主従の逆転関係

蝸牛まいまい

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3章 主人との日々

反発

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『シュン、シュン、ねえシュン。』

子犬のように吠えている。

『なんだよ恭子』

めんどくさそうに答える幼馴染。

『シュンはなんで小説家になりたいの?』
『なんでだろうな・・・まあ物語作るのも好きだし。』
『ふ~ん。シュンがやるなら私もなろうかな~』
『お前には無理だろうな』
『なにおー!!』

憤ってぷっくり膨れた頬を見せたものの目は笑っていた。






(ここは・・・)

目を開けるといつもと違う天井があった。
ほんの少し寒い。
しかし場所は違うがベッドに違和感はない。
状況を確認するために起き上がろうとすると手足が思うように動かない。

「は?!」

横目で周りを確認すると暗い天井、そしてどこかで見たことのある赤茶色の手形のペンキのついた壁。

(地下室・・・)

そこはマシロが以前に閉じ込められていた地下室だった。
しかし若干の違いはある。
ベッドも含め、いくつかの家具が持ち込まれ、地下室には新しい扉がある。

そしてベッドの上には手足に繋がれた手錠と足枷。



誰がしたかなんということは考えるまでもなかった。

(少しやりすぎだろう!!)

「ラナン!」

ガチャリという音と重い扉の開く音がする。

「おはようございます、峻矢様。お食事の用意はできています。」

ラナンは食事を片手にいつもと変わらない様子できた。

「ラナン!これはどういうことだ!!!」
「はい?」

ラナンはいつものように冷静な様子で特に何も気にしてない。

「ああ申し訳ありません、少し緩めないと食事もできませんね。」

ラナンはベッドの近くにある机の上に食事をそっと置くと足枷を緩めた。

「ラナン!なんでこんなことを」
「お食事をしてもらうためです。」

ラナンは飽くまでもとぼけるつもりらしいのか態度を改める様子はなかった。

「違う。どうして手錠と足枷までして閉じ込めるんだ。」
「・・・」

落ち着きながらスープを掬い口元に運ぶ。
「ラナン、答えて」





「・・・あの女はいけません。」

低いうなるような声、明らかに敵意の持った声だった。

「・・・恭子のことか?」
「私たちは恭子様と峻矢様は結婚すべきでないと考えました。
峻矢様を恭子様にお会いさせるわけにはいきません。
峻矢様が恭子様に二度と会わないとおっしゃってくださるのであれば
手錠と足枷を外します。」


「・・・俺は恭子を・・・愛してるんだよ・・・
だからこそ2人には昨日も話したじゃないか・・・」

ラナンは口元まで運んだスプーンをゆっくりと戻した。
地下室が暗いせいか目は光を失い、握った手はかすかにふるえていた。

「・・・・・・悪いんです。」
「ラナン」
「峻矢様が悪いんです!!

どうしてあんな女を好きになるのですか!
峻矢様には私とマシロがいるじゃないですか!
峻矢様は私たちを愛してくださればいいのです!
峻矢様には私たちさへいればそれでいいのです!
私たちはこんなに峻矢様を愛しているのに!!!
どうして!どうしてあんな女のことを・・・」

ラナンの声は地下室の中を反射して共鳴し大きく大きくなった。

(今のラナンは正気を保ってないんだ!)

「ラナン・・・恭子は悪い奴じゃないんだ。
確かに少し強引なところもあって我儘だけど
心の優しい奴なんだって!」

ラナンは突然怒ったと思うと、また突然不気味な笑みを浮かべる。

「峻矢様はわかっていらっしゃらないのです。
大丈夫です、ええ問題ありません。
きっと峻矢様もわかってくれます。
もう少し待っていてください。
峻矢様は私たちを愛してくれればいいのですから・・・」

(もうだめだ・・・ラナンは・・・)

「外せラナン・・・今すぐ外すんだ」
「お食事が冷めてしまいます、早く食べましょう。」
「ご飯はいらん、外せ!」
「いらないのですか?
それでは片手だけ手錠を外しておくので召し上がりたいときに召しあがってください。」
「外せ!ラナン」
「トイレに行きたいときはおっしゃってくださればいいですよ。」
「外せ!」
「それでは何かあったらよんでくださればすぐに行きます。」
「はずせ!!」




ラナンは一礼すると地下室を後にした・・・















どうして・・・こんなことを・・・
いくら結婚が嫌だと言ってもこれはひどすぎる。
恭子は俺をからかいもするが、心の中ではしっかり心配してくれるいい奴なんだ・・・
ラナン 
マシロ
どうしてこんなことをするんだ・・・
あいつは沈んでいた俺をいつも元気づけようとしてくれた心の優しい奴なんだ・・・
クソ!

恭子ならきっと助けてくれるはずだ・・・
あいつなら異変に気づくはずだ・・・
きっと















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