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おはぎかと思ったら精霊だった話
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「……っと! ……ちょっと! いつまで寝てるんですか!」
誰かに体をゆっさゆっさと揺さぶられている。
うあーあーあー……やめてくれよ……頭くらくらすんだろ……。
「まったくもー……こんな可愛らしい女の子を放ったらかしにしておくなんて、あなたそれでも男ですか! いい加減にしないと、日が暮れるまで朝立ちが収まらなくなる呪いかけますよ」
「ってまた下ネタ呪いかよ! 夜まで勃ってたらそれもはや朝立ちじゃないよ!」
思わず起き上がって突っ込んでしまった。
……っと、いてて……急に体を起こしたもんだから、首がびっくりしてしまった。
俺は痛む首筋をさすりながら、声のする方に体を向けた。
ベッドの横では、あんこまみれの美少女が不満気な顔で俺を睨んでいた。
馬鹿でかい瞳で俺を捉え、じとーーーっという効果音が聞こえてきそうなくらいねっちょりとした視線を送ってくる。
だがそんなことよりも、俺は彼女の奇抜な格好に釘付けだった。
どうやら彼女は素肌から直にあんこを塗りたくっているらしいのだ。
紛れも無い変態だ。
少し幼さの残っているかわいらしい顔立ちが、余計に彼女の残念具合を引き立てている。
体の痛みからしてこれも一応現実なんだろうけど、こいつのあまりにも前衛的すぎる装いが現実感をごりごり削る。
「性根が勃起不全でも、下半身さえしっかりしてれば、最低限男としての面目が立つでしょう? わざわざ私自らあなたを男にしてやろうって言ってるんじゃないですか。……あっ、お礼はいらないですよ、私の好意でやってることですから」
「お前さっき呪うって言ったよね!? それどう考えても悪意だよね!?」
彼女はやれやれとでも言いたげな、呆れた表情で首を振った。
その拍子に、彼女の体を覆っているあんこがぼろぼろと崩れていく。
おい、掃除はお前がちゃんとしろよ。
「さっきからお前お前って……あなたねー、人の名前くらいきちんと呼びましょうよ。そんなんだからいつまで経っても童貞なんですよ」
「童貞って関係ないだろ! 何でもかんでも下半身に結びつけるのやめてよ! あと、俺らまだ一回も自己紹介してないんだから名前も呼びようがないよ」
「そういえばそうでしたね。ではこちらから名乗りましょう。私の名前はあん子です。おはぎの精霊です。普段はおはぎですが、それは仮の姿。本当の私は今の私です。これからよろしくお願いしますね」
なかなかにぶっとんだ自己紹介だった。
名前あん子て。
おはぎの精霊て。
「あー……じゃあ、やっぱりお前がさっきの呪いのおはぎだったのか」
「お前じゃなくてあん子です! もう、何回言わせるつもりですか!」
「ああ……うん、ごめん……。で、あん子はさっきのおはぎなんだよな。なんで俺につきまとうんだ。そして『これからよろしく』ってどういうことよ?」
俺はとりあえずあん子の話に乗ってみることにした。
傍から見れば怪しさ満点の危険人物だろうが、こういう手合は下手に刺激してはダメだ。慎重に対応して、穏便にお引き取り願おう。
俺の胸の内を知ってか知らずか、あん子は両腕を組みながら、「よくぞ訊いてくれました!」とでも言い出しそうな表情で、得意気に俺の顔を見る。
「私はおはぎ力を磨くためにこの世界にやって来ました。おはぎ力とはすなわちおはぎとしての魅力。おはぎ力を極めることで、どんなにおはぎが嫌いな人でも、おはぎを好きにさせることができるのです」
おはぎ力。
女子力のおはぎ版みたいなものだろうか。
なんてアヴァンギャルドな概念なんだ。
「それでですね、私はあなたにおはぎの魅力を伝えようと、私にできる最善を尽くしてきました。あなたがおはぎ嫌いであることは事前調査でわかっていましたが、まさか私の超魅力的なおはぎ自販機をスルーしやがる程とは思ってもいませんでした。私に魅了できないおはぎ嫌いなどこの世に存在しないと思っていたので、これは相当な不覚でした……」
あん子はさっきとは打って変わって暗い表情になり、うつむきながら恨めしそうに俺を睨む。
いやいや、どう見たらあの胡散臭い自販機が魅力的に思えるんだよ。
場違いすぎて見た人みんなドン引きだろうよ。
つーか俺は別にそこまでおはぎ嫌いじゃないし、自販機をスルーしたのは俺の好き嫌いとは無関係だよ。あんなもん俺じゃなくても誰でもスルーするって。お前の感性ちょっと捻過ぎてるよ……。
俺は憐れみの目で彼女を見ていた。
が、あん子はそんな俺の様子もアウトオブ眼中なようだ。
彼女は急に頭をばっと上げると、決意も新たに清々しく悪夢のような宣言をする。
「ですが、あなたのようなおはぎ嫌いの最右翼を陥落させることは、私がおはぎの精霊として非常に強い力をもった存在であることの証明となります! 七十二柱の神霊の中で、かなり上位の序列を得ることも不可能ではないでしょう! ふふふ、あなたのおはぎ嫌い、このあん子が克服して差し上げます!」
びしッと親指を突き出して彼女は長い自己紹介を締めた。
あんこに覆われた華奢な体はキラキラエフェクト全開で輝いている。
なんだよこれ、俺はどう反応すればいいんだよ。
誰かに体をゆっさゆっさと揺さぶられている。
うあーあーあー……やめてくれよ……頭くらくらすんだろ……。
「まったくもー……こんな可愛らしい女の子を放ったらかしにしておくなんて、あなたそれでも男ですか! いい加減にしないと、日が暮れるまで朝立ちが収まらなくなる呪いかけますよ」
「ってまた下ネタ呪いかよ! 夜まで勃ってたらそれもはや朝立ちじゃないよ!」
思わず起き上がって突っ込んでしまった。
……っと、いてて……急に体を起こしたもんだから、首がびっくりしてしまった。
俺は痛む首筋をさすりながら、声のする方に体を向けた。
ベッドの横では、あんこまみれの美少女が不満気な顔で俺を睨んでいた。
馬鹿でかい瞳で俺を捉え、じとーーーっという効果音が聞こえてきそうなくらいねっちょりとした視線を送ってくる。
だがそんなことよりも、俺は彼女の奇抜な格好に釘付けだった。
どうやら彼女は素肌から直にあんこを塗りたくっているらしいのだ。
紛れも無い変態だ。
少し幼さの残っているかわいらしい顔立ちが、余計に彼女の残念具合を引き立てている。
体の痛みからしてこれも一応現実なんだろうけど、こいつのあまりにも前衛的すぎる装いが現実感をごりごり削る。
「性根が勃起不全でも、下半身さえしっかりしてれば、最低限男としての面目が立つでしょう? わざわざ私自らあなたを男にしてやろうって言ってるんじゃないですか。……あっ、お礼はいらないですよ、私の好意でやってることですから」
「お前さっき呪うって言ったよね!? それどう考えても悪意だよね!?」
彼女はやれやれとでも言いたげな、呆れた表情で首を振った。
その拍子に、彼女の体を覆っているあんこがぼろぼろと崩れていく。
おい、掃除はお前がちゃんとしろよ。
「さっきからお前お前って……あなたねー、人の名前くらいきちんと呼びましょうよ。そんなんだからいつまで経っても童貞なんですよ」
「童貞って関係ないだろ! 何でもかんでも下半身に結びつけるのやめてよ! あと、俺らまだ一回も自己紹介してないんだから名前も呼びようがないよ」
「そういえばそうでしたね。ではこちらから名乗りましょう。私の名前はあん子です。おはぎの精霊です。普段はおはぎですが、それは仮の姿。本当の私は今の私です。これからよろしくお願いしますね」
なかなかにぶっとんだ自己紹介だった。
名前あん子て。
おはぎの精霊て。
「あー……じゃあ、やっぱりお前がさっきの呪いのおはぎだったのか」
「お前じゃなくてあん子です! もう、何回言わせるつもりですか!」
「ああ……うん、ごめん……。で、あん子はさっきのおはぎなんだよな。なんで俺につきまとうんだ。そして『これからよろしく』ってどういうことよ?」
俺はとりあえずあん子の話に乗ってみることにした。
傍から見れば怪しさ満点の危険人物だろうが、こういう手合は下手に刺激してはダメだ。慎重に対応して、穏便にお引き取り願おう。
俺の胸の内を知ってか知らずか、あん子は両腕を組みながら、「よくぞ訊いてくれました!」とでも言い出しそうな表情で、得意気に俺の顔を見る。
「私はおはぎ力を磨くためにこの世界にやって来ました。おはぎ力とはすなわちおはぎとしての魅力。おはぎ力を極めることで、どんなにおはぎが嫌いな人でも、おはぎを好きにさせることができるのです」
おはぎ力。
女子力のおはぎ版みたいなものだろうか。
なんてアヴァンギャルドな概念なんだ。
「それでですね、私はあなたにおはぎの魅力を伝えようと、私にできる最善を尽くしてきました。あなたがおはぎ嫌いであることは事前調査でわかっていましたが、まさか私の超魅力的なおはぎ自販機をスルーしやがる程とは思ってもいませんでした。私に魅了できないおはぎ嫌いなどこの世に存在しないと思っていたので、これは相当な不覚でした……」
あん子はさっきとは打って変わって暗い表情になり、うつむきながら恨めしそうに俺を睨む。
いやいや、どう見たらあの胡散臭い自販機が魅力的に思えるんだよ。
場違いすぎて見た人みんなドン引きだろうよ。
つーか俺は別にそこまでおはぎ嫌いじゃないし、自販機をスルーしたのは俺の好き嫌いとは無関係だよ。あんなもん俺じゃなくても誰でもスルーするって。お前の感性ちょっと捻過ぎてるよ……。
俺は憐れみの目で彼女を見ていた。
が、あん子はそんな俺の様子もアウトオブ眼中なようだ。
彼女は急に頭をばっと上げると、決意も新たに清々しく悪夢のような宣言をする。
「ですが、あなたのようなおはぎ嫌いの最右翼を陥落させることは、私がおはぎの精霊として非常に強い力をもった存在であることの証明となります! 七十二柱の神霊の中で、かなり上位の序列を得ることも不可能ではないでしょう! ふふふ、あなたのおはぎ嫌い、このあん子が克服して差し上げます!」
びしッと親指を突き出して彼女は長い自己紹介を締めた。
あんこに覆われた華奢な体はキラキラエフェクト全開で輝いている。
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