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新時代を垣間見る一人として
【09-08】スカイラン
しおりを挟む全試合が終わってから一時間ほどの休憩と決勝のステージが発表された。内容は荒野からの峡谷で最後が浮遊都市になってる。
荒野と峡谷は珍しくないかな。僕も動画で見たことがある。荒野は草原同様拓けたエリア。峡谷は谷が連なるエリアで大きな崖もある。谷底まで落ちてしまうと復帰が難しく、ゴールまでの直線をなぞれなくなるためより安全なゴールまでの最短距離をいち早く見つけることが課題だ。浮遊都市は初めて聞いた。僕が知らないだけかと思って聞いて見たけどそんなことなかった。他の人も知らなかったらしくて作戦会議が紛糾していた。
緒方選手ともう一人の選手を交えた作戦会議を僕は側で聞いていたけど正直どれも分からなかった。スカイランは主目的に大規模な作戦を使える種目でない。だから最終的には、トップを取れ、になる。トップを取れば下位の選手のコントロールがしやすくなって作戦を実行しやすくなる。しかし、問題はトップを取れるか否かであって、トップを走る前提での作戦が行われることは少ない。たまにあるみたいだけどね。
一時間の作戦会議の末に始まる決勝。
どの選手も強そうに見える。獣人系のハーフブラッドがやっぱり多いかな。エルフらしきアバターが数人いるけど地の利を得ただけだったとしたら楽になるな。
荒野エリアでのスタートは当然のように数人の選手の魔法から始まった。エクスプロージョンだとかボムだとか呼ばれている爆発系の魔法が連発されて土埃でモニター越しだと状況が見えない。僕たちは作戦会議室だった部屋に備え付けられた大きなモニターで観戦していた。
爆発の連続の後には視覚的には土しか見えなくても聴覚的には状況が変わったことがわかる。戦闘音が聞こえたのだ。金属は当たる甲高い音や呻き声。そして、現れる水や風の魔法たち。乱戦だ。開幕から乱戦が始まると大抵全員が巻き込まれる。巻き込まれた選手たちの選択肢は二つ。乱戦に加わるか乱戦から脱するか。加わることを選んだプレイヤーたちの反撃が音となってモニターに付随したスピーカーから聞こえてきている。しかし、その音の数と土煙とともに見える炎や水はどう見ても五十人分はない。そうなると、乱戦に加わるかどうか決めかねているプレイヤーがいるということで、そこから抜け出そうとするプレイヤーがいるということだ。
開幕と同時に起こった爆発と同時に起こった反撃で酷いことになっているスタート付近から一つの影が飛び出した。乱戦を望むプレイヤーたちはその影に一斉に攻撃を仕掛ける。大乱戦の条件が最前でなければならないからだ。だれが抜け出せば他にも抜けようとする。だから、だれも抜けないようにしなければいけない。しかし、この大会の決勝に参加するプレイヤーたちを相手に完遂できるだろうか。
一番はじめに抜けた選手は複数の魔法によって地に転がる。
AWを競技の種目に使っていることからにはそのステータスが反映される。それはHP《ヒットポイント》も例外でない。HPが全損したからといって失格にはならない。しかし、HPを全損すればデバフがかかる。ステータスの半減や五感の減衰等、正直失格とほぼ同義だと思うレベルでデバフがかかる。デバフがかかる時間はその大会ごとで決められているが、VRオリンピックでは十秒。十秒間はなにも行動が取れず抵抗もできない。十秒を短いと思うか長いと思うかは、まあ、見てればわかる。十秒あれば魔法で穴掘って埋めることができるし、スキル使って遠くに飛ばすこともできる。
乱戦を抜けたそのプレイヤーが倒れる寸前、いや、倒れていくのと同時に複数プレイヤーが乱戦を抜け出した。AWの魔法はリキャストタイムの概念が曖昧だが、存在する。それは連続で複数の選手に攻撃できないという意味だ。乱戦を抜けたプレイヤーたちの全てを行動不能に陥らせることはできなかった乱戦集団は一気に崩壊。あとは別名通りのスピード勝負。各々の最高速度で荒野を抜けた。
峡谷エリアは谷がいくつも連なって重なってできたエリア。一度谷底まで落ちてしまえばかなりのロスになるのは必至。そんなエリアを駆け抜けていく。浮遊都市エリアまでの直線に近いほどに他選手とぶつかり小競り合いになる。器用な選手は最高速度を保ちながら魔法で妨害をする。しかも、変数の数値を変更しながらそれをするという離れ業が峡谷エリアの複数箇所から見られる。こういう場面を観ると選手になるって大変だと改めて思う。
去年、飛行プレイヤーが他選手の妨害がしやすくて受けづらいと選手や関係者に証明されてしまったからか、宙を走っているプレイヤーが多い。恐らくスキルだとは思うけど僕にはわからないな。あまりに空中を走るプレイヤーが多いから来年はルールが変わるか峡谷エリアが競技のエリアから外されるとしか思えない。峡谷で四苦八苦しているプレイヤーは皆無。
浮遊都市エリアは峡谷エリアの先にある小さな祭壇の上空にある浮かぶ岩石たちを飛び移りながら上へ上へと進んだ先にある大きな浮遊大陸の都市だ。
何もなく景色として見ればさぞや壮観だろう。AWにも浮遊大陸あるのかな。僕はまだ最初の街から出れてないけど。
浮遊都市へのアクセスは宙に浮かぶ岩石たち。それを巧みに乗り移りながら先頭集団が天へと登っていくが、ある境で選手の動きが鈍くなる。急激な気圧の変化でいわゆる高山病と同じ症状が出たのだ。AWに高山病はないからフィールド特有のデバフだ。
一定の高度で停滞する選手たち。右を見れば敵。左を見ても敵。小競り合いが周囲を巻き込んで乱戦が始まる。徐々に高度を上げていき大地に足を突いた選手から下のプレイヤーを蹴落としていく。それを突破した選手が後ろを取って蹴落としていた選手を蹴落とそうとする。その繰り返しで浮遊都市全土で巻き起こる大乱戦へと発展した。
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スカイランの結果が発表されている。
日本は五位と七位。悪くはないけど良くもない。試合の内容を見れば納得できる順位ではあるけど文字にすると少し残念だ。
浮遊都市では案の定大乱戦が始まった。都市の建物を豪快に破壊しながら王座に向かう様はまるで反逆者。クーデターを起こしたかの様相に視聴者は楽しんだけど選手としては最悪のステージだった。浮遊都市を攻略するための戦闘をしている最中にも後続が次々と追いついてきてみんなでワイワイ戦う羽目になったのだ。これまでのレース展開はどこに行ったのやら。空を自由に飛べる緒方選手も王城にたどり着くまでは良かったけど、突いた後が良くなかった。王城内の王座に行くには王城を一階から攻略しないといけなかったのだ。王城だけは非破壊オブジェクトだったことが原因だ。緒方選手のアバターは空を飛ぶ速さは随一でも陸上は並。複雑な王城内で後続に追いつかれて嵐のように乱戦に飲み込まれてしまった。
最後は王座がある謁見の間の入り口を狙うように竦む選手たち。彼らがが王座に触れたのはほぼ同時。コンマ数秒の差で順位が決まったのだ。これを見れば、選手二人の力不足とは言えないよ。
しかし、今年の決勝はスピードランとは言い難い内容だった。当然のように戦闘が起こりやすいフィールドが多かったから。今後のスカイランには目が離せないな。うん。隣で一緒に見てた機械系のスタッフさんが言ってた。
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