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邂逅
6
所変わって、聖月のいる場所からそう遠くはない喫茶店。近代的な建物の集うナンバーズの街並みの中で異色を放つレンガの建物。柔らかな光がその看板を照らし、昔懐かしといった風情を醸し出している。
「地味に狭いし、レンガとか何時の時代だって感じだし、そもそも、喫茶店ってなんなのさ」
「うるせぇぞ、そこ。文句言うなら出て行きやがれ」
カラン、とこれまた古めかしい鈴の音を立ててドアを開けた少年――颯斗。学園と族の両方に関する雑事を片付けているせいで随分とすさんでいるようだ。デフォルトの毒舌がさえわたる。しかし、相対する者も慣れたもので。即刻切り返す。颯斗は情け容赦のない声の主を恨めし気に睨みつける。
「普通族の本拠地って言ったらバーだろう!」
「最終的に強調するところがそれか!黙れ未成年!俺の昔からの夢は喫茶店のマスターだ!」
「いや、なんか段々論点がおかしくなってる気がするのは俺だけか」
「……下戸だもんね、兄さん。下戸が開くバーってちょっと心配……」
「シャラップ!」
白のシャツに黒のスラックス。ついでに黒のシックなエプロンを着た美丈夫が顔を引きつらせる。26という男盛りに差し掛かった彼の名前は阿左美悠茉。先述の通り、喫茶店を経営している。左程広くない彼の城で我が物顔に寛いでいるのは黒シャツを着て胸元を大胆に開けた竜崎と、ダボッとした黒のパーカーを着た少年。さり気なく銀のアクセサリーで胸元を飾り、男の色気満開でお前何歳だ、と問いたくなる竜崎とは対照的に、可愛らしいうさ耳のついたフードを目深に被っている。カウンターの傍のテーブルに陣取った彼らの元まで歩み寄った悠茉は、勢いよくトレーを机に叩きつけた。
「うぉっと」
「……兄さん。カップが可哀想」
「てめぇらなぁ」
僅かに飛び散った熱いコーヒーに飛びのく竜崎。早速ココアに手を伸ばした少年――名前は阿左美晴真――はフードの奥から非難の眼差しを悠茉に向けた。話から分かるように、彼ら二人は兄弟である。しかし、弟の何とも言い難い雑な対応。悠茉は口元をひきつらせた。
「テンプレは酒呑みながら作戦会議して喧嘩でしょ、そこは」
「未成年が堂々と法律違反要求すんじゃねぇ!他所に行け他所に!」
「自分が呑めないからって、ねぇ。あ、僕、カフェオレ。甘くしてね」
「っ!のやろっ!」
容赦なく悠茉のコンプレックスをえぐっていく。竜崎も晴真も面白そうに見るだけで助け船はなし。寧ろ油を注がんと期を窺っているようだ。その上もってきて、上から目線のオーダー。コレ、怒っていいヤツだよね、俺。悠茉が額に青筋を立てる。一方の颯斗は面倒くさそうに一瞥して一言。
「一応、客なんだけど?この零細店の」
ぶつり。悠茉の頭の中で何かが切れた音がした。
「ざっけんな、このクソガキども!出て行きやがれぇ!」
夜の街に悠茉の怒声がこだましたとかしていないとか。
「で?皆まだ来てないの?」
肩を怒らせた悠茉が、それでも注文のカフェオレを作る為にカウンターの中へ戻っていくのを横目で見ながら颯斗は竜崎に尋ねた。これくらいのじゃれ合いは日常茶飯事。あいさつ代わりだ。さっさと本題に入らんとする颯斗。片肘を突いた竜崎は苦笑する。
「ま、集合時間前だしな。そろそろ来るだろう。朱雀と朝顔は生徒会の仕事の関係で遅くなるかも知れないと連絡を受けている」
「あっそ」
椅子を引いて気のない返事を返した颯斗は視線をその隣に投げた。ちびちびとココアを啜っていたうさ耳少年が顔を上げる。
「ひさしぶり」
「ホント、久しぶり。相変わらず引きこもってんの、秋」
「ん」
コクンと頷いた晴真。それに合わせて揺れたうさ耳が変な方向に引っかかる。気にすることなく晴真は目の前に置いたパソコンを覗き込む。因みに、さり気なく耳を直すのは竜崎。知る人ぞ知る、可愛い物好きなのだ。パソコンの画面に夢中な彼にやれやれと肩を竦めると、颯斗は話が終わってないぞ、と呼びかける。
「何か情報あった?」
「街頭カメラのハッキング中。素戔嗚の集会場所と、冥府の居場所は分かった。いまは監視中」
「流石」
竜崎がニヤリと笑う。Nukusの情報担当は二人。対人においての情報収集を得意とする颯斗とIT技術を駆使して情報を収集・操作する事に長けた晴真。戦闘には向かずとも、貴重な戦力である。早速情報の分析と戦略を、と会議を始めるトップの後ろでは、続々と少年、青年達が喫茶店に入ってくる。
軽く挨拶しあう彼らはNukusに所属する者達。聖月がいたころよりもわずかに拡大したものの、もとから少数精鋭。この喫茶店――ornerinessに十分収容できる規模である。よって、マスターである悠茉の好意もあって、ココがNukusの溜まり場となっている。彼らは竜崎の求めに応じて集まって来たのだ。
「地味に狭いし、レンガとか何時の時代だって感じだし、そもそも、喫茶店ってなんなのさ」
「うるせぇぞ、そこ。文句言うなら出て行きやがれ」
カラン、とこれまた古めかしい鈴の音を立ててドアを開けた少年――颯斗。学園と族の両方に関する雑事を片付けているせいで随分とすさんでいるようだ。デフォルトの毒舌がさえわたる。しかし、相対する者も慣れたもので。即刻切り返す。颯斗は情け容赦のない声の主を恨めし気に睨みつける。
「普通族の本拠地って言ったらバーだろう!」
「最終的に強調するところがそれか!黙れ未成年!俺の昔からの夢は喫茶店のマスターだ!」
「いや、なんか段々論点がおかしくなってる気がするのは俺だけか」
「……下戸だもんね、兄さん。下戸が開くバーってちょっと心配……」
「シャラップ!」
白のシャツに黒のスラックス。ついでに黒のシックなエプロンを着た美丈夫が顔を引きつらせる。26という男盛りに差し掛かった彼の名前は阿左美悠茉。先述の通り、喫茶店を経営している。左程広くない彼の城で我が物顔に寛いでいるのは黒シャツを着て胸元を大胆に開けた竜崎と、ダボッとした黒のパーカーを着た少年。さり気なく銀のアクセサリーで胸元を飾り、男の色気満開でお前何歳だ、と問いたくなる竜崎とは対照的に、可愛らしいうさ耳のついたフードを目深に被っている。カウンターの傍のテーブルに陣取った彼らの元まで歩み寄った悠茉は、勢いよくトレーを机に叩きつけた。
「うぉっと」
「……兄さん。カップが可哀想」
「てめぇらなぁ」
僅かに飛び散った熱いコーヒーに飛びのく竜崎。早速ココアに手を伸ばした少年――名前は阿左美晴真――はフードの奥から非難の眼差しを悠茉に向けた。話から分かるように、彼ら二人は兄弟である。しかし、弟の何とも言い難い雑な対応。悠茉は口元をひきつらせた。
「テンプレは酒呑みながら作戦会議して喧嘩でしょ、そこは」
「未成年が堂々と法律違反要求すんじゃねぇ!他所に行け他所に!」
「自分が呑めないからって、ねぇ。あ、僕、カフェオレ。甘くしてね」
「っ!のやろっ!」
容赦なく悠茉のコンプレックスをえぐっていく。竜崎も晴真も面白そうに見るだけで助け船はなし。寧ろ油を注がんと期を窺っているようだ。その上もってきて、上から目線のオーダー。コレ、怒っていいヤツだよね、俺。悠茉が額に青筋を立てる。一方の颯斗は面倒くさそうに一瞥して一言。
「一応、客なんだけど?この零細店の」
ぶつり。悠茉の頭の中で何かが切れた音がした。
「ざっけんな、このクソガキども!出て行きやがれぇ!」
夜の街に悠茉の怒声がこだましたとかしていないとか。
「で?皆まだ来てないの?」
肩を怒らせた悠茉が、それでも注文のカフェオレを作る為にカウンターの中へ戻っていくのを横目で見ながら颯斗は竜崎に尋ねた。これくらいのじゃれ合いは日常茶飯事。あいさつ代わりだ。さっさと本題に入らんとする颯斗。片肘を突いた竜崎は苦笑する。
「ま、集合時間前だしな。そろそろ来るだろう。朱雀と朝顔は生徒会の仕事の関係で遅くなるかも知れないと連絡を受けている」
「あっそ」
椅子を引いて気のない返事を返した颯斗は視線をその隣に投げた。ちびちびとココアを啜っていたうさ耳少年が顔を上げる。
「ひさしぶり」
「ホント、久しぶり。相変わらず引きこもってんの、秋」
「ん」
コクンと頷いた晴真。それに合わせて揺れたうさ耳が変な方向に引っかかる。気にすることなく晴真は目の前に置いたパソコンを覗き込む。因みに、さり気なく耳を直すのは竜崎。知る人ぞ知る、可愛い物好きなのだ。パソコンの画面に夢中な彼にやれやれと肩を竦めると、颯斗は話が終わってないぞ、と呼びかける。
「何か情報あった?」
「街頭カメラのハッキング中。素戔嗚の集会場所と、冥府の居場所は分かった。いまは監視中」
「流石」
竜崎がニヤリと笑う。Nukusの情報担当は二人。対人においての情報収集を得意とする颯斗とIT技術を駆使して情報を収集・操作する事に長けた晴真。戦闘には向かずとも、貴重な戦力である。早速情報の分析と戦略を、と会議を始めるトップの後ろでは、続々と少年、青年達が喫茶店に入ってくる。
軽く挨拶しあう彼らはNukusに所属する者達。聖月がいたころよりもわずかに拡大したものの、もとから少数精鋭。この喫茶店――ornerinessに十分収容できる規模である。よって、マスターである悠茉の好意もあって、ココがNukusの溜まり場となっている。彼らは竜崎の求めに応じて集まって来たのだ。
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