好感度教育

蝸牛まいまい

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第三章

ひと時の葛藤

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風呂上がりの昼下がり、侑輝は太ももの上の頭を載せていた。侑輝は2つの欲に駆られていた。睡眠欲と性欲である。原因は昨日の夜のことであるのは他でもない。今の侑輝に2つの欲を制御する力は残っていない。当然制御すべきは1つであった。いつも通りの甘い匂い、柔らかい太もも、優しい声と耳かきの音、そして少し荒い息遣い……荒い息遣い?侑輝の耳に「はあ、はあ」と小さく息が聞こえていた。不思議に思った侑輝は、片目でぎりぎり近衛乙月を見た。
「!」
近衛乙月の顔は頬を赤く染め、目は完全に瞳孔が開いている。上がった口角から熱そうな息が漏れていた。侑輝は一瞬、風邪なのかと心配したが、すぐにそうではないことに気が付いた。なぜなら、耳を掻く手つきは完璧であり、震えなどはない、今朝は調子が良さそうだったからだ。
なんだなんだ、何が起こっている。侑輝を見る目は完全に獲物を狙うような獣に他ならなかった。侑輝は一瞬にして頭にイメージが浮かんだ、蛇に巻き付かれた蛙。
「近衛さん」
「どうしましたか?」
「ど、どんな感じ?」
「そうですね、3日間やっていないだけあっていつもより多い気がします。今日は少し長めにしますね」
「お、お願いします」
「はい」
顔とは裏腹に声は冷静で優しく落ち着いている。いつの間にか納まっていた性欲に安堵しながら、侑輝は少し緊張で脈が速くなる。しかし、それを抑えるかのように耳かき棒がつついてくる。耳かきは今では大きな進化を遂げていた。耳のマッサージから始まり、竹の耳かき棒、綿棒、そして近衛乙月の指、最後に息。時間がない時はいくつか省く場合があるが、一つ一つがゆっくり丁寧であるため全部済ませるまでに1時間は費やしている。基本的に侑輝の意識が無くなるのは、顔を近衛乙月へ向けているときに指を入れられる場合であった。以前までは竹の耳かきだったが、これでも耐性がついたのである。しかし、今回は睡眠欲が大きく勝っていたのか、緊張を凌駕し、綿棒中に意識を失う。侑輝が最後に見たのは、にやりと笑う近衛乙月の顔であった。

「… … …」
甘い匂いに包まれながら侑輝は眠りから覚めた。ベッドの上か…。目はなかなか開こうとしないため、触感、嗅覚、聴覚をフルに活用する。恐らくは、いつも通り耳かきの後、近衛乙月によってベッドで寝ていたのだろう。突然、嗅覚がシャットアウトする。
「…!」
遅く回転する頭を使って状況を把握する。顔に柔らかいものが当たっている。これは今まで何回かあったが、恐らく近衛乙月の胸である。
しかし…
「!!」
いつもと違う。侑輝の顔には布ではなく肌が触れていた。すぐに侑輝は無理矢理に目を開けた。ぼやける視界が鮮明になりながら輪郭線がしっかりと見えてくる。今にも消えそうな赤い日の光が裸で寝ている近衛乙月を差していた。
「こ、近衛さん」
第一印象…至高の美しさとエロティシズム。2つの大きな突起物から生える小さな突起物は綺麗なピンク色をしており、締まった腹の下のヒップは実った桃のように大きい。以前から近衛乙月のボディの究極美については予想していたが、本物は予想以上にすごかった。
「はっ!だめだ」
しかし、時すでに遅し。男性特有の寝起きの元気に更にブーストが掛かってしまった。侑輝は右手を少し伸ばそうとしてすぐに引いた。それは侑輝にとって近衛乙月が大事であるが故の抑制。侑輝の下半身は人生最大の臨戦態勢であったが、本能に逆らって後ろを向いた。その時である。侑輝の右腕はすごい力で引かれた。
突然のことに混乱した侑輝はいつの間にか、天井を向いていた。
「え?」
すぐに視界の中に裸の女性が映る。目の前には男性を引き付けるであろう2つの大きな実。
「ちょっ、こ、近衛さん!?起きてたの?」
「してくれないんですか?」
「え?」
「私ずっと我慢しているんですよ?」
耳かきをしていた時と同じように、目の光はなくなり瞳孔が開いている。頬は赤く息遣いは荒い。近衛乙月は誘うように侑輝の服に手を入れ、身体を触る。
「おう、い、いやでもこういうのは、ひと時の感情でするのは…」
「ダメなんですか?」
「ダメ…だと思う。こういうことは結婚する相手と…」
侑輝は目の前のほてった近衛乙月を見ながら溢れんばかりの本能を抑えていた。気を抜いたら胸に手を伸ばしそうなのである。
「私、侑輝さん以外とはしたくありませんよ?」
「え、それは俺も…そうだけど」
近衛乙月の告白に侑輝の顔は赤くなる。
「ならしてもいいのではないでしょうか」
「そう、かもしれないけど………けど……避妊具とか持ってないし…」
「それなら心配いりません」
「え?」
「もう服用してあります」
「え…そういうのって副作用とかあるんじゃないの?」
「そうですね、少しはあるかもしれません。今しなければ副作用だけ効いて終わりますね」
侑輝の心が大きく揺れる。すでに蓋から泡がふくように本能がパンクしようとしていた。近衛乙月の「はあ、はあ」という息遣いに呼応するように侑輝の息遣いも荒くなる。当然、下半身は暴れたいと動いていた。今しなければ副作用だけが…。無駄になってしまう。視界と頭がぐるぐると葛藤する。
「おうっ?」
突然、下半身に細い指がまとわりつく。
「さあ、始めましょう」
結局、侑輝の本能の蓋は近衛乙月の最後の言葉で吹っ飛んでしまったのである。

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