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知らない時間
80:白状する
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予想もしていなかった。フルクトスがまさか監視を担当すると言い出してくれるなんて。
とはいえ彼は塔に囚われている身のはずじゃない。そう思って質問すれば
「囚われてはおりますが、出ようと思えば別に…」
別にって、あなた。
いつの間にか後ろにいるセルブスが震えているように見えるのは、主人が外に出ることへの恐れなのか歓喜なのか、私への怒りだったらどうしましょう。
「セブルスとしては、フルクトス様を外に出すのは賛成できないかしら?」
「とんでもございません!皇女様ありがとうございます!これまで長い間、高貴なるお方や私の母、勿論私自身も殿下には外に出ていただきたいと願っていました。しかし、殿下ご自身が外に出ることに全く興味を持っていらっしゃらず」
高貴なる方って、多分王太后よね。成り行きだけど頼まれていたことが少し達成出来ると思えばいいか。
「それでは手はずはアケロンから聞いておいて」
「おや、皇女は小生に面倒事を押し付けて何処へ行くの?」
「アガタとコラーロにもお願いするんだから、私からきちんとこれまでのことを伝えるのが筋でしょう?」
「ーー違いないね。頑張っておいで」
ひらひらと手を振るアケロンは自分は関わらないと明確に線を引いている気がする。
確かに、怒ったアガタ達は手に負えないだろう。けれども、我ながらここまで隠し事をし続けているのも後ろめたい。
巧い伝え方とか考えるのも疲れたのよ。
◆◆◆
「だからといって皇女様、お帰りになって早々の発言としていかがでしょうか!?」
フルクトスの部屋からホールクロックの扉を通ってすぐに私はアガタとコラーロを呼び、前置きもなく言い始める。
『私、半年前に一回処刑されているの。今回は2回目の人生で今度は処刑を回避したいのよね』
私のこんな台詞を聞いた3人はポカーンとしてしばらく黙っていた。
『聞こえなかった?私、前世と言うか人生のやり直しをしているようなのよ。前回はカエオレウムに嫁いで10年後に悪女として処刑されたわ。だから今回は結婚もしたくないし王妃にもならない。その為にこの半年間程は行動をしていたのよ。信じられないと思うけど、信じてもらえると嬉しいーーあなた達なら信じてくれると思って正直に言ってみたわ』
鳩が豆鉄砲に打たれたような顔をしていた3人にだめ押しのようにそう言えば、まずアガタが大きく深呼吸をしてみせた。それからこう言った。
「皇女様、私たちを信じて下さったこと大変名誉に思います。しかし、だからといってお帰りになって早々の発言としていかがでしょうか!?」
「あ、やっぱりアガタが一番始めに反応してくれたわね」
「予想が当たったようで何よりですーーそうではございません。人生のやり直し?処刑??唐突過ぎて全く理解が追いつきません」
「ですってそうとしか思えないのよ。私は本当にカエオレウムに王太子妃として嫁いで王妃になって、それから約10年ぱっとしない人生を送って処刑されたと思ったら、嫁ぐその当日に戻って来ていたのよ」
「100歩譲って戻って来たのだとしましたら、何故わざわざそんな恐ろしいことがあったそんな糞みたいな国にもう一度いらっしゃるのです!ペルラに残れば良かったではないですか!」
アガタがそう叫びに近い音量で言うと、気持ちに整理がついたコラーロが私に近寄って手を握った。
「そうですよ。そんな恐ろしい未来、回避出来るとしても危険過ぎます。ここに来る前に仰って下さればよかったのに…」
「それは出来ないわ。断れば今のペルラでは太刀打ち出来ないもの。だから、私が時間稼ぎをしている間に力を着けてもらわなきゃならないの。勝つことは数年数十年では難しいでしょうけど、すぐに滅亡しないようにしなきゃいけない」
「私たちがお手伝い出来ることはございますか?」
「勿論よ。その為に今この話をさせてもらったのだから」
私がそう言うと、2人の表情が強ばったのが分かった。
とはいえ彼は塔に囚われている身のはずじゃない。そう思って質問すれば
「囚われてはおりますが、出ようと思えば別に…」
別にって、あなた。
いつの間にか後ろにいるセルブスが震えているように見えるのは、主人が外に出ることへの恐れなのか歓喜なのか、私への怒りだったらどうしましょう。
「セブルスとしては、フルクトス様を外に出すのは賛成できないかしら?」
「とんでもございません!皇女様ありがとうございます!これまで長い間、高貴なるお方や私の母、勿論私自身も殿下には外に出ていただきたいと願っていました。しかし、殿下ご自身が外に出ることに全く興味を持っていらっしゃらず」
高貴なる方って、多分王太后よね。成り行きだけど頼まれていたことが少し達成出来ると思えばいいか。
「それでは手はずはアケロンから聞いておいて」
「おや、皇女は小生に面倒事を押し付けて何処へ行くの?」
「アガタとコラーロにもお願いするんだから、私からきちんとこれまでのことを伝えるのが筋でしょう?」
「ーー違いないね。頑張っておいで」
ひらひらと手を振るアケロンは自分は関わらないと明確に線を引いている気がする。
確かに、怒ったアガタ達は手に負えないだろう。けれども、我ながらここまで隠し事をし続けているのも後ろめたい。
巧い伝え方とか考えるのも疲れたのよ。
◆◆◆
「だからといって皇女様、お帰りになって早々の発言としていかがでしょうか!?」
フルクトスの部屋からホールクロックの扉を通ってすぐに私はアガタとコラーロを呼び、前置きもなく言い始める。
『私、半年前に一回処刑されているの。今回は2回目の人生で今度は処刑を回避したいのよね』
私のこんな台詞を聞いた3人はポカーンとしてしばらく黙っていた。
『聞こえなかった?私、前世と言うか人生のやり直しをしているようなのよ。前回はカエオレウムに嫁いで10年後に悪女として処刑されたわ。だから今回は結婚もしたくないし王妃にもならない。その為にこの半年間程は行動をしていたのよ。信じられないと思うけど、信じてもらえると嬉しいーーあなた達なら信じてくれると思って正直に言ってみたわ』
鳩が豆鉄砲に打たれたような顔をしていた3人にだめ押しのようにそう言えば、まずアガタが大きく深呼吸をしてみせた。それからこう言った。
「皇女様、私たちを信じて下さったこと大変名誉に思います。しかし、だからといってお帰りになって早々の発言としていかがでしょうか!?」
「あ、やっぱりアガタが一番始めに反応してくれたわね」
「予想が当たったようで何よりですーーそうではございません。人生のやり直し?処刑??唐突過ぎて全く理解が追いつきません」
「ですってそうとしか思えないのよ。私は本当にカエオレウムに王太子妃として嫁いで王妃になって、それから約10年ぱっとしない人生を送って処刑されたと思ったら、嫁ぐその当日に戻って来ていたのよ」
「100歩譲って戻って来たのだとしましたら、何故わざわざそんな恐ろしいことがあったそんな糞みたいな国にもう一度いらっしゃるのです!ペルラに残れば良かったではないですか!」
アガタがそう叫びに近い音量で言うと、気持ちに整理がついたコラーロが私に近寄って手を握った。
「そうですよ。そんな恐ろしい未来、回避出来るとしても危険過ぎます。ここに来る前に仰って下さればよかったのに…」
「それは出来ないわ。断れば今のペルラでは太刀打ち出来ないもの。だから、私が時間稼ぎをしている間に力を着けてもらわなきゃならないの。勝つことは数年数十年では難しいでしょうけど、すぐに滅亡しないようにしなきゃいけない」
「私たちがお手伝い出来ることはございますか?」
「勿論よ。その為に今この話をさせてもらったのだから」
私がそう言うと、2人の表情が強ばったのが分かった。
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