ニイノ カケルの巻き込まれ神話大戦

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北欧の章

北欧の章-6…揺らぎだす神界

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翔達が聞いた咆哮は、オーディンとトールの耳にも響いた。
「なんだよこの声は……!親父、なんか知らないのか?」
咆哮に顔をしかめながら耳を塞いでいたトールは、まだ頭の中でガンガン鳴り響いている声にイライラしながら隣で並んで聞いていた父親の方を向くと、オーディンにも異変が起きていた。
ただ、以前にロキがなったソレとは異なっており、彼はただただ戦慄していた。
「終わり…終わり…終わり…これで、全部終わるのか…」
「…親父?」
訳のわからない言葉を呟きながら立ち尽くしているオーディンを揺すりながらトールは困惑する…今までこんなに何かへと怯えている彼を見たことがないのだ。いくら、子の前で弱気を見せたくはないから…とは言われても、ここまで自分の親が恐怖を感じるのを見ることは殆ど無いに等しいと言っても過言ではないだろう。
その間にもオーディンは、トレードマークの緑色の帽子が頭から落ちたのにも気づかずに、まるで世界が終焉を迎えるのを見つめることしか出来ない…といったような表情で、うわ言のように『終わり』という単語を呟き続ける。
すると、二人の元へと一人の女性が飛んでくる。靡いている自身の美しい銀髪を三つ編みへと纏め上げており、動きやすそうで機動性に優れたコンパクトな鎧の下に、少し動きにくそうな、ヒラヒラとした服を身につけても尚凛々しい、勇ましい顔立ちの女性である。そして彼女の右の腕には盾が、左右の手には1本ずつ剣が握られていていつでも戦うことが出来る体勢を作っている。そして光で紡がれた輝く翼を畳んで、オーディンへと跪いて報告を始める。
「オーディン様、先刻の謎の咆哮の後より原因不明の症状が多数報告されています。そしてヨルズ様より至急来い、との連絡が……オーディン様?」
「あ…あぁ悪いなワルキューレ、儂は最近のところ寝れていなくてな…ヨルズの所へは今すぐに向かうとしよう、下がってもいいぞ」
トールが親父、しっかりしろ…と連呼しながら肩を叩いたおかげでどうにか意識を取り戻したのか、苦笑いしながらオーディンはワルキューレの頭を撫でてありがとう、と答えた。そんないきなりのスキンシップにも全く動じず、それでは失礼します、と立ち上がったワルキューレは礼儀正しく一礼してまた飛んでいく。それを、つれないねぇ…と妙に親父臭い事を呟きながら彼は見送り、そんな自分の父親を情けなく思ってトールはため息をついた。そしてオーディンは再度息子の方を向いて命じる。
「それではトール、再び奴を探して監視を頼むぞ」
「今度はミスったりはしないぜ…多分な」
「……因みに、今回は何で見失ったんだ?」
ふと疑問に思ったことを会話のクッションがてらに挟むと、トールはさらに深いため息をついて答える。
「足元に火薬が仕込まれてたんだ、それを気づかずに踏んだらパチパチパチッ!…って大きな音がして、それに驚いてたらいつの間にか巻かれてたんだ…」
「…そうか、それは驚くな」
何とも下らない罠にビビる息子に呆れてながら、それじゃあ行ってくるぜ、と張り切りながらアスガルドへと降りていくトールをオーディンは見守った後に、誰にも聞かれないように呟く。
「ついに、終焉が始まるというのか…」
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