ジリ貧迷宮主が教える──ハーレムダンジョンの作り方

RYOMA

文字の大きさ
91 / 200
ダンジョンウォー

旅立ちの前に

しおりを挟む
気がつくと、知らない部屋のベットに寝かされていた。窓の外を見ると、まだ薄暗い。今何時くらいだろうか、どれくらい寝ていたんだろうか。すごい喉の渇きを感じたので、俺は部屋を出て飲み物を探した。

そうか・・まだランティークの屋敷にいたんだ・・

ぶらぶら歩いていると、飲み水用のツボを見つけた。置いてあった柄杓で水をすくい口に運んだ。喉も潤ったことだし、部屋に戻り、もう一眠りしようかと思っていると、少し強い風が吹き抜ける。見るとバルコニーだろうか、屋外へ出る扉が開かれていた。気になったので少しそこから外に出てみることにした。

バルコニーに出てみると、そこに置かれたテーブルの上で、ニャン太が夜空を見上げて立っていた。

「ニャン太、何してるの」
俺が声をかけると、ニャン太は夜空を見上げたまま、神妙な雰囲気で答えてくれる。
「見てごらん、二つの月がもうすぐ重なり合う。あれが完全に重なるとルーン新月になるんだ」

恥ずかしいことに、俺は今まで夜空を真剣に見ていなかったのか、この世界は月が二つあるってことに気がついてなかった。
「じゃあ、そろそろ絶対解呪に向かう時期なんだね。でもどうしてそんな浮かない顔をしてるの?」
「神獣にはね、少しだけ未来を感じとる能力があるんだ。それが警告を発しているんだよ・・何か嫌な感じがする・・」
「絶対解呪が失敗するってこと?」
「わからない・・でも何か悪いことが起こると思う。それはもしかしたら・・」
そこでニャン太の言葉が止まる。
「どうしたのニャン太」
「いや・・これは予知でもないし、必ずそうなるとは限らないから・・今は悪いことは考えない方がいいね、ごめん、忘れてくれ紋次郎」

そう言ってニャン太はまた夜空を見上げる。それは暗い未来だけではなく、明るい未来も見つけようとしているように、真剣な眼差しだった。


人気のない暗い酒場、その奥にある特別な部屋で、ダンジョンギルドのマスターであるズオルドは、一人の人物を待っていた。しばらくすると、ローブを深く被った性別不明の人物が現れる。その人物はズオルドの前に座り、テーブルに持っていたカゴをそこに置いた。すぐにズオルドが会話を進める。

「すまないエミロ、紋次郎の件だがうまくいかなかった」
「知っている。お前らしくなかったなズオルド」
「神獣フェルキーを従えているとの情報は得ていたが、それ以外の戦力もあれほどとは想像していなかった」

神獣フェルキー、それはニャン太のことであるが、ズオルドはそれさえ押さえておけば、あとは大した戦力ではないと思っていた。しかし、蓋を開けてみれば英雄級ミュラーナを始め、多くの超戦力を有する集団であった。

「まあ、仕方ない、それはもういい。別に新しいプランが動き出している。そちらの方が我々にとって都合が良さそうだ」
「プラン? それはなんだ」
「紋次郎たちは近いうちにオヴルの空中城に向かうことがわかっている。しかも我らが必要としているアイテムを持ってな。都合のいいことに、あそこなら何をしても大抵のことは外部に漏れない。見られては困る戦力も投入できるというものだ」
「それでも紋次郎のところには神獣フェルキーやミュラーナがいるのだぞ、あの強力な戦力を倒せるのか?」
「今回は私が直接指揮をとる予定だ。直属の部下も連れて行く。まず失敗はありえないだろう」
「エミロ、君が直接動くなら確かに失敗はないだろう。それにしても、そうなると君と神獣フェルキーの勝負が見ものだな、わしもその戦いを見るためだけに同行しようかのう」
「ズオルド、お前でもそんな冗談を言うんだな」
「ふふふっ、言いたくもなるだろう。の戦いなど滅多に見れるもんじゃない」

エミロはズオルドのその話に応えることはなかった。エミロにとっても同族との戦いは初めてであった、それは他の種族との戦いとは別次元の話であり、感慨深いものであった。

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  ブックマーク・評価、宜しくお願いします。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。 ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

処理中です...