【仮題】VRMMOが世界的競技になった世界 -僕のVR競技専門高校生生活-

星井扇子

文字の大きさ
64 / 101
新たな日常

【06-04】合宿前日①

しおりを挟む
 
 全日本選抜プレイヤー合宿の二日前。僕のVRデバイスに一徳寮長からの連絡が入っていた。今日の授業が終わり、訓練を終えて、丁度シャワーを浴び終えたところだ。今日で一学期終了だ。
 
 
=======
 
 「明日、合宿用の宿泊施設に先乗りして準備を始めることになっている。堤も手伝ってくれ。集合場所は寮の一階、エントランス。時間は朝十時だ。朝食を食べたら制服に着替えてから来てくれ」
 
=======
 
 
 合宿の手伝いをしないといけないみたいだ。それに制服か。ブレザーも着たほうがいいんだろうか。
 僕はイットク先輩に返信がてら聞いてみる。
 
 
=======
 
 「分かりました。ブレザーも着たほうがいいですか?」
 
=======
 
 
 僕が返信して数分。イットク先輩からの返信が来た。
 
 
=======
 
 「ブレザーも着てきてくれ。制服を着て正装する必要があるのは明日と合宿初日だけの予定だ。コーチやスタッフの方に挨拶する必要があるからな。それ以外は私服でいいことになっている」
 
=======
 
 
 イットク先輩からの返信を読んで、僕は了承したことを返信した。挨拶か。緊張してきた。
 明後日からの合宿では、僕は学生としてではなく選手候補として見られることになるのだろう。それは、学生気分ではダメだということだ。社会に出たこともない僕はだんだん不安に駆られていく。
 シャワーを浴び終えた、裸にタオルの状態で僕は思考に耽る。次第に脇道にそれていく脳内思考でディナーでのナイフとフォークの使い方について考え始めた時、ようやく脱線していることに気づき落ち着くことができた。合宿でディナーはありえないだろう。さすがに。
 
 少し冷えた体に気づき、着替えを着て自室に戻る。さっきまで来ていた服を洗濯用ボックスに入れるついでに、ブレザーのチェックをしたかったからだ。
 クローゼットの中のハンガーに掛けられたブレザーを取り出す。僕は丁寧に汚れがないか探していく。まだ数日しか着ていないブレザーだ。汚れはなかった。
 僕は安心して、クローゼットに戻した。
 
 明後日から合宿にはこの部屋からの参加になる。だから、何か準備をする必要はない。僕はVRデバイスを片手にVRルームに向かった。
 
 
 
-------
 
 
 
 翌日、僕は黒川の声で目を覚ました。
 
 「おはようございます。起きてください」
 
 僕は体を起こして考える。昨日で学校は終わったはずだ。
 
 「今日は?」
 
 僕は完全に寝ぼけた脳で聞き返すことを思いついた。
 
 「今日は予定が入っています。明日から始まる全日本選抜プレイヤー合宿の準備ですよ。若様」
 
 僕は慌てて布団から飛び起きる。肌掛けが大きくはためき、埃が軽く舞う。僕は完全に冷めた脳をフルに動かした。
 
 「時間は?」
 「七時でございます」
 
 黒川の呑気な電子音声が聞こえた。七時か。僕はベッドに腰かけた。
 集合までは時間があるはずだ。確か十時集合だったはずだ。
 
 「集合は何時だっけ」
 
 念のため、確認する。
 
 「十時に寮、一階のエントランスに集合です」
 「ありがと」
 
 黒川からの報告を聞いて、僕は礼を言ってベッドに倒れこむ。まだ時間は十分にあるみたいだ。
 少し横になった僕は、眠気が襲ってきたことに気づいてベッドから立ち上がった。とりあえずは朝ごはんだ。
 
 僕は自室を出て洗面所に向かい、顔を洗った。
 昨日まであった学校に行くよりはゆっくり出来る。顔を洗い終わった僕は共有スペースを除く。拓郎はいない。寝ているか、AWをしているのかのどちらかだろう。
 僕は、拓郎についてここ一週間で起きたある事件を思い出しながら食堂に向かった。
 
 食堂には数人しかいなかった。今日から夏休みだ。初日ぐらいは寝坊して当たり前だろう。僕はいつものように給仕のおばちゃんに挨拶をして朝食を貰った。
 まだ早い時間のためか、智也も寮長たちも現れなかった。僕の知っている人に関しては、朝食を食べている最中に食堂に入ってきた吉田先輩だけだ。僕は軽く会釈しておいた。
 
 朝食を食べ終えた僕は自室に戻り支度をする。いつもと比べるとだいぶのんびりとした動きで身支度を整えた僕は空いた時間をどう過ごそうか考えた。待ち合わせまであと一時間半はある。特にすることもない僕は自室でVRデバイスを使って時間を潰した。
 
 
 
-------
 
 
 
 十時、十五分前。僕は自室を出てエントランスに向かった。持っているのはVRデバイスのみ。
 十五分前は少し早いかもしれないけど、エントランスに行ったときに寮長たちが先にいた時が嫌なので早めに部屋を出たのだ。
 エントランスまで二分程。僕はのんびりと歩いてエントランスに向かった。
 
 エントランスで待つこと数分。
 佐伯副寮長がエントランスに入ってきた。
 僕はエントランスに置かれている椅子から立ち上がって佐伯先輩の方を見る。僕に気が付いたらしいサエキ先輩が手を挙げて僕の方に近づいてきた。僕はそれに軽く頭を下げて返した。
 
 「おはよう」
 「おはようございます」
 
 佐伯先輩に僕が返す。
 
 「早いね」
 「僕もさっき来たところです」
 
 普通に話しかけてきた。佐伯先輩と話をするのは連絡事項以外ではほとんどしたことがない。というか、基本的に先輩と話すこと自体が僕にはない。そのため、少し緊張してしまう。
 
 「緊張してる?」
 「はい」
 
 緊張といっても、僕の今の緊張は合宿への緊張ではなく、あまり話したことのない先輩との会話での緊張だ。今まで話したことのない人との会話はいつだって緊張してしまう。僕はおっかなびっくりしながらも、それを表に出さずに会話を続けた。ただ、その緊張も長くは続かなかった。智也がエントランスに現れたのが見えたのだ。僕は智也に感謝しながらそのことを佐伯先輩に告げた。
 
 「あ、智也が来たみたいです」
 
 なんとも白々しい感じだ。まるで今気づきましたと言わんばかりのセリフ。自分のことをこんな風に皮肉ってしまうのもきっと緊張のせいである。
 
 「ん。本当だね」
 
 佐伯先輩はそう言って智也に向かって手を振った。
 それに気づいた智也は僕たちの方に速足で向かってきた。
 
 「おはようございます。副寮長。後、瑠太も」
 
 僕はついでのようだ。僕と佐伯先輩は一通り挨拶を終えて、今度は三人で話し始める。智也が入ったおかげか、だんだんと緊張せずに話すことができるようになってきた。といっても、相手は先輩なので多様の緊張はするのだが。
 
 「それにしても寮長来ませんね」
 
 僕はVRデバイスをポケットから出して時間を確認した。十時二分。遅れているわけではないが、何かあったのだろうか。
 
 「大方、電話かなんかが長引いてるんじゃないか?」
 
 智也がそう言った。
 
 「そうだね。今日はいろいろと連絡しないといけないことが多いだろうからね」
 
 佐伯先輩も智也に同意した。
 やっぱり寮長の仕事は大変なんだろうか。やりたくないな。僕は心の中で本日二度目の感謝を智也にした。
 
 それから間もなく、イットク寮長が現れた。
 
 「おはよう。遅れてすまないな。待ったか?」
 
 イットク先輩が言った。
 
 「いえ、それほどでも」
 
 佐伯先輩が少し笑いながらそう言った。
 
 「あー。ちょっと連絡が来ていてな。堤もすまないな」
 「いえ。大変みたいですね」
 
 いきなり僕の方を向いた寮長に僕はなんとか返事した。
 
 「好きでやってることだからな」
 
 そう言った先輩の顔は少し恰好よく見えた。
 
 
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

親がうるさいのでVRMMOでソロ成長します

miigumi
ファンタジー
VRが当たり前になった時代。大学生の瑞希は、親の干渉に息苦しさを感じながらも、特にやりたいことも見つからずにいた。 そんなある日、友人に誘われた話題のVRMMO《ルーンスフィア・オンライン》で目にしたのは――「あなたが求める自由を」という言葉。 軽い気持ちでログインしたはずが、気づけば彼女は“ソロ”で世界を駆けることになる。 誰にも縛られない場所で、瑞希は自分の力で強くなることを選んだ。これは、自由を求める彼女のソロ成長物語。 毎日22時投稿します。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

処理中です...