【仮題】VRMMOが世界的競技になった世界 -僕のVR競技専門高校生生活-

星井扇子

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新たな日常

【06-03】ゴブリンリーダー②

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 最初に間合いに入ったゴブリンAを空いている四本の尻尾で一斉に攻撃して瞬殺する。ゴブリンの動きは遅い。振り下ろそうとする腕に噛みついて振り下ろさせないようにすることも容易だ。
 剣を振り上げた状態のまま前腕と上腕を抑えられたゴブリンAは残った二本の尻尾で容赦なく首を食い千切られる。
 
 一体仕留めた後は、仕留めている間に間合いに入ってきたゴブリンB、Cに対して尻尾二本ずつで対処する。ゴブリンの顔を攻撃して軽く挑発。剣を振り下ろさせて隙を作る。剣を振り下ろした状態になれば首が狙いやすい。二本の尻尾で首を食い千切る。それを二体同時にこなす。動きが遅いゴブリンだからこそ出来ることだ。
 
 ゴブリンB、Cを仕留めた僕は状況を整理しようとする。しかし、すでに僕の目の前にゴブリンリーダーとそれに続くゴブリンの姿があった。
 ゴブリンリーダーは僕に剣を振り下ろす。躱せない。僕は振り下ろされた剣の横腹を僕の右側にいたラーとルーで頭突き軌道をずらす。
 僕の左側を通り抜け地面に剣が突き刺さった。僕は剣を振り下ろした状態のゴブリンの首をドーとキーで狙う。ゴブリンより少し太いゴブリンリーダーの首を食い千切ろうとするがうまくいかない。仕方なくドーの〔猛毒〕を使った。少しでも動きが悪くなればいい。
 
 僕はゴブリンリーダーの首を放し、迫ってくるゴブリンDの対処を始める。
 状況を考えて、迫りくるゴブリンDを仕留めるのはやめた方がいい気がした。隙ができてしまう。僕はルーで全力の頭突きをゴブリンDの額に当てた。それによってゴブリンDは後ろによろめく。これで時間の確保ができた。
 
 ゴブリンリーダーにとどめを刺さなくてはならない。
 なんとか剣を持ち上げたゴブリンリーダーは首から血を流している。色は少し紫がかっている。〔猛毒〕だ。先ほどよりも動きの遅くなったたゴブリンリーダーにととどめを刺す。僕は頭突きの反動で動きが鈍っているルーの代わりをオンとドーとラーでゴブリンリーダーの首を噛みつく。噛みついたらすかさず〔猛毒〕を使う。持久戦になってしまうが仕方ない。僕はできるだけ傷口を大きくするように尻尾の頭を刈るく振った。
 
 痛みによってうねり声をあげるゴブリンリーダー。明らかに動きが鈍っている。僕の予想以上に〔猛毒〕が効いているみたいだ。仕留めきれてはいないが、無力化はできた。僕はそう考えて、残りのゴブリンE、Fに気を巡らせた。だが、これは失敗だった。
 
 僕の思考の隙間、一瞬の気の緩み、そんな僕の隙を付いたゴブリンリーダーの攻撃。いままで縦に振られていた剣が僕の右から横に振られていた。僕が気づいたときには既に当たる寸前。
 攻撃に気づいたキーが剣と僕の胴体の間に入り、少し遅れたルーも僕の右側を自身の胴体で守ろうとする。
 
 迫る刃。僕の油断から生まれたこの危機は、結果としてキーの頭を跳ね飛ばし、ルーの胴体を半分ほど切り裂いたところで止まった。力なく地面に横たわるキーとルーの胴体。光の粒子となって散乱するキーの頭。僕の思考は完全に停止した。
 それと同時に地面に崩れるゴブリンリーダー。重音を響かせて倒れるゴブリンリーダーを見て僕は思考を再開した。一瞬の出来事だ。しかし、これもまた隙になる。
 僕に向かって振り下ろされる二本の刃が見える。僕はいつもより遅い思考速度でどうにか片方の振り下ろされる腕をドーとラーで噛みつかせ、後ろに放り投げた。少し重かったができないことはない。軽く浮いたゴブリンFは僕の間合いの端にいた。
 
 間に合わなかったゴブリンEの剣を僕は受け入れ、すかさず反撃できるように気を強く持つ。腕を交差させて頭をかばう。完全によけられなくても頭を守ることぐらいはできる。肉を切らせて骨を断つ、だ。重心をずらして剣の軌道上から僕の頭を外す。痛みに備えて僕は身構えた。
 
 「ドンッ」という音が聞こえた。僕に痛みはない。よく見るとゴブリンEが吹き飛ばされている。しかも、僕の間合いの完全に外だ。僕は宙を浮くゴブリンEを茫然と見つめる。よく見るとヒューの頭がゴブリンEのいた位置にあった。思考が追いついてきた。ヒューが頭突き飛ばしたのだ。僕は先ほどとは違った意味で思考が停止したが、すぐに考え始める。ヒューが攻撃に参加したのはいつ以来だろうか。もしかしたら、ヒューは僕の思っている以上に強力な切り札になっているのかもしれない。
 余裕のできた頭でそんなことを考える。
 
 僕は冷静にゴブリンFをドーとラーで仕留めた。そして、いまだに倒れているゴブリンEに慎重に近づいて止めを刺した。
 
 キーとルーはいまだに〔再生〕していない。僕はキーとルーを操作する。いつもより楽に操作できるような気がする。だけど、僕にはそれが大きな違和感として感じられた。
 
 
 
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 ゴブリンリーダーとの戦闘を終え、キーとルーの〔再生〕を待ってからヴィーゼの町に戻った僕。
 道中は、拾った剣を七本と鎧を一つ持っているという危ない恰好だったが特になにか言われることなく町に入り、道具屋でそれらを売った後、解体所にゴブリンを納品した。
 ここまでの収入は二千五百ゴールド。ゴブリンリーダーもゴブリンと同じ値段だったのには少し驚いた。しかし、冒険者ギルドにあった依頼を確認すると、ゴブリンリーダー十体という依頼があり、それだと一体で二百ゴールドになっていた。少し悩んだが、その依頼は受けないことにした。僕にはまだ早い。
 
 今日はこれでログアウトする。時間はまだあるが今日はやめることにしたのだ。色々と考えたい。このままじゃダメだ。上を目指すためにこのままじゃ……
 僕はこの後について考える。とりあえずは訓練施設に行こう。スケジュールになかったから『しない』のではダメなのだ。スケジュールになくとも『する』必要があるのだ。コーチが考えてくれた訓練メニューは確かに僕の糧になっている。僕は逸る気持ちを抑えてメニューを開いた。
 
 
 
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 僕が目覚めた場所はもちろんVRルーム。
 シャワーを浴びた後に部屋着に着かえてしまっているがこのままでいい。僕は訓練施設へと向かい始めた。
 
 
 
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 訓練施設までの道中は長い。その最中に数人の生徒を見かけた。先輩だろうか。それとも組が違うのだろうか。みんな制服だ。
 訓練施設の使用に関しては制服でなくてもいいことになっている。それでも、寮までの長い長い道のりを何度も往復したいなんて言う人はいないだろう。そのため、僕の恰好は少し目立っていた。半袖Tシャツにジャージ。目立つに決まっている。
 
 僕は向けられる視線を無視して歩き続ける。視線に対する耐性はこれまでの高校生活で鍛えられている。僕は一歩一歩訓練施設に近づいて行った。
 
 
 
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 僕が向かったのは反応速度訓練用施設。いつもやっている訓練を最初にするためだ。既に六時手前。ここで訓練した後、寮に向かえば夕飯の時間になる。
 僕は慣れた足取りで訓練室に向かった。
 
 既に一か月以上続いているているこの訓練の成果すでに表れている。
 主に視界の変化。現実《リアル》でもAW内でも、視界が広くなったように感じている。さらには、視界内の小さな変化にも気づくようになった。視界からより多くの情報を得ることができるようになったおかげで僕のプレイの質は確かに向上した。だからこそ、僕はこの訓練が意味あることだと思っている。たとえ反応速度が上がった実感がなくとも。
 僕はVRデバイスを訓練室のパソコン型インタフェースに繋いで訓練を開始した。
 
 
 
 
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