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私の主人、寝ている間に薬を飲まされる

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ペルソンは私の目の前に来て続けます。
「とはいえ、もう指一本動かないかな?」
「何故、こんなことを。領主の息子にこのようなことをするなんて、ただでは済みませんよ」
「ははっ!私はグランメションの領民ではないからね。先々代とは『契約』をしてここにいるんだ。私はここを守る、その代償としてここに人間を立ち入らせないという約束さ。それに人間ごときがエルフである私に何が出来ると言うんだ」
人間を入らせない?
しかし、プランの話では隣国から人が来ているという……。だめです、頭が朦朧としています。
この吹雪なのか靄のようなものが人間をここに入れない用にするため意図的に撒かれた毒か何かですかねーーはたまたこの妙なエルフの魔法でしょうかね。
とすると、父上がイリクサを渡したのはこのためだったのでしょうか。
とにかく、毒なら早く解毒させなくては。

私はしまっておいたイリクサを鞄から出そうと、手探りで鞄の蓋を開けようともがきました。
「まだ動けるんだ。ふぅん・・・、君、ガスピアージェの縁者の家から養子に入ったの?」
突然何意味の分からない事を。
「それで何を出そうとしてるのかな?」
「ぅあっ」
私が手を入れていた鞄をひったくると、糞エルフはその中からイリクサを見つけてしまいました。
「うわぁ、イリクサじゃない。ひっさびさに見たなぁ。ーーこれは君の父親が作ったものかい?こんな貴重な物を躊躇いもせず使おうとするなんて」
「シニフェ様…へ」
「しかも自分にじゃなくって、まず主に飲ませるって?すっごいねぇ、なんで?これ高いんだよ?というか、多分、今の国内じゃ君の父親しか作れないよ。まず自分を治してから考えなよ」
馬鹿げた事をそんな優先順位を考えるまでもありません。
「かえしなさ、い」
「ふぅん、別にいいけど」
愚劣なエルフは荒っぽく奪い取った割にはあっさりと私の手にイリクサを渡してきました。その上「どうぞ」とでも言うようにシニフェ様を私の手元へ連れてきて横たわらせました。
まるで『飲ませたいのならどうぞご自由に』と言うように。
その行動を訝しみながらも、まずは意識がなくなっている2人の毒を消すのが先決と判断しました。
この行動が罠かどうかは薬を飲んでいただいた後に考えれば良いのです。

ゆっくりとその口に薬品を流し込むと、シニフェ様の顔に血の気が戻りました。そしてもう半分をプランに飲ませようと瓶を握りしめて床を這って行くと、再びペルソンが驚きの声を上げました。
「えっ?残りは自分が飲むんじゃないの?!」
このエルフ頭がおかしいのではないでしょうか。
こんなおかしな人と言葉を交わしては頭にウジがわいてしまいます。シニフェ様とプランの意識が戻りましたら早々にお暇して、グラン伯爵にはこの方とのお付き合いを考えるべきだとご報告しましょう。
そしてもう一つやるべきことが増えました。私はこの痴れ者エルフをここから追い出す方法を何年かかってでも見つけ出します。
「お返事はー?ねぇねぇ、何でそんなに献身的なの?君は別に彼等の従者でも奴隷でもないよね?なんでなの?」
すかたんエルフはこともあろうか、意識を手放そうとして横たわる私の体を揺り起こしてきます。止めなさい、毒が余計に回ってしまうでしょう。先ほどのシニフェ様の動かし方も乱暴でしたし、何を考えているんですか。
とりあえずこの頓痴気とんちきエルフの口を、というか手足も拘束する方法をーー

考えなくては......
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