだ。喉も潤ったことだし、部屋に戻り、もう一眠りしようかと思っていると、少し強い風が吹き抜ける。見るとバルコニーだろうか、屋外へ出る扉が開かれていた。気になったので少しそこから外に出てみることにした。
バルコニーに出てみると、そこに置かれたテーブルの上で、ニャン太が夜空を見上げて立っていた。
「ニャン太、何してるの」
俺が声をかけると、ニャン太は夜空を見上げたまま、神妙な雰囲気で答えてくれる。
「見てごらん、二つの月がもうすぐ重なり合う。あれが完全に重なるとルーン新月になるんだ」
恥ずかしいことに、俺は今まで夜空を真剣に見ていなかったのか、この世界は月が二つあるってことに気がついてなかった。
「じゃあ、そろそろ絶対解呪に向かう時期なんだね。でもどうしてそんな浮かない顔をしてるの?」
「神獣にはね、少しだけ未来を感じとる能力があるんだ。それが警告を発しているんだよ・・何か嫌な感じがする・・」
「絶対解呪が失敗するってこと?」
「わからない・・でも何か悪いことが起こると思う。それはもしかしたら・・」
そこでニャン太の言葉が止まる。
「どうしたのニャン太」
「いや・・これは予知でもないし、必ずそうなるとは限らないから・・今は悪いことは考えない方がいいね、ごめん、忘れてくれ紋次郎」
そう言ってニャン太はまた夜空を見上げる。それは暗い未来だけではなく、明るい未来も見つけようとしているように、真剣な眼差しだった。
★
人気のない暗い酒場、その奥にある特別な部屋で、ダンジョンギルドのマスターであるズオルドは、一人の人物を待っていた。しばらくすると、ローブを深く被った性別不明の人物が現れる。その人物はズオルドの前に座り、テーブルに持っていたカゴをそこに置いた。すぐにズオルドが会話を進める。
「すまないエミロ、紋次郎の件だがうまくいかなかった」
「知っている。お前らしくなかったなズオルド」
「神獣フェルキーを従えているとの情報は得ていたが、それ以外の戦力もあれほどとは想像していなかった」
神獣フェルキー、それはニャン太のことであるが、ズオルドはそれさえ押さえておけば、あとは大した戦力ではないと思っていた。しかし、蓋を開けてみれば英雄級ミュラーナを始め、多くの超戦力を有する集団であった。
「まあ、仕方ない、それはもういい。別に新しいプランが動き出している。そちらの方が我々にとって都合が良さそうだ」
「プラン? それはなんだ」
「紋次郎たちは近いうちにオヴルの空中城に向かうことがわかっている。しかも我らが必要としているアイテムを持ってな。都合のいいことに、あそこなら何をしても大抵のことは外部に漏れない。見られては困る戦力も投入できるというものだ」
「それでも紋次郎のところには神獣フェルキーやミュラーナがいるのだぞ、あの強力な戦力を倒せるのか?」
「今回は私が直接指揮をとる予定だ。直属の部下も連れて行く。まず失敗はありえないだろう」
「エミロ、君が直接動くなら確かに失敗はないだろう。それにしても、そうなると君と神獣フェルキーの勝負が見ものだな、わしもその戦いを見るためだけに同行しようかのう」
「ズオルド、お前でもそんな冗談を言うんだな」
「ふふふっ、言いたくもなるだろう。神獣同士の戦いなど滅多に見れるもんじゃない」
エミロはズオルドのその話に応えることはなかった。エミロにとっても同族との戦いは初めてであった、それは他の種族との戦いとは別次元の話であり、感慨深いものであった。
そうか・・まだランティークの屋敷にいたんだ・・
ぶらぶら歩いていると、飲み水用のツボを見つけた。置いてあった柄杓で水をすくい口に運んだ。喉も潤ったことだし、部屋に戻り、もう一眠りしようかと思っていると、少し強い風が吹き抜ける。見るとバルコニーだろうか、屋外へ出る扉が開かれていた。気になったので少しそこから外に出てみることにした。
バルコニーに出てみると、そこに置かれたテーブルの上で、ニャン太が夜空を見上げて立っていた。
「ニャン太、何してるの」
俺が声をかけると、ニャン太は夜空を見上げたまま、神妙な雰囲気で答えてくれる。
「見てごらん、二つの月がもうすぐ重なり合う。あれが完全に重なるとルーン新月になるんだ」
恥ずかしいことに、俺は今まで夜空を真剣に見ていなかったのか、この世界は月が二つあるってことに気がついてなかった。
「じゃあ、そろそろ絶対解呪に向かう時期なんだね。でもどうしてそんな浮かない顔をしてるの?」
「神獣にはね、少しだけ未来を感じとる能力があるんだ。それが警告を発しているんだよ・・何か嫌な感じがする・・」
「絶対解呪が失敗するってこと?」
「わからない・・でも何か悪いことが起こると思う。それはもしかしたら・・」
そこでニャン太の言葉が止まる。
「どうしたのニャン太」
「いや・・これは予知でもないし、必ずそうなるとは限らないから・・今は悪いことは考えない方がいいね、ごめん、忘れてくれ紋次郎」
そう言ってニャン太はまた夜空を見上げる。それは暗い未来だけではなく、明るい未来も見つけようとしているように、真剣な眼差しだった。
★
人気のない暗い酒場、その奥にある特別な部屋で、ダンジョンギルドのマスターであるズオルドは、一人の人物を待っていた。しばらくすると、ローブを深く被った性別不明の人物が現れる。その人物はズオルドの前に座り、テーブルに持っていたカゴをそこに置いた。すぐにズオルドが会話を進める。
「すまないエミロ、紋次郎の件だがうまくいかなかった」
「知っている。お前らしくなかったなズオルド」
「神獣フェルキーを従えているとの情報は得ていたが、それ以外の戦力もあれほどとは想像していなかった」
神獣フェルキー、それはニャン太のことであるが、ズオルドはそれさえ押さえておけば、あとは大した戦力ではないと思っていた。しかし、蓋を開けてみれば英雄級ミュラーナを始め、多くの超戦力を有する集団であった。
「まあ、仕方ない、それはもういい。別に新しいプランが動き出している。そちらの方が我々にとって都合が良さそうだ」
「プラン? それはなんだ」
「紋次郎たちは近いうちにオヴルの空中城に向かうことがわかっている。しかも我らが必要としているアイテムを持ってな。都合のいいことに、あそこなら何をしても大抵のことは外部に漏れない。見られては困る戦力も投入できるというものだ」
「それでも紋次郎のところには神獣フェルキーやミュラーナがいるのだぞ、あの強力な戦力を倒せるのか?」
「今回は私が直接指揮をとる予定だ。直属の部下も連れて行く。まず失敗はありえないだろう」
「エミロ、君が直接動くなら確かに失敗はないだろう。それにしても、そうなると君と神獣フェルキーの勝負が見ものだな、わしもその戦いを見るためだけに同行しようかのう」
「ズオルド、お前でもそんな冗談を言うんだな」
「ふふふっ、言いたくもなるだろう。神獣同士の戦いなど滅多に見れるもんじゃない」
エミロはズオルドのその話に応えることはなかった。エミロにとっても同族との戦いは初めてであった、それは他の種族との戦いとは別次元の話であり、感慨深いものであった。
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