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3章 主人との日々
幼馴染
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「シュン!」
バタンと扉を開け降りやまぬ雨の中、恭子はいつもと違った血相でやってきた。
「シュン!お母さんが亡くなったって聞いたわ!大丈夫・・・なの?」
目の前にいたのは抜け殻のようになった幼馴染だった。目は虚ろで力なくベッドに座っている。すぐそばにはラナン、そして窓の外を見つめるマシロ。
「きょうこ・・・」
「聞いたわ!お母さんが・・・」
「ああ・・・恭子は誰に・・・」
途端に幼馴染は首に手を当て困った顔をした。
きっと恭子も峻矢の母とは仲が良く悲しんでいるんだろう。
「え?えっと・・・そ、そんなことより大丈夫なの?」
「ああ・・・」
しかし傍にいるラナンが持っているスプーンがそれを虚言であることを物語っていた。
恭子はゆっくりと近づくとベッドに座った。
「シュン、元気だして・・・
シュンがそんなんじゃお母さんきっと悲しむわ・・・
大丈夫、私もいるわ・・・シュン。
簡単に元気になるなんて無理だろうけど・・・きっと大丈夫。」
「・・・ありがとう、・・・ありがとう」
なぜか涙がまたあふれ出した。
落ちてくる涙を止めるためにそっと弱った体を抱きしめる。
しかし、栓をしようと力を込めれば込めるほどに潰されていくスポンジのように
涙はあふれる。
「明日も来る・・・」
そう残して彼女は寝室を後にした。
何故か、寝室の向こうからは軽い足音が聞こえていた・・・
あれからどれほど経っただろうか・・・
峻矢にとっては今もなお母親が死んだのは先ほどのようなものであったが
カレンダーの数字はもう1月ほど多くなっていた。
しかし峻矢も少しずつではあるが落ち着きを取り戻していた。
毎日来る明るい明るい女の子のおかげで・・・
「シュン!元気?」
「おう、元気だ。」
スプーンを自らの手で運ぶ姿を見て恭子は少し安心した表情を見せる。
「そろそろ、小説も再開したら?」
「ああ、そうだな。」
「あとシュン」
「なんだ?」
「シュンは・・・もう家族はいないけど・・・作ることはできると思うんだけど・・・」
「う、うん」
「シュンのお母さんとは私も仲が良かったけど・・・
その・・・お母さんもシュンが落ち着いたら喜ぶと思うの・・・」
幼馴染は恥ずかしいのか顔を伏せ、声を震えさせている。
「そう・・・かもな・・・」
(母さんも俺が恭子と一緒だったら・・・喜ぶだろうか・・・)
峻矢は隣の幼馴染を見ながら母親の喜んだ様子を想像した。
・・・
・・・
「マシロ・・・少し話があります・・・」
「・・・」
バタンと扉を開け降りやまぬ雨の中、恭子はいつもと違った血相でやってきた。
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「きょうこ・・・」
「聞いたわ!お母さんが・・・」
「ああ・・・恭子は誰に・・・」
途端に幼馴染は首に手を当て困った顔をした。
きっと恭子も峻矢の母とは仲が良く悲しんでいるんだろう。
「え?えっと・・・そ、そんなことより大丈夫なの?」
「ああ・・・」
しかし傍にいるラナンが持っているスプーンがそれを虚言であることを物語っていた。
恭子はゆっくりと近づくとベッドに座った。
「シュン、元気だして・・・
シュンがそんなんじゃお母さんきっと悲しむわ・・・
大丈夫、私もいるわ・・・シュン。
簡単に元気になるなんて無理だろうけど・・・きっと大丈夫。」
「・・・ありがとう、・・・ありがとう」
なぜか涙がまたあふれ出した。
落ちてくる涙を止めるためにそっと弱った体を抱きしめる。
しかし、栓をしようと力を込めれば込めるほどに潰されていくスポンジのように
涙はあふれる。
「明日も来る・・・」
そう残して彼女は寝室を後にした。
何故か、寝室の向こうからは軽い足音が聞こえていた・・・
あれからどれほど経っただろうか・・・
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「そう・・・かもな・・・」
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・・・
・・・
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