【仮題】VRMMOが世界的競技になった世界 -僕のVR競技専門高校生生活-

星井扇子

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新時代を垣間見る一人として

【09-07】スカイラン

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 スカイラン。それは純粋に速さを競い合う競技、では無い。
 スタートの合図あればそこからはバーリトゥード。すなわち、なんでもありの戦いが始まる。

 今年、日本から出場する選手は二人。
 各国が推薦できる選手の数は三人までだが、日本はスカイランに出場できると認められた選手が二人しかいなかったため、出場選手は二人なのだ。これは日本が決めたことだ。
 三人まで出せるなら三人出せよと思う人も多いだろうし、大会が終わった後の掲示板でもこの話題が出るのは必至だ。しかし、日本選手団としては勝てない選手を出場させるメリットよりはデメリットの方が大きいと判断したのだ。

 メリットは単純に経験を積める。
 デメリットは単純に出場が無駄になること。

 今年の大会選手を選考する上で、今年の大会に出場させる選手、出場させたい選手の元には選手団のスタッフが話を持ちかけていた。僕の場合は矢澤コーチだ。
 出場させたい選手。それは当然勝てる可能性が高いプレイヤー。
 出場させる選手。それは過去に結果を出してきた選手。
 今年出場する二人は共に前者と後者二つの要素を併せ持っている。

 では、この二人以外に誰かいるだろうか。その話し合いは大いに迷走したと聞いた。何人かの候補ば出たけど、決定までには至らなかった。大会に出場させることは出来ても結果は期待できない。その選手たちを出して今後彼らが成長して一線級のプレイヤーになる見込みもない。これはゲームだからこその特徴かもしれない。ゲーム感覚でスピードランをしている選手は自分のタイミングで勝手に引退してしまうから。それに、明らかな捨て駒を出場させるのはマナー的にもよくない。

 今年スカイランに参加する選手は我らがVR高校の星である緒方選手ともう一人。
 彼は猫系の獣人アバターを使う選手である。獣人系のアバターを使う選手はスカイランに置いて多いと言える。獣人は基本的に身体能力にスペックのリソースが振られていることが特徴。その元となる動物を替えることでバランスのいい特化型を作ることが出来る。スカイランだけでなく一般的なプレイヤーにもネット上では特化型を作る際の一例として獣人種を紹介されている。獣人種はハーフブラッドというカテゴリの種族でヒューマンの特徴を継いでいるからバランスが良くなる。ヒューマン種の特徴がバランスがいいことだから混ぜ合わせたらバランスよくなるのは妥当と言えば妥当だ。

 AWの獣人種は人間の体に尻尾と耳、あとは爪とか牙が加わったタイプで、顔が犬や猫になるわけではない。そう言ったタイプの獣人が作りたい場合はキメラ種を選べばいい。キメラ種もヒューマン種をベースにしているから獣人と同じような見た目は作れるし、能力を酷似させることが出来る。しかし、それは獣人を真似た、いわば、贋作でしかない。獣人は設定上だと、キメラ種として今の獣人に酷似したキメラ獣人とヒューマンとのハーフがうまく定着した新種族。その定着する過程でキメラとしての不安定な要素が消えてヒューマンとしての安定性へと変じたという設定だ。

 長々と説明したが、このバランスがいいというのもすごく競技向きになる。競技の種目は選べても試合内容は選べない。自分と相性の悪い敵やステージと当たった時、選手が望むのは尖った特化よりもバランスのとれた丸い特化。不利であっても一方的に負けないように抗える仕様を選ぶのだ。
 だから、スカイランだけでなく、他の競技でもキメラ種を選ぶ人間が少ないのだ。AWをただプレイするだけのプレイヤーも同じ。キメラ種なんてロマンのある種族を最初選ぶ人は少なからずいる。「実は最初はキメラ選んだよねぇ」なんて話はあるあるなのだ。しかし、キメラ種を続けていく人は少ない。そこには、不安定という壁がそびえ立っている。そびえ立っているという表現を使う程度に厄介なものだということだ。一流の選手が樹海に慣れていないなんてことはあり得ないだろうけど、同じ実力で獣人とキメラ獣人もどきだとキメラ獣人もどきの方がどうしても不利になりやすいのだ。

 発表されたステージは草原からの森林だ。しかも、樹海。慣れていなければ走るどころか真っ直ぐ歩くことも難しい。その樹海を抜けた先の草原がゴール。草原はスタートとゴールを見やすくするためみたいな話を横で誰かがしていた。

 予選に関しては、力の差がある場合がある。個人や企業が開催するスピードランの大会では一定の基準を満たさなければならないがVRオリンピックではその基準が低い。それもかなり低いのだ。日本は選手を自主的に制限したけどいろいろと国はあるから。

 そんな予選では決勝をかけて争う前座であるように素人目では思うがそんなことはない。
 まず自分の手を出来るだけ隠した上で上位の順位をとらなければならない。今大会であれば予選が四回だから一試合で十二人ほどは決勝に上がれる計算だ。しかし、内容によっては例外もある。ある程度のマージンを取った上での順位を狙う。
 何言ってんだ。早くゴールすればいいじゃないか。と思う場面も多々あるがこれは個人戦のように見える団体戦なのだ。VRオリンピックではスカイランと言われているのにそれ以外ではスピードランと呼ばれている理由。それは、予選で強豪選手を決勝に上げないようにする戦いが始まるからである。一回目VRオリンピックでは純粋な駆け引きとタイムの争いだった。しかし、第ニ回目の大会である選手がゴールを無視して他の有力選手たちの妨害をしたのだ。当然選手たちは反撃するがなまじ強かったある選手は見事に他の有力な選手たちの足止めをして予選落ちにしたのだ。しかも、自分はギリギリ決勝に進むという結果を残して。
 当たり前のように怒り出す他選手たちにそのある選手は言った。「僕は国の代表選手だよ」と。それを聞いた選手たちはVRオリンピックという大会の本質をまざまざと見せつけられる。そこからは、まあ、色々とあったみたいだ。僕は興味なかったから知らないけどね。

 予選は見事に二人とも通過。樹海エリアを攻略できれば問題ないステージだったから危うげもなく突破していた。日本の作戦はとりあえず突破すること。二年前の大会ではうまくいった妨害作戦も去年、今年となればみんな警戒している。だから、成功率が高くないと判断した上での各自に任せるという作戦だ。もちろん妨害をしてくる選手はいた。
 草原のような拓けた場所がスタート地点の時は、とりあえず魔法使って開幕先制パンチはある程度定石になっている。予選でも定石通り開幕から他プレイヤーに攻撃をする選手が見受けられた。スタート時はみんな止まってるから適当に魔法撃っても巻き込みやすい。だから、とりあえず攻撃しとくかみたいな考えだ。

 僕も作戦室の中から予選四試合を観ていた。僕のアバターは動きが遅い。速さを追求したプレイヤーたちを見てその速さに心躍らされた。あんな風に走れたらどれほど気持ちいいのだろうか。
 AWはキャラクター枠は一つだけだ。しかし、キャラクターリセットは存在する。僕も彼らみたいなキャラクターは作れる。それでも、そうしようという考えが出てこないのは思いのほか今のアバター『tail』のことを気に入っているからだと気づいた。



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