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番外編:ハラダレミーの友愛
黒鍵
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その後、警察の応援がやってきた。
ナカザトが屈強な男に連れていかれたり、一音が救急車に乗せられたりする一方で、私はパトカーに乗せられて警察署まで連れて行かれることになった。
ナカザトは犯罪にも手を染めていたようで、そんな男と付き合っていた私は(セフレだけど)、犯罪への関わりをガッツリ疑われてしまったわけだ。
帰る頃には明け方になっていた。
長い夜だった。
それから一音は数日病院に入院することになったし、私は警察署へ往復させられる日々が続いた。
そんなこんなで、ようやく落ち着いたのは週末のことだった。
「ナカザトさんって、何だったんだろうね」
一音が言う。
臨時休業にしているノクターンのテーブルで向かい合いながら、私たち二人はダラダラとしゃべっていた。
「なんか産業スパイのようなことをしていたみたい」
ひとごとのように私は言った。
ナカザトのことを聞いても、警察ははぐらかすようなことしか言わず、教えてくれなかった。
こっちには一方的に質問攻めにしてくるのに。
ずるい。
思い出してグッタリしてきた私に、
「だから、小笠原さんのほうがいいって言ったでしょ」
と、一音が声をかける。
「そうかもしれないけど……あの透が警察だとか思わなかったし……それに……」
あんなにかっこいいとか思わなかったし。
と思っていると、一音がニコニコしながら私を眺めているのに気づいた。
なんだか心を読まれているようで恥ずかしい。
「……ナカザトといるとさ、どこか遠くへ行けるような、そんな気がしちゃったんだよね」
私はそんな事を口にしていた。
「私、もっといろんなところに行きたいのかも」
リザ・フェルディナントのように、世界を股にかけるような人になりたかったのかもしれない。
「そんな人いなくても大丈夫だよ。レミーは自由に、どこにだって行けるんだよ」
一音はニコニコしたまま、そう言った。
一音は可愛いなぁ。
そして優しいなぁ。
「そうだね。私にはドーチンがいるもんね。今度いっしょに世界一週しよっか」
「私は行けないよ。そんなに長期休暇とれないし」
「そんなー! 私たちはいつもいっしょでしょー! ドレミの鍵盤みたいにー!」
思わず一音に詰め寄る私。
「そのかわり留守は守ってあげるから」
そんな私をギュッと抱きしめる一音。
「いつでもレミーが帰ってこられるように、私たちは、ずっと待ってるからね」
「私たち?」
そのとき、カランカランとドアベルが鳴った。
「ナカザトのことを話しに、きたんだけど……」
と言いながら入ってきたのは、透だった。
しかし、抱き合っている私と一音を交互に見ると、
「……俺がいたら邪魔か。帰るよ」
と、すぐに身を翻そうとする。
「待って!」
私は超特急で透に駆けよる。
「いていいよ」
なんとか扉を閉まる直前に、彼の黒いジャケットの裾を捕まえることができた。
「透だったら、私たちの間にいてもいいよ」
私に袖を引かれてキョドりながら店に入ってくる様子は、本当に警察なのかと疑いたくなる。
どこから見ても、優しいだけの、ただの頼りない男なのに。
ただ、上から下まで真っ黒な服装は、あの時と同じだった。
その黒尽くめでほっそりとした姿が、ドとレの間にある黒鍵のように、私には思えた。
ナカザトが屈強な男に連れていかれたり、一音が救急車に乗せられたりする一方で、私はパトカーに乗せられて警察署まで連れて行かれることになった。
ナカザトは犯罪にも手を染めていたようで、そんな男と付き合っていた私は(セフレだけど)、犯罪への関わりをガッツリ疑われてしまったわけだ。
帰る頃には明け方になっていた。
長い夜だった。
それから一音は数日病院に入院することになったし、私は警察署へ往復させられる日々が続いた。
そんなこんなで、ようやく落ち着いたのは週末のことだった。
「ナカザトさんって、何だったんだろうね」
一音が言う。
臨時休業にしているノクターンのテーブルで向かい合いながら、私たち二人はダラダラとしゃべっていた。
「なんか産業スパイのようなことをしていたみたい」
ひとごとのように私は言った。
ナカザトのことを聞いても、警察ははぐらかすようなことしか言わず、教えてくれなかった。
こっちには一方的に質問攻めにしてくるのに。
ずるい。
思い出してグッタリしてきた私に、
「だから、小笠原さんのほうがいいって言ったでしょ」
と、一音が声をかける。
「そうかもしれないけど……あの透が警察だとか思わなかったし……それに……」
あんなにかっこいいとか思わなかったし。
と思っていると、一音がニコニコしながら私を眺めているのに気づいた。
なんだか心を読まれているようで恥ずかしい。
「……ナカザトといるとさ、どこか遠くへ行けるような、そんな気がしちゃったんだよね」
私はそんな事を口にしていた。
「私、もっといろんなところに行きたいのかも」
リザ・フェルディナントのように、世界を股にかけるような人になりたかったのかもしれない。
「そんな人いなくても大丈夫だよ。レミーは自由に、どこにだって行けるんだよ」
一音はニコニコしたまま、そう言った。
一音は可愛いなぁ。
そして優しいなぁ。
「そうだね。私にはドーチンがいるもんね。今度いっしょに世界一週しよっか」
「私は行けないよ。そんなに長期休暇とれないし」
「そんなー! 私たちはいつもいっしょでしょー! ドレミの鍵盤みたいにー!」
思わず一音に詰め寄る私。
「そのかわり留守は守ってあげるから」
そんな私をギュッと抱きしめる一音。
「いつでもレミーが帰ってこられるように、私たちは、ずっと待ってるからね」
「私たち?」
そのとき、カランカランとドアベルが鳴った。
「ナカザトのことを話しに、きたんだけど……」
と言いながら入ってきたのは、透だった。
しかし、抱き合っている私と一音を交互に見ると、
「……俺がいたら邪魔か。帰るよ」
と、すぐに身を翻そうとする。
「待って!」
私は超特急で透に駆けよる。
「いていいよ」
なんとか扉を閉まる直前に、彼の黒いジャケットの裾を捕まえることができた。
「透だったら、私たちの間にいてもいいよ」
私に袖を引かれてキョドりながら店に入ってくる様子は、本当に警察なのかと疑いたくなる。
どこから見ても、優しいだけの、ただの頼りない男なのに。
ただ、上から下まで真っ黒な服装は、あの時と同じだった。
その黒尽くめでほっそりとした姿が、ドとレの間にある黒鍵のように、私には思えた。
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