宇宙戦鬼バキュラビビーの情愛

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バキュラビビーの葛藤

佐山定の葛藤

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「『18時以降ならいつでもいいから日程決めて』…………じゃ、ねーーーーよ!!!!」

あの野郎、完全に忘れてやがる。
今日は結婚式の衣装合わせの日だ。

そりゃ、前日確認してなかった俺も悪い。
しかし、なんやかんや言ってもしっかりしている美郷だ。

擬態は完璧とか言っていたあの野郎だ。

すっぽかしてくることはない、と完全にタカを括っていた。

「美郷さん、来ませんねえ……。なにかあったんでしょうかね?」
「……すみません」

式場の打ち合わせスペースで、高木と東島、それから今日のために呼んでいたファッションコーディネーターに俺は頭を下げ続けていた。

さっきから電話もメールもしているというのに何故か反応がない。

他の打ち合わせならなんとかなるが、今日に限っては花嫁がいなくてはなんともならない。

30分ほど連絡がつかないか粘ってみたもののやはりダメ。

「本日はすみません。また日程を改めてもいいでしょうか」

俺は頭を下げながら言った。

「そうですね」

高木が他のスタッフとこそこそ相談しながら答える。

「来週、披露宴の進行確認の予定でしたけど、そこに衣装合わせもねじこみましょうか?」
「すみません、それでお願いします」

俺はもう一度頭を下げる。

「来週はちゃんとお二人できてくださいね? 待ってますよ」

東島が言う。言葉にちょっとトゲを感じた。なんだか機嫌が悪そうだ。

「来週こそ必ず」

首根っこを引っ張ってでも、美郷を連れてきてやる。



マンションに帰り着くと、エントランスの壁に見覚えのある顔の男がもたれかかっていた。

サイバラだ。

「ちわっす」

俺に気づくとかる~いかんじで挨拶してきた。

「何しにきたんだ?」
「ちーちゃんから様子を見てきて欲しいって頼まれたんすよ」
「様子を見てきて欲しいって……それはこっちのセリフだよ。美郷は何やってんだ?」
「一生懸命ゲームしてるっす」
「はぁ?」

めまいがしそうになった。
ゲームに夢中で着信に気づかなかったってか?
ちょっとあんまりじゃないか?

「そんなことより、せっかく来たんすから、部屋に入れてくださいよ」
「なんでお前なんかを部屋に上げなきゃいけないんだよ」
「いっしょに宇宙人撃退作戦、考えないっすか?」
「宇宙人って……お前、俺の味方してくれるのか?」
「俺はちーちゃんを幸せにしたいだけっす。俺、コーリヤマとかいう奴が信用できないんで」



「……ふつーっすね」

サイバラを部屋に入れて、数秒後のセリフがこれだ。

「もうちょっとマシなことを言えよ」
「サーセン。悪い意味じゃないっす」

いちいち言動がムカつく。

「まあ、とりあえず座れよ。コーヒーとかないからな。喉が乾いても水でも飲んでろ」
「どーぞ、おかまいなく」

サイバラはどさっとソファに腰掛けた。
俺はデスクの椅子に座る。

「で、郡山をどうするつもりなんだ?」
「佐山さんこそ、会ってどうするつもりなんすか?」
「二度と美郷に近寄らないように言うつもりだよ。言って聞かないようなら、ちょっと怖い目に合ってもらうかもな」

言ってて自分でも、どう怖い目に合わせるのかわからなかった。

「それで解決するとかホントに思ってるんすか?」

サイバラがニヤニヤしながら言う。
言い返したかったが、とっさに言葉が出てこない。

「そもそも佐山さん、今のゲーオタみたいなちーちゃんでも好きなんすか?」

「うるさい。お前に何が分かる」

言い返したが、自分自身がよくわからない。

「ちーちゃん、かなりアイツに入れ込んでるからなぁ……佐山さんのほうに気持ちを取り戻すのは大変っすよ?」
「何が言いたいんだよ」
「ちーちゃんとコーリヤマの絆を壊す決定的な物がいると思うんすよね」
「そりゃ、そんなものがあれば楽だけどな」
「なければつくればいい。そう思わないっすか?」
「あん?」
「俺にちょっと考えがあるんす」

それから30分ほど話をして、ようやくサイバラは帰る様子をみせた。

「んじゃ、明後日19時から、いつもの喫茶店すね。確かにちーちゃんに伝えとくっす」
「スマホの通知オンにしとけって言っといてくれ」

サイバラは荷物を抱えて出ていった。

(いちいちムカつく野郎だ)

とはいえ、今は俺に協力してくれるらしい。

(今だけは仲良くしといてやるか)

サイバラがいなくなると、途端に部屋の中が静かになった。

すると自然と余計な考えが頭に浮かぶ。

今の美郷で愛せるのか。
これからも愛していけるのか。

その言葉はずっと頭の中を回り続けている。

実は結論は出ているのだ。

愛せない、と。

だけど俺は、美郷のことを愛している。

どこまでも前向きで、どんな困難にも立ち向かう、強い心。

人の気持ちに寄り添うことのできる優しさ。

(あの美郷にもう一度会いたい)

柄にもなく、切ない気持ちになる。

美郷がおかしくなる前にもどりたい。

あの幸せな時間を取り戻したい。

「俺は……俺たちは、幸せを取り戻さなきゃならないんだ」

美郷と過ごしたいくつもの思い出が頭の中に蘇ってきた。

思い出の中で、美郷はいつも笑っていた。

「そうだよ。郡山とかいうやつより、美郷は俺といるほうが幸せなんだ」

いつのまにか独り言が漏れ出ていた。

まるで自分に言い聞かせているようだと、自分でも思った。
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